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切削加工に使われる非鉄金属の基礎知識!鉄鋼との違いや素材ごとの特徴を解説
公開日:2025.03.04
切削加工において、材料の選定は製品の品質や加工効率を左右する重要な要素です。特に非鉄金属材料は、加工特性が大きく異なり、目的に応じた材料選定が欠かせません。
そこで本記事では、アルミニウムやチタンなど代表的な非鉄金属材料の特徴と、それぞれの材料に適した加工のポイントを解説していきます。
切削加工につかわれる材料の分類
切削加工で使用される材料は、大きく「鉄鋼」「非鉄金属」「非金属」の3つに分類されます。それぞれの材料には固有の特性があり、用途や要求される性能に応じて材料を選択することが重要です。
鉄鋼
鉄鋼材料は、工業部品・資材として最も広く使用されている素材で、以下のような特徴をもっています。
- 豊富な資源量と比較的安価な価格
- 熱処理による性質の調整が可能
- 強度と加工性に優れている
- リサイクルがしやすい
鉄鋼材料は、含まれる炭素量によって性質が大きく変化します。一般的な構造用鋼(SS400など)は加工性に優れ汎用性が高く、機械構造用炭素鋼(S45Cなど)は熱処理による強度調整が可能です。また、クロムやニッケルなどを添加したステンレス鋼は、耐食性や耐熱性に優れています。切削加工においては、鉄鋼材料の硬度や靭性が工具寿命や加工精度に大きく影響します。
非鉄金属
非鉄金属は、鉄以外の金属材料の総称です。代表的なものには、アルミニウム、銅、チタン、マグネシウムなどがあります。これらの材料は、以下のような特徴をもちます。
- 軽量である(アルミニウム、マグネシウム)
- 導電性・熱伝導性が高い(銅、アルミニウム)
- 耐食性に優れている(チタン)
- 特殊な機能性をもつ素材もある(形状記憶合金など)
非鉄金属は鉄鋼材料と比べて高価ですが、それぞれの特性を活かした用途で使用されています。例えば、アルミニウムやマグネシウムは航空機や自動車の軽量化部品に、銅は電子機器の放熱部品に、チタンは医療機器の生体適合部品などに用いられています。
切削加工では、材料ごとに適切な加工条件の設定が重要になります。アルミニウムなら高速切削が可能ですが切りくずの付着に注意が必要で、チタンでは切削時の発熱管理が重要になるなど、それぞれの材料特性に応じて作業を行いましょう。
非金属
非金属材料には、プラスチック(樹脂)、セラミックス、複合材料などが含まれます。これらの材料は、以下のような特徴があります。
- 軽量である
- 耐食性に優れている
- 電気絶縁性をもつ
- 成形加工が容易
特にプラスチックは、「複雑な形状の成形が可能」「量産しやすい」などの利点から工業製品から生活用品まで広く使用されています。
切削加工でよく使用される主要な非鉄金属材料
非鉄金属材料は軽量性・耐食性など鉄鋼材料にはない特徴をもちます。その特性を活かして使用されることが多く、軽量化が必要な航空機部品、導電性が求められる電子部品など用途も様々です。
ここでは、代表的な非鉄金属材料について、その特徴と加工のポイントを解説します。
アルミニウム
アルミニウムは、鉄の約1/3という軽さと優れた加工性をもつ非鉄金属です。純アルミニウムはやわらかすぎるため、工業用途では銅やマグネシウムなどを添加した合金として使用されます。
アルミニウム合金は、主要な添加元素によって1000番台(純アルミニウム)から7000番台(Al-Zn-Mg系)まで分類されています。たとえば、2000番台(Al-Cu系)の「ジュラルミン」と呼ばれるA2017、A2024などは、航空機部品や精密機械部品によく使用される材料です。
●主な特徴
- 比重が小さい(2.7g/cm³、鉄の約1/3)
- 熱伝導性と導電性が高い
- 耐食性に優れている
- 熱処理による強度向上が可能
切削加工では高速での加工が可能ですが、切りくずが工具に溶着しやすいため、切削油剤の使用が推奨されます。また、薄肉部品を加工する際は変形に注意が必要で、バリへの対処も重要です。
マグネシウム
マグネシウムは、実用金属の中で最も軽い材料です。比重は1.8g/cm³と、アルミニウムよりもさらに約30%軽量です。近年は、モバイル機器の筐体や自動車部品など、極度の軽量化が要求される部品に使用されています。
●主な特徴
- 超軽量(比重1.8g/cm³、アルミニウムの約2/3)
- 振動吸収性に優れている
- 電磁波シールド性が高い
- リサイクルしやすい
マグネシウムの切削加工では、安全面での配慮が特に重要です。マグネシウムは燃えやすい素材で、粉状や切りくずなどは特に着火しやすくなります。大規模火災につながってしまう事例もあるため、適切な切削条件の設定と消火設備の準備が欠かせません。また、水と反応して水素を発生するため、水溶性切削油剤は使用できません。
タングステン
タングステンは、非鉄金属の中でも特に高い融点(3,422℃)と密度(19.3g/cm³)をもつ材料です。語源は「重い石」を意味するスウェーデン語に由来し、主に切削工具の材料や高温・高荷重環境で使用される部品に利用されています。高密度という特性を活かして、ゴルフ道具のウエイトや腕時計の重りなどにも用いられます。
●主な特徴
- 極めて高い融点と硬度をもつ
- 耐摩耗性に優れている
- 熱伝導性・電気伝導性が高い
- 放射線遮へい能力をもつ
タングステンは「難削材」に分類される材料で、切削加工では高硬度な工具を使用しなくてはいけません。また、加工時は低速での切削が基本となり、工具寿命が短くなりやすいため、切削油剤の使用も欠かせません。
銅
銅は、高い導電性と熱伝導性をもつ非鉄金属です。
●主な特徴
- 銀に次ぐ高い導電性を誇る
- 熱伝導性に優れている
- 展性・延性が高い
- 適度な強度と耐食性をもつ(加工後に強度が落ちにくい)
銅の切削加工では、工具への付着が起きやすいため、適切な工具選定と切削条件の設定が重要です。銅はやわらかく、粘り気も強いため、切削速度を上げ、すくい角が大きい工具を使用することが多いです。それにより加工面の質を上げながら削りかすの排出性をよくすることができます。
チタン
チタンは、比強度(重量比強度)に優れ、極めて高い耐食性をもつ非鉄金属です。航空宇宙産業や医療機器、化学プラントなど、高い信頼性が要求される分野で使用されています。純チタンでも鉄の2倍以上の比強度をもち、チタン合金になると比強度はさらに増します。その優れた生体適合性から医療用インプラントなどにも広く採用されています。
●主な特徴
- 比強度が高い
- 耐食性と生体適合性に優れている
- 高温強度に優れている
- 熱伝導率が低い
チタンの切削加工では、熱伝導率が低いことから切削時の発熱が大きく、工具寿命が短くなりやすいので注意しましょう。チタン加工では比強度が高いため低速切削が基本となり、振動によるびびりが発生しやすい材料でもあるため、十分な剛性を持つ工作機械の使用が推奨されます。十分な剛性をもつ工作機械の使用が推奨されます。
真鍮(しんちゅう)
真鍮は、銅と亜鉛を主成分とする合金で、黄銅とも呼ばれています。装飾性と加工性のバランスがよく、機械部品から装飾品まで幅広い用途で使用されています。代表的な材料であるC3604(快削黄銅)は、優れた切削性と適度な強度を併せもち、多くの機械部品に採用されています。
●主な特徴
- 優れた切削性と装飾性をもつ
- 適度な強度と延性をもつ
- 耐食性に優れている
- コストパフォーマンスが高い
真鍮の切削加工では、基本的に切りくずが細かく分断されやすく高速切削をしやすいのが特徴です。一方で、材料のやわらかさと展伸性の高さから、バリの発生や切りくずによる表面の傷つきに注意しましょう。すくい角が大きく切れ味のよい超硬工具を使用したり、油性クーラントで冷却をしたりして加工品質を維持します。ただし、含有する亜鉛の比率によって特性が異なるため、材料や使用環境を考慮することが重要です。
非鉄金属材料の選定と加工のポイントを抑えよう
非鉄金属材料は、軽量化や導電性、耐食性など、目的に応じて幅広い種類の素材が存在します。アルミニウムやマグネシウムは軽量化、銅は電気・熱の伝導性、チタンは高強度と耐食性など、目的に合わせて材料を選ぶことが大切です。
ただし、一般的に鉄鋼材料より高価で、扱いが難しい非鉄金属材料は少なくありません。そのため、求められる要件に加えて、加工性やコストなどの観点から総合的に判断し、最適な材料を選定しましょう。
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文:小林悠樹
1988年生まれ。一橋大学卒業後、食品メーカーへ入社。営業職を経験したのち、2017年にフリーライターへ転身。企業への取材記事、通信大手のオウンドメディアなどをはじめ、幅広いコンテンツを手がけています。
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編集:株式会社イージーゴー
WEBコンテンツ、紙媒体、動画等の企画制作を行う編集制作事務所です。ライターコミュニティ「ライター研究所」も運営しています。
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