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省エネにもなる。工作機械のサイクルタイムを短縮する方法
公開日:2024.02.21
製造業における生産効率は、企業の競争力を維持し、市場での優位性を確保するためには欠かせない要素です。そして、「サイクルタイム」はその生産性を測るうえでの大切な指標となり、短縮できれば生産効率の向上はもとよりコスト削減や環境負荷の低減などにもつながります。この記事では、工作機械におけるサイクルタイムの基本知識を解説しながら、短縮のための具体的な方法を紹介します。
目次
工作機械のサイクルタイムとは?
サイクルタイムは「製品1つを作り上げるのにかかった正味の時間」を指す言葉です。例えば、工作機械で60分で30個の製品を製造した場合、サイクルタイムは「2分(=60分÷30個)」となります。
サイクルタイムは、製品の品質や生産性、さらにはコストなどの要因と密接に関連しています。サイクルタイムを短縮することで生産効率の向上はもちろん、消費エネルギーや人件費などさまざまなコスト削減につながります。
また、サイクルタイムに似た用語として「タクトタイム」「リードタイム」があります。タクトタイムは「製品1つの製造にかけるべき時間」を指し、「稼働時間÷必要生産数」で算出されます。サイクルタイムが生産能力を示す指標であるのに対して、タクトタイムは顧客からの発注数やその製品の売れる数をもとにしているのが特徴です。また、リードタイムは、「発注から納品までにかかる時間」を意味する用語です。
サイクルタイム短縮への道筋
サイクルタイムの短縮を考えるうえでは、サイクルタイムを「切削時間」と「非切削時間」に分けて考えるのがポイントです。
切削時間:工作機械が切削加工をしている時間
非切削時間:工作機械が切削加工していない時間
切削時間は実際にワークを加工している時間を指し、一方、非切削時間は部品の交換やツールの入れ替え、機械動作のラグなど加工以外にかかる時間を意味します。サイクルタイム短縮の取り組みを行う場合、この双方にアプローチをすることが大切です。
さらに、現状の工程において「どの部分にどれくらいの時間がかかっているか」を把握することも欠かせません。実際の作業を動画で撮影して、無駄が生じていないかを確認するのも効果的です。切削条件の調整、作業環境の見直し、操作者の研修や教育など、サイクルタイムの短縮に向けたアプローチは多岐にわたります。現状の把握から始め、具体的な改善策の策定・実行し、効果測定をする、この一連の流れがサイクルタイム短縮のための定石です。
サイクルタイムを短縮するための4つの方法
サイクルタイムを効果的に短縮するためのアプローチは数多くありますが、ここでは特に効果的な方法を4つ紹介します。
切削条件の最適化
切削条件の最適化は、サイクルタイム短縮の基本的なステップです。回転数や送り速度の調整を行い、それぞれのワークにあった設定を再考しましょう。原則として、切削条件を上げていくことで切削時間は短くなりますが、その反面チップの摩耗はそれだけ多くなります。チップの交換回数が多くなり、思うようにサイクルタイムを縮められないケースも考えられます。そのため、サイクルタイム短縮を図るうえでは、時間やコストなどを総合的に鑑みてバランスのよい切削条件を見つけることが大切です。
アイドリングタイムの削減
非切削時間であるアイドリングタイムを減らすことも、サイクルタイムの短縮につながります。例えば、ワークや工具の配置場所を改める、ワークを切削している間に別の作業をするなど、作業工程のなかでのムダ・ムリ・ムラがないかを検討します。5S(整理、整頓、清掃、清潔、しつけ)を徹底することで作業効率が上がりサイクルタイム短縮につながることもあるので、作業場所全体を見まわして改善の余地を見つけましょう。
作業の自動化
近年の工作機械はさまざまな機能を備えており、高度な自動化機能を持つ機械も登場しています。そういった工作機械を導入することで、人の介入を最小限に抑えた効率的な加工が可能となります。例えば、5軸加工機は一度に多面加工ができるので、サイクルタイムの大幅な短縮が期待できます。また、複数のパレットやパレットチェンジャーを備えているマシニングセンタであれば、パレット交換で機械を止めずノンストップで加工することも可能です。
操作者のスキル向上
操作者のスキルを向上させることも非常に重要です。定期的な研修や教育によって、操作者が効率的な作業を行えるようになればミスや非効率な動作を減らせます。結果としてサイクルタイムが短縮されるため、人的要因がボトルネックになっていないかもチェックしましょう。
サイクルタイム短縮は高性能な工作機械を導入するのが近道
上記で紹介した切削条件や作業工程の改善は、サイクルタイム短縮のための一定の効果は期待できます。ただ実際には、「労働者の技能向上や生産プロセスの見直しはすでに行っている」というのが製造業者の本音ではないでしょうか。
抜本的にサイクルタイムを短縮させたいのであれば、新たな工作機械を導入するのが近道です。大きな投資になるため即断即決で実行できる取り組みではありませんが、近年の技術進歩は目覚ましく、最新の工作機械は従来のものと比較して圧倒的なスピードと精度で部品を加工できるように進化しています。
例えば、ブラザー工業株式会社のマシニングセンタ「SPEEDIO(スピーディオ)」を新たに導入した企業では、「サイクルタイムは20%以上短縮できた」「加工時間を40%削減できた」という事例も存在します。
さらに、SPEEDIOは環境性能にも優れているため、電力消費の削減効果も期待できます。工作機械が老朽化している、作業者が操作する汎用工作機械を使っているという場合には、新たな工作機械を導入することでさまざまなメリットが得られるはずです。
工作機械の導入補助金を利用して金銭的な負担を抑える
工作機械を新たに導入する場合、その費用は数百万円から数千万円かかります。一般的な中小企業にとっては大きな負担となるため、補助金や助成金を活用できないかを検討しましょう。新たな工作機械を導入する際に、利用できる制度には以下のようなものがあります。
ものづくり補助金 | 新規商品やサービス開発、生産プロセスの改善などを目的とした設備投資に対して補助金が支給される制度 | トップページ|ものづくり補助事業公式ホームページ ものづくり補助金総合サイト |
---|---|---|
小規模事業者 持続化補助金 |
販路拡大や生産性向上などにかかる経費の一部を補助してくれる制度 | 小規模事業者持続化補助金(一般型) |
省エネルギー設備投資 利子補給金 |
省エネルギーにつながる設備投資において、金融機関からの融資利子の一部を補給する制度 | SII:一般社団法人 環境共創イニシアチブ|事業トップ(令和5年度 省エネルギー設備投資利子補給金) |
事業再構築補助金 | コロナ禍によって変化した経済社会への対応を促すため、中小企業の事業再構築や付加価値向上のための取り組みを支援する制度 | トップページ | 事業再構築補助金 |
省エネルギー投資 促進支援事業費補助金 |
消費燃料・消費電力の削減を目的とし、高性能な省エネ設備の導入費用の一部を補助してくれる制度 | SII:一般社団法人 環境共創イニシアチブ|事業トップ(令和4年度補正予算 省エネルギー投資促進支援事業) |
高性能な工作機械は初期費用がかかりますが、これらの補助金や助成金を利用すればその負担を大幅に軽減できます。導入を検討している企業は、各制度の詳細や申請方法について最新情報をチェックしてみてください。
サイクルタイム短縮は生産性に直結する大切な指標
サイクルタイムは、生産性を測るための大事な指標です。切削条件の最適化、アイドリングタイムの削減、作業の自動化などに取り組むことでサイクルタイムを短縮でき、生産効率アップやコスト削減ができるでしょう。また、近年の工作機械技術の進化は目覚ましく、新たな工作機械の導入によってもサイクルタイムは大幅に短縮できます。初期投資はかかるものの、国や自治体の補助金・助成金を活用することで導入の負担を軽減することが可能です。自社が抱える課題を把握して、それに適したサイクルタイム短縮のための改善策を講じましょう。
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文:小林悠樹
1988年生まれ。一橋大学卒業後、食品メーカーへ入社。営業職を経験したのち、2017年にフリーライターへ転身。企業への取材記事、通信大手のオウンドメディアなどをはじめ、幅広いコンテンツを手がけています。
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編集:株式会社イージーゴー
WEBコンテンツ、紙媒体、動画等の企画制作を行う編集制作事務所です。ライターコミュニティ「ライター研究所」も運営しています。
https://eggo.jp/
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