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カーボンニュートラルとは?
製造業のカーボンニュートラル化に向けて
公開日:2024.11.05
持続可能な社会の実現に向けて、世界的に環境への取り組みが進められている今、日本の製造業においてもCO2の排出を削減することが求められています。2020年10月、政府は「2050年カーボンニュートラル」を宣言し、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにするため、カーボンニュートラルの実現に向けて取り組む企業に対してさまざまな政策で支援するなど、企業による脱炭素への取り組みを後押ししている状況です。
本記事では、企業に求められているカーボンニュートラルとは何か、CO2の排出量が多いとされている製造業がカーボンニュートラルに取り組むメリットや、取り組みを進めていく方法をご紹介します。
目次
カーボンニュートラルとは
カーボンニュートラルとは、「CO2をはじめとする温室効果ガスの排出を全体としてゼロにすること」を指す言葉です。「排出を全体としてゼロ」とは、温室効果ガスの排出量から、植林や森林管理などによる吸収量を差し引いて、その合計を実質的にゼロにすることを意味します。
つまり、カーボンニュートラルを実現するには、温室効果ガスの排出量を減らすことに加え、温室効果ガスを吸収するための取り組みや環境保全への取り組みを強化する必要があります。
2015年に採択されたパリ協定にて、世界共通の長期目標として「世界的な平均気温上昇を工業化以前に比べて2℃より十分低く保つとともに、1.5℃に抑える努力をすること」、「今世紀後半に温室効果ガスの人為的な発生源による排出量と吸収源による除去量との間の均衡を達成すること」などに日本は合意しています。
以来、これらを実現するために、日本政府はさまざまな政策を通じてカーボンニュートラルに取り組む企業を支援しています。
製造業におけるカーボンニュートラルとは
では、製造業においてはどのようにしてカーボンニュートラルを捉えていけばよいのでしょうか。
環境省が公表する「2022年度の温室効果ガス排出・吸収量(概要)」によると、2022年の日本全体でのCO2排出量は10億8,500万トンでした。さらに部門別でみると、工場を含む産業部門のCO2排出量は全体の約32%に当たる3億5,200万トンで、その他の部門と比較して排出量が多い状況です。
製造業では電力をはじめエネルギーを多く使用することから、日本全体でカーボンニュートラルを実現するためには、各企業がCO2の排出量を抑えられるよう省エネに取り組むことが重要です。今後ますます、工場や事務所の省エネに取り組むとともに、生産設備の省電力化などを進めCO2の排出量を削減していく努力が求められるようになるでしょう。
加えて、再生可能エネルギーの活用を進めることも重要です。製造の現場に不可欠な電力を、太陽光発電や水力発電などの再生可能エネルギーから得ることで、CO2排出量ゼロに向けた取り組みをさらに推進できます。
カーボンニュートラル化によるメリット
カーボンニュートラルの実現に向けて取り組むことで、企業には次のようなメリットが生まれます。
競争力の強化
環境保全やカーボンニュートラルへの取り組みが世界的に求められている昨今、大手企業は自社が脱炭素経営に取り組むだけでなく、サプライチェーン全体にも脱炭素経営を求める傾向にあります。
脱炭素経営とは、気候変動対策を経営上の重要課題として捉え、気候変動対策の視点を持って経営に取り組んでいくことを指す言葉です。
他社に先駆け脱炭素に取り組むことで、気候変動対策に取り組む企業として認知され、市場での競争力を高められる 可能性があります。
光熱費や燃料費の低減
使用するエネルギーの削減は、コストの削減に繋がります。電灯をLEDに変更する、設備を省エネタイプのものに更新するなど、省エネに取り組むことで光熱費や燃料費などのコストダウンを図れます。
人材獲得力の向上
脱炭素に取り組む企業として認知が高まることで、社員からさらなる信頼や共感が得られるようになる可能性があります。社会課題に率先して取り組む企業で働いているという自負が、社員のモチベーション向上や定着などの効果を生むこともあるのです。
また、社会的に環境問題への関心が高まっていることもあり、環境活動に積極的な企業に就職したい求職者も少なくありません。「できる限り環境に配慮している企業を選択したい」「先進的な取り組みをしている企業に就職したい」と考える求職者からの応募が増加する効果も期待できます。
好条件での資金調達
金融機関では、脱炭素に取り組む企業に融資条件を優遇する取り組みをはじめています。設備投資や事業拡大において融資を検討している場合、脱炭素に取り組んでいる企業は金融機関が用意する好条件の融資を利用できる可能性があります。
カーボンニュートラルを実現するための7ステップ
では、製造業では具体的にどのようにして脱炭素に取り組めばよいのでしょうか。ここからは、カーボンニュートラルの実現に向けた取り組みを7つのステップでご紹介します。
ステップ1.情報収集
まずは、カーボンニュートラルに関する情報を収集しましょう。特に重要なのは、行政の政策や取引先の方針に関することです。
温室効果ガスの排出に関する規制や脱炭素に取り組むことによって利用できる優遇制度などについて調べ、どのような規制がいつから始まるのか、自社で活用できる優遇制度がないかを把握しておきましょう。また、それらを踏まえ脱炭素に取り組むことで自社にどのようなメリット・デメリットがあるかを把握して社内に共有し、環境対策への意識向上を図ります。
取引先の方針や取引条件についてあらためてインプットし、自社の目標や取引条件に対応する方法を検討することも重要です。これらの情報は、環境対策に関するセミナーの受講や取引先の調達方針説明会などからも収集できます。
ステップ2.社内体制の整備
情報収集して得た知見をもとに、カーボンニュートラルに対応するための社内体制を構築していきましょう。専任部署を設置したり、部門の垣根を超えた協力体制を構築したりするなど、経営者には取り組みに対するリーダーシップが求められます。
あわせて、カーボンニュートラルに関する知見を有する人材の育成にも着手する必要があります。自社での育成が難しい場合には、外部人材の活用も検討するとよいでしょう。
ステップ3.測定
次に、自社が使用しているエネルギー量や、排出している温室効果ガスの量を測定します。例えば、電気料金やガス料金の伝票から自社が使用しているエネルギーの排出量を把握できます。
全体の排出量を把握できたあとは、月別や日別など、時系列のエネルギー使用量を算定しましょう。また、設備ごとや生産ライン別など、区分ごとに稼働時間・使用量を把握することで、製品ごとの使用量も算出できます。
すでにエネルギー使用量やCO2の排出量を測定している企業では、作業員が作業日報に稼働時間とエネルギー使用量、生産数を記載する、業者が用意するシステムを活用して電気とガスの使用量を常時測定しながら、作業員が作業時間や不良数、設備異常を記録するなどの方法でデータを収集しています。
ステップ4.目標設定
カーボンニュートラルの実現に向けた目標設定では、自社が属するサプライチェーン内の削減目標への準拠や、業界団体が公表している削減目標、国などが掲げる削減目標に沿ったものを設定する方法があります。
まずは、主要取引先が調達方針などで公表している長期目標に準拠する目標を設定するとよいでしょう。その目標を問題なく達成できる場合には、業界全体の目標や国の目標に即した目標を掲げることで、気候変動対策への強い関心と推進体制があることを対外的にも示せます。
ステップ5.分析
測定した数値と目標から、どのようにしてエネルギーの削減に取り組むかを考えるステップです。エネルギーの削減が難しい設備や時間帯の把握、製造工程の見直しなどを行い、「排出するCO2を削減できる部分とできない部分」を明確化します。
例えば、時間帯や生産ライン、設備ごとの稼働時間とエネルギー使用量の相関関係を分析して、削減が難しい設備や時間帯、削減できる設備や時間帯を割り出します。
また、原材料にかかる排出量を取引先から取得するなどして把握し、製造工程を見直して原材料仕入量を圧縮することでもCO2を削減できます。
ステップ6.削減計画の策定
目標を定め、分析が完了した後は、具体的な削減計画の策定に入ります。削減計画と経営計画にあわせてロードマップを作成しましょう。
各製品のCO2排出量を比較して、エネルギー使用量が少なく売り上げに貢献している製品は増産を検討するといった方法でCO2の削減量と売り上げを予測できます。
使用する設備への投資に関する計画も重要です。生産能力は同じでも、エネルギー使用量の多い設備は省エネタイプの設備に更新することを検討し、いつ更新するのかを定めておきましょう。
ステップ7.削減計画の実行
ステップ6で作成した削減計画に沿って、CO2削減への取り組みを実行します。ロードマップをもとに取り組みを進めることで、策定した目標の達成に近づけます。
しかし、中小企業ではこのように大掛かりな取り組みをすぐに始めるのは難しいものです。まずは身近な省エネからはじめ、社内でカーボンニュートラルへの意識を高めていきましょう。
すぐにでも効果的な省エネに取り組みたい場合は、工作機械を省エネタイプのものに更新するのも一つの方法です。製造におけるCO2排出量の削減を、手間なく実現できます。その際には、各種補助金の活用も検討することで、設備更新にかかる費用的負担も軽減できるでしょう。
省エネを実現する工作機械の導入もCO2削減への取り組みの一つ
CO2をはじめとする温室効果ガスは、気候変動の原因の一つと考えられています。気候変動対策への取り組みが世界的に求められている今、CO2の排出量が多い製造業の各企業が脱炭素に取り組むことには大きな意義があります。CO2削減のためにさらなる省エネを目指すことに加え、太陽光発電や水力発電などの再生可能エネルギーの活用も視野に入れましょう。
カーボンニュートラルはすぐに実現できるものではありませんが、「今できること」を把握し、一つひとつ実行していくことが大切です。まずは身近な設備を見直し、省エネタイプのものに更新するなどしてカーボンニュートラル実現に向けた取り組みを進めていきましょう。
2024年10月にブラザー工業株式会社の刈谷工場は、ISO14068に準拠したカーボンニュートラルを実現しました。
活動詳細は、こちらよりご覧いただけます。
刈谷工場でISO14068に準拠したカーボンニュートラルを実現
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文:髙橋みゆき
1983年生まれ。2016年よりライター・編集者。各種民間保険、介護、医療、ITなど幅広いジャンルの記事を企画・執筆。
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編集:株式会社イージーゴー
WEBコンテンツ、紙媒体、動画等の企画制作を行う編集制作事務所です。ライターコミュニティ「ライター研究所」も運営しています。
https://eggo.jp/
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