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工作機械の設備更新のタイミングとは?
公開日:2024.02.21
工作機械は、製造業のエンジンともいえる重要な設備です。ただ長年、使用していると老朽化が進み、故障も次第に増えていきます。故障が頻発するようになれば、生産計画にも影響を及ぼしかねません。この記事では、工作機械における設備更新のタイミングについて解説します。また、工作機械の平均的な耐用年数、寿命を長くするための方法なども紹介しながら、改修と買い替えの判断基準もお伝えしていきます。
工作機械設備の寿命と更新の必要性
工作機械の寿命とは、一般に「設備が一貫して性能を発揮し、安全に稼働できる期間」を指します。種類や使用状況によっても寿命の長さは変わってきますが、工作機械の場合メンテナンスを適切に行えば30年以上使えるケースも少なくありません。
ただ基本的には長年使っているうちに部品の摩耗や劣化が生じ、次第に故障が増えていきます。そして修理ができないほどの状況になったり、故障が頻発したりする場合は、その工作機械は寿命を迎えたことになります。老朽化した工作機械を使っていると、故障のリスクが高まるだけでなく、性能の低下が見られることもあります。また、過去の技術基準で製造された設備は、現在の環境や安全基準を満たしていないことも考えられます。そのため、工作機械はその状態に応じて、適宜更新していかなくてはなりません。
設備更新には大きく「改修」と「交換」の2つの方法がありますが、「改修で使い続けるか、新しいものに買い替えるべきか」は工作機械の状態や会社の業績、顧客からの受注トレンドによっても判断は異なるところでしょう。改修のほうが割安なケースが多いものの、最新機械を導入することで消費電力削減や生産性向上につながることが少なくありません。したがって改修と交換の判断は、長期的な視点をもって総合的に判断することが大切です。
設備更新の適切なタイミング
一般社団法人日本機械工業連合会の「生産設備保有期間実態調査」(2018年)によれば、生産設備のうち15年以上使用されているのは全体の4割以上を占めています。使用年数30年以上の割合も2割に上り、ここから生産設備の現実的な寿命は15~30年といえそうです。
また、設備更新のタイミングを計る具体的な指標としては、「ROI」(Return On Investment:投資収益率)や「設備の総運転時間」、「故障率」などが考えられます。投資回収期間や設備の稼働時間を基に、設備の更新が経済的に合理的かどうかの評価を行います。
なお、近年のトレンドとして老朽化した設備が増える一方、設備更新も徐々に行われるようになってきています。さきほどの生産設備保有期間実態調査では、保有期間割合の経年変化も示されています。
2013年の同じアンケートと比較すると、15年以上の生産設備が増える一方で、保有期間5年以内の割合も増加しています。つまり、老朽化した設備を使い続ける企業と設備投資を積極的に行う企業の二極化が進んでいることがうかがえます。ただ、直近3年以内の設備投資計画の有無を聞いたアンケートでは、約62%が「具体的な設備投資計画がある」と回答しており、多くの企業が生産設備の増設や新設を検討していることがわかります。
工作機械の寿命を延ばす方法
製品の品質を保ちつつ、生産設備の寿命を延ばすにはどうすればいいのでしょうか。ここでは設備の寿命を最大限に引き延ばすための方法を紹介します。工作機械の寿命を延ばすための方法は、一つひとつがシンプルで基本的なものばかりです。ただこれらの日常的な取り組みが、設備の効率的な運用と長寿命化につながります。
定期的なメンテナンス
設備の定期的な点検やメンテナンスは、寿命を延ばすための最も基本的な手段です。摩耗部品の交換や異常・異音の早期発見により、大きな故障を未然に防ぐことができます。また、汚れや異物が設備に混入してしまうと性能低下の原因になるため、定期的なクリーンアップやフィルターの交換も設備の寿命を延ばすために欠かせない作業です。
環境条件の最適化
設備をその仕様や能力を超えて使用すると、過度な負荷がかかり、寿命が縮んでしまう可能性があります。そのため、メーカーが推奨する使用方法や運転条件を参考にすることで、機械寿命を延ばすことができるでしょう。さらに、工作機械が設置される環境の湿度、温度、振動などの条件も、設備の性能や寿命に影響します。適切な環境下での運用を心掛けることで、機械の劣化を抑制できます。
故障履歴の管理
設備の故障や部品交換の履歴を管理するのもいい方法です。故障から次の故障までの時間を定点観測することで、設備更新のタイミングを見極めるための判断基準になるでしょう。なお、稼働開始から次の故障までの平均稼働時間を「MTBF」(Mean Time Between Failures、平均故障間隔時間)といいます。「総稼働時間÷総故障回数」で求めることができ、MTBFは工作機械の故障の防止や予知に役立ちます。例えば1年間の総稼働時間が1000時間、故障回数が2回の場合、MTBFは「500時間(=1000÷2)」となります。
新しい工作機械導入のメリット
「老朽化が進んでいる」「故障率が上がっている」という場合は、工作機械の買い替えも検討してみましょう。新しい設備の導入は、生産性の向上や品質の確保といった目的でも行われます。また、最近の工作機械は環境への配慮やコスト削減の観点から、エネルギー効率が高いものがほとんどです。長期的な視点に立てば、エネルギーコストの削減効果も期待できます。
一般社団法人日本機械工業連合会の「生産設備保有期間実態調査」によれば、新たな設備を導入した企業の多くは生産量・生産性のアップや省人化、省エネなどの効果を実感しています。
Q.設備投資により、具体的にどのような効果が、どの程度ありましたか。
(経過年数が3年未満の生産機械を保有されている企業、N=302)
改善率 | 生産量増加 | 単位当りの 生産時間の短縮 |
省人化 | 省資源・省エネ |
---|---|---|---|---|
0~5%未満 | 7.3% | 8.9% | 9.3% | 13.2% |
5~10%未満 | 10.6% | 7.3% | 7.0% | 5.6% |
10%以上 | 52.3% | 42.4% | 28.5% | 16.2% |
設備更新・設備投資のポイント
設備更新を行う際には、以下のポイントを抑えて検討・購入を進めましょう。
【設備更新時のポイント】
導入目的の明確化: 新しい設備を導入する目的を明確にし、その目的に合った設備を選択することが重要です。
トータルコストの考慮: 設備の導入費用だけでなく、運用コストやメンテナンスコストも考慮して、トータルでのコストパフォーマンスを評価する必要があります。
アフターサポート: メーカーのサポート内容や保証期間も考慮し、アフターサポートが充実した会社を選択することが大切です。
従業員研修: 新しい設備の導入に伴い、操作方法や保守手順が変わる場合があります。そのため、従業員に対して研修を行い、設備を最大限に活用するための知識と技術を身につける機会を創出します。
新たな設備の導入は投資金額が大きく、重要な経営判断となるでしょう。そのため、設備投資計画をしっかりと立てて、設備投資の妥当性を評価することが大切です。そのうえで資金調達を行い、場合によっては補助金が利用できないかも検討します。
設備更新は企業の成長に直接つながる投資
工作機械の寿命は一概には言えないものの、おおむね15~30年ほどとされるのが一般的です。工作機械は使えば使うほど摩耗や劣化が起きるため、定期的なメンテナンスを行い、異常の早期発見や故障の防止に努めましょう。また、故障が頻繁に起こるという場合には、買い替えも検討します。現代の競争激しいビジネス環境において、設備更新は企業の生産性や効率性を向上させるための極めて重要なステップです。新しい設備導入は企業の競争力を強化するため、経営状況や市場動向なども考慮しながら自社の状況に設備更新を検討してみましょう。
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文:小林悠樹
1988年生まれ。一橋大学卒業後、食品メーカーへ入社。営業職を経験したのち、2017年にフリーライターへ転身。企業への取材記事、通信大手のオウンドメディアなどをはじめ、幅広いコンテンツを手がけています。
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編集:株式会社イージーゴー
WEBコンテンツ、紙媒体、動画等の企画制作を行う編集制作事務所です。ライターコミュニティ「ライター研究所」も運営しています。
https://eggo.jp/
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