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医療機器とは?
初心者にもわかりやすく定義から法律まで基礎知識を解説
公開日:2025.04.01
医療の現場で活躍する「医療機器」は、私たちの健康を守る上で欠かせない存在です。病気の診断や治療、さらにはリハビリテーションに至るまで、多岐にわたる用途で利用されるこれらの機器は、日々進化を遂げています。しかし、「医療機器」とは具体的にどのようなものを指し、どのような役割を果たしているのでしょうか。病院で使われるMRIや手術用ロボットといった特殊な機器、さらには市販されている血圧計や体温計など、身近に存在する様々なものが医療機器に該当します。
本記事では、医療機器の定義や分類、高度医療機器の活用例から、製造販売に必要な手続きまで、医療機器に関する基本情報を詳しく解説します。医療機器に興味がある方や、業界への理解を深めたい方にとって役立つ内容となっていますので、ぜひ最後までお読みください。
医療機器とは何か?定義について解説
「医療機器」とは具体的にどのようなものかを3つに分けて解説します。
医療機器の定義
医療機器は、医薬品医療機器法で“人もしくは動物の疾病の診断、治療もしくは予防に使用されること、または人もしくは動物の身体の構造もしくは機能に影響を及ぼすことが目的とされている機械器具等”と定義されています。
この定義は、医薬品医療機器等法(薬機法)に基づいており、医療機器として認められる製品の基準が明確に定められています。具体的には以下のような特徴を持つ機器が医療機器に該当します。
- 診断、治療や予防に使用されるもの
例:MRI装置、レントゲン機器
- 身体の構造や機能に影響するもの
例:人工関節、人工心臓
医療機器は単に機械的な装置に留まらず、患者の健康を直接的に支える重要な役割を担っています。
医療機器と医療器具の違い
医療機器と医療器具は混同されがちですが、薬機法では呼び方を医療機器に統一しています。医療機器には、CTスキャンやMRI装置のような大型で高度な機械装置が含まれます。一方、メスやピンセットなどの小型で手動の器具も医療機器として分類され、医療機器の一部と考えられます。
医療機器の重要性
医療機器は、現代医療を支える基盤として欠かせない存在です。正確な診断や効果的な治療を可能にし、患者の健康維持に寄与します。
- 正確な診断
MRIやCTスキャンを用いることで、早期の病気発見が可能になります。これにより、治療の選択肢が広がり、患者の回復率向上が期待されます。
- 効率的な治療
たとえばAED(自動体外式除細動器)は、心停止患者の心臓を電気ショックで正常なリズムに戻すことで、命を救う重要な役割を果たします。
これらの医療機器があることで、医療の質は飛躍的に向上し、患者と医療従事者の負担を軽減できます。
医療機器の種類と分類
医療機器は、その人体へのリスクに応じて4つのクラスに分類されます。この分類は、医療機器が人体に与える影響や、万が一の副作用によるリスクに基づいて決定されます。
基本的には、以下を基準として決定しています。
- 生体への接触部位
- 生体との接触時間
- 不具合が生じた場合の危険性の大きさ
判断基準に基づいて、クラスⅠ~クラスⅣに分類されます。それぞれ詳しく解説します。
一般医療機器(クラスⅠ)
不具合が生じた場合でも、人体へのリスクが極めて低く、安全性が高い機器です。日常的に使用される機器が含まれます。
例: 経腸栄養注入セット、ネブライザ、X線フィルム、血液ガス分析装置、手術用不織布
管理医療機器(クラスⅡ)
不具合が生じた場合、人体へのリスクが比較的低いと考えられる機器で、専門的な取り扱いが必要なものです。
例: X線撮影装置、心電計、超音波診断装置、注射針、吸引カテーテル
高度管理医療機器(クラスⅢ・Ⅳ)
不具合が生じた場合、人体へのリスクが高く、生命や健康に重大な影響を及ぼす可能性のある機器です。クラスⅢは高リスク、クラスⅣはさらに侵襲性が高く、生命の危機に直結する恐れがあります。
- クラスⅢ
粒子線治療装置、人工透析器、硬膜外用カテーテル
- クラスⅣ
ペースメーカ、冠動脈ステント、人工血管、PTCAカテーテル
この分類により、医療機器の安全性や適切な取り扱いが確保され、患者の命や健康が守られています。さらに薬機法では、医療機器のひとつひとつに一般名称を定めています。
マシニングセンタで加工される医療機器
マシニングセンタは、穴あけ、フライス削り、ねじ立てなどの多様な切削加工を1台で行うことができるNC(数値制御)工作機械です。その精密さと効率性から、医療機器の加工においても重要な役割を果たしています。特に、同時5軸加工が可能なマシニングセンタは、複雑な形状を高精度で加工するため、医療現場で使用される高度な機器の製造に適しています。
骨接合用プレート(ボーンプレート)
ボーンプレート(材質:Ti-6Al-4V)
骨接合用プレートは、骨や関節、あるいは複数の骨片を固定するために使用される医療機器です。このプレートは、外傷による骨折の治療や、骨の変形を修正する手術で活用されます。具体的には、ねじ止めによって骨をしっかりと固定し、正しい位置で骨が再生することを助けます。
マシニングセンタを使用することで、骨接合用プレートは高精度な形状と滑らかな表面を実現できます。これにより、患者の体内での適合性が向上し、治療効果を発揮します。
人工関節
人工関節は、変形や損傷した関節を置き換えるために使用される重要な医療機器です。その構成部品は以下のとおりです。
- カップ:骨盤側の受け皿部分。
- インサート:滑りを良くし、摩擦を軽減するパーツ。
- 骨頭:滑りを良くし、摩擦を軽減するパーツ。
- ステム:大腿骨に挿入され、安定性を提供します。
人工関節(材質:Ti-6Al-4V)
これらの部品は、金属(チタンなど)、ポリエチレン、セラミックといった耐久性の高い素材で構成され、マシニングセンタによる微細な加工が求められます。
マシニングセンタは、人工関節の複雑な構造を精密に加工し、長期間使用できる耐久性と人体への適合性を提供します。
マシニングセンタの重要性
医療機器の製造において、マシニングセンタは不可欠な役割を担っています。その精密加工技術により、複雑な形状や細かなパーツを高精度に仕上げることが可能です。特に骨接合用プレートや人工関節のような医療機器では、人体への適合性が治療効果に直結するため、高度な加工技術が求められます。
マシニングセンタを活用した医療機器の製造技術の進化により、患者への治療の質が向上し、医療の発展がさらに加速するでしょう。
医療機器を製造販売するには
医療機器を日本市場で製造販売するためには、「医薬品医療機器等法(薬機法)」に基づき、以下の手続きが必要です。
- 製造販売業許可申請
各都道府県に申請を行い、製造販売の許可を取得します。
- 製造販売承認申請
厚生労働省が定める審査を通過し、承認を得ます。
- QMS適合性調査
品質管理システムの適合性が、書面または実地で審査されます。
- 製造業登録申請
製造業の登録も行い、必要な書面審査を受けます。
このような手続きを経て、安全性と品質が確保され、医療現場に信頼される製品が提供されます。たとえば、製造販売業許可申請では、必要書類として製造プロセスの詳細報告書や品質管理記録が必要です。医療機器の製造は、高度な技術と厳格な基準が求められる分野ですが、その成果は多くの患者に貢献し、生活の質を向上させています。
医療機器の基礎知識を深め、未来の医療を支えるために
医療機器は、私たちの健康を守るために欠かせない存在であり、その種類や製造プロセスについて知ることで、医療の未来に対する理解が深まります。本記事で得た知識をもとに、医療機器の重要性や可能性について考えるきっかけとなれば幸いです。
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文:河井ひとみ
1979年生まれ。国立工業高専卒業後、ソフトカプセルOEMメーカーに入社し、品質管理・品質保証職を経験。化粧品会社への転職を経て、2020年にフリーライターへ転身。製造業関連のBtoB記事はじめ、SaaS関連記事やホワイトペーパーなど幅広いコンテンツを手がけています。
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編集:株式会社イージーゴー
WEBコンテンツ、紙媒体、動画等の企画制作を行う編集制作事務所です。ライターコミュニティ「ライター研究所」も運営しています。
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