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金属の材料記号のルールを知ろう!
JIS記号の意味と読み方を解説
公開日:2025.01.14
製造業において、加工材料を選定する際には、JISで定められた材料記号を正しく理解することが大切です。一見複雑に見える材料記号もその体系を理解すれば、材質や用途、特性を効率的に把握できます。
本記事では、鉄鋼材料や非鉄金属材料の記号の意味と読み方について、具体例を交えながら解説していきます。材料記号を正しく理解することで、適切な材料選定や作業効率アップにつながるのでぜひ参考にしてみてください。
金属材料は鉄鋼と非鉄金属の2種類に分けられる
工業材料として使用される金属材料は、大きく「鉄鋼材料」と「非鉄金属材料」の2種類に分類されます。鉄鋼材料は全金属材料の多くを占める最も一般的な材料のひとつです。鉄や鋼は資源量が豊富で、価格も比較的安価です。また、強度や加工性に優れ、熱処理による性質の調整が可能というのも特徴といえるでしょう。
一方、非鉄金属材料は軽量性(アルミニウム、マグネシウム)や導電性(銅)、耐食性(チタン)など、鉄鋼材料にはない特性を活かして使用されています。
JIS材料記号の意味
JIS材料記号では、以下のような金属材料の特性項目を規定しています。
- 材質
- 素材の形状・種類
- 用途
- 引張強さ
- 製造方法
具体的にはJIS材料記号は次のように3つの要素に分けられます。
材質を表す記号 | S(鋼)やF(鉄)、A(アルミニウム)、C(銅)など、材料の基本的な種類を示す。 ローマ字や元素記号がもとになっているケースが多い。 |
---|---|
製品名や用途を 表す記号 |
US(Use Stainless:ステンレス用途)、P(Plate:薄板)、W(Wire:線材)など、製品の形状別の種類や用途を示す。 |
材料の特性を 表す数値 |
引張強さ(例:SS400の"400"は400N/mm2)、材料の種類を示す番号(例:SUS304の"304")、含有される炭素量(例:S45Cの"45"は0.45%)などを示す。 |
なぜ材料記号が定められているのか?
JIS材料記号が定められている理由のひとつは、材料の特性や用途を効率的に表現し、取引や製造の現場での混乱を防ぐためです。材料記号を見ることで、その材料の基本的な特性(強度や耐食性など)や使用目的を素早く把握することができ、適切な材料選定や加工条件の設定に役立ちます。
また、国際的な取引においても、標準化された記号があることでより正確なコミュニケーションが可能となります。
そもそもJIS規格とは?
JIS規格(日本産業規格:Japanese Industrial Standards)は、日本の産業製品に関する規格や測定法を定めた国家規格です。もともとは工業製品の規格として始まりましたが、今日では情報処理やサービスなども含む幅広い分野の標準化を担っています。その目的は、製品やサービスの互換性の確保、品質・安全性の保証、生産効率の向上などです。
鉄鋼の材料記号ルール
すでにご紹介した通り鉄鋼材料の記号は主に、材質、製品名、数値の3つの要素で構成されています。
たとえば、構造用鋼材「SS400」では、最初の「S」は鋼(Steel)、2番目の「S」は構造用(Structure)、「400」は最低引張強さが400N/mm²であることを意味しています。また、機械構造用炭素鋼「S45C」であれば、「S」は鋼、「45C」は炭素含有量が0.45%の炭素鋼であることを表しています。
鉄鋼の材料記号一覧
鉄鋼材料の種類と記号の一例は以下の通りです。
●構造用鋼
- SS:一般構造用圧延鋼材
- SM:溶接構造用圧延鋼材
- SMA:溶接構造用退行性熱間圧延鋼材
- SGD:みがき棒鋼用一般鋼材
- SSC:一般構造用軽量形鋼
- SWH:一般構造用溶接軽量H形鋼
●機械構造用鋼
- S-C:機械構造用炭素鋼
("-"の部分には炭素含有量が入ります) - SCM:クロムモリブデン鋼
- SCr:クロム鋼
- SNC:ニッケルクロム鋼
- SNB:特殊用途合金鋼ボルト用棒鋼
●工具鋼
- SK:炭素工具鋼
- SKC:中空鋼
- SKS(SKD、SKT):合金工具鋼
- SKH:高速度工具鋼
非鉄金属の材料記号ルール
非鉄金属材料の記号も鉄鋼材料と同様に体系的に定められています。アルミニウムは「A」、銅は「C」から始まり、その後に合金の種類や形状を示す記号が続きます。
アルミニウムの場合は原則として、Aのあとに「合金の種類を表す4桁の数字」と「形状を表すアルファベット」を記します。また、銅の場合も同様で、Cのあとに「合金の種類を表す4桁の数字」と「形状を表すアルファベット」が付随します。
なお、末尾につく形状を示すアルファベットには、「P」(板)、「B」(棒)、「T」(管)、「W」(線)などの種類があります。
非鉄金属の材料記号一覧
非鉄金属材料の種類と記号の一例は以下の通りです。
●アルミニウム
- A1000系:純アルミニウム
- A2000系:Al-Cu系合金(ジュラルミン)
- A5000系:Al-Mg系合金
- A6000系:Al-Mg-Si系合金
- AC:鋳物用アルミニウム合金地金
- ADC:ダイカスト用アルミニウム合金地金
●銅
- C1100:タフピッチ銅
- C2600:黄銅
- C3604:快削黄銅
- C5111:りん青銅
- C1720:ベリリウム銅
- C1990:チタン銅
●その他
- N:ニッケル地金
- MI:マグネシウム地金
- MD:マグネシウム合金ダイカスト
- ZDC:亜鉛合金ダイカスト
- WJ:ホワイトメタル
JIS材料記号は製造現場における
重要な情報
JISにおける材料記号は、材料の選定や取引を効率的に行うための重要な情報です。鉄鋼材料では「S」や「F」、非鉄金属では「A」(アルミニウム)、「C」(銅)などから始まり、材質や用途、特性を一目で理解できる仕組みになっています。この記号体系を理解することで、材料選定や品質管理など製造現場での作業効率が向上するでしょう。ただし、材料記号は基本的な特性を示すものであり、実際の使用にあたっては熱処理条件や加工方法、使用環境なども考慮する必要があります。また、技術の進歩により新しい材料や加工方法が開発され続けているため、常に最新の情報にも注意を払うよう心がけましょう。
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文:小林悠樹
1988年生まれ。一橋大学卒業後、食品メーカーへ入社。営業職を経験したのち、2017年にフリーライターへ転身。企業への取材記事、通信大手のオウンドメディアなどをはじめ、幅広いコンテンツを手がけています。
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編集:株式会社イージーゴー
WEBコンテンツ、紙媒体、動画等の企画制作を行う編集制作事務所です。ライターコミュニティ「ライター研究所」も運営しています。
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