- マシナリーお役立ちNAVI
- 工作機械を学ぶ
ダイカスティングとは?
ダイカスティングと切削加工の違いや関係性も解説
公開日:2024.11.12
ダイカスト・ダイキャストとも呼ばれるダイカスティングは、鋳造技術の一つです。非鉄金属を熱して溶かし、金型に流し込みさまざまな形状に成型するこの技術は、自動車や家電製品などの部品製造において主に用いられています。本記事では、ダイカスティングとは何か、そのメリット・デメリットや、切削加工との違いなどについて解説します。
目次
ダイカスティングとは?
ダイカスティング(Die Casting)とは、ダイカストやダイキャストとも呼ばれる技術で、非鉄金属の合金を熱して溶かし、金型に流し込み瞬時に製品を成型する鋳造技術のことです。ダイカスティングでは、ダイカストマシンに取り付けた精密な金型に溶かしたアルミニウム・マグネシウムなどの合金を高速・高圧で注入することにより、複雑な形状の部品も簡単かつ迅速に製造できるようになりました。
ダイカスティングのメリット・
デメリット
ダイカスティングによって製品を製造することには、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。詳しく見ていきましょう。
ダイカスティングのメリット
ダイカスティングのメリットには次のようなものがあります。
- 大量生産が可能
- 複雑な形状に対応できる
- 寸法精度が高い
- 二次加工が少ない
- コストを抑えられる可能性がある
ダイカスティングのメリットには、複雑な形状の製品を製造できることに加え、寸法精度が高く大量生産が可能なこと、生産コストを抑えられる可能性があることなどが挙げられます。
金型を一から作成する手間がある一方で、製品にあわせてさまざまな形状の金型を作ることで複雑な三次元形状の製品も容易に製造できます。また、一般的な鋳造と比較して寸法精度が高く、加えて切削加工と比較して歩留まり率が高く、バリ取りを行うだけで製品を完成させられることもメリットです。
特に大量生産が必要な製品の製造においては、ダイカスティングのメリットを大きく感じられるでしょう。金型をつくれば複雑な形状の製品を少ない工程で大量生産できるダイカスティングの活用で、生産コストを抑えられる可能性もあります。
ダイカスティングのデメリット
これらのメリットがある一方で、ダイカスティングにはデメリットも存在しています。
- 強度が低い
- 金型の費用が高く少量生産には向かない
- パイプや中空形状など製造できない形状がある
ダイカスト製品は、一般的に内部に鋳巣と呼ばれる空洞が発生する可能性があるため、切削加工で作られた製品と比較して強度が低い傾向があります。技術の進展によって鋳巣の発生を抑える手法もでているものの、それら手法では製造コストが高くなってしまう可能性があります。
また、金型自体の作成費用が高く、ダイカスティングでの製造では初期コストが大きくなりがちです。
初期コストの問題は大量生産によって費用の回収を見込めます。よって、少量生産には向かない製造方法といえます。また、製造する部品によっては金型の寿命が縮まる可能性があり、大量生産でもコストが高上がりになる可能性がある点に注意しましょう。
ダイカスティングでは製造できない形状があることもデメリットといえます。パイプ状のもの、中空形状のものは製造できないほか、内側に出っ張った形状や側面に穴があるような形状を作ることには向いていません。
ダイカスティングと切削加工の
違いや関係性
切削加工とは、主に工作機械を用いて材料を削ったり穴を開けたりする加工のことで、金型を用いた鋳造加工のダイカスティングとは、そもそもの製造方法が異なります。それぞれの製造で向いている製品に違いがあります。切削加工は、小ロットでの製造やダイカスト移行前の試作品の製作にも使われており、ダイカスティングは複雑な形状の製品を作る場合や、同じ形状のものを大量に生産することに向いています。
これらの特徴から 、製造するものや個数にあわせて切削加工とダイカスティングを使い分けています。 切削加工とダイカスティングを組み合わせて製造するケースも多くあります。
製品図面上には、鋳造の寸法公差等級と切削加工 の寸法公差が明確に記載されているため、それをもとにダイカスティングのみでの製造が可能か、切削加工が必要かを判断します。この切削加工には、面削り加工や穴あけ加工も含まれます。
ダイカスティングで製造した製品の
切削加工の注意点
ダイカスティングで製造した製品には“ばらつき”が生じます。そのばらつきを考慮した治具の製作、切粉の影響を最小限に抑える加工パスの作成などの注意が必要です。
ダイカスト製品は大量生産が前提であるため、工作機械の稼働率を下げないために、こまめなチェックやメンテナンスが重要となります。
ダイカスティングを用いて
製造されているモノの例
ダイカスティングを用いて製造されているモノは身近に多くあります。中でも多いものが自動車関連の部品です。自動車部品では、エンジン部品を中心としてダイカスティングが活用されています。
材料 | 特徴 | 製造されている部品の例 |
---|---|---|
アルミニウム | 軽量で寸法安定性に優れている | エンジンブランケット、ギアボックスケース、バルブボディ、油圧シリンダーなど |
亜鉛 | 高い衝撃強度と延性がある | ドアロックハウジング、リトラクターギア、シートベルトのプーリーなど |
マグネシウム | 軽量で柔軟、かつ耐熱性に優れている | パソコン部品や業務用ビデオカメラ部品など |
自動車以外では、冷蔵庫や洗濯機、掃除機など家庭で使用する電化製品のほか、オフィスで使用されるコピー機やプリンター、ファックス、パソコン本体や周辺機器、カメラにもダイカスティングで作られた部品が使用されています。
このようにダイカスティングは、日常生活に必要なモノの製造に欠かせない製法なのです。
ダイカスティングと切削加工の
組み合わせと使い分けでさまざまなモノを製造できる
複雑な形状のものでも瞬時に製造できるダイカスティングと、細かな調整も可能な切削加工を組み合わせることで、高い精度を求められる部品をはじめさまざまなモノを製造できるようになります。
ダイカスティングで製品を製造する場合には、ダイカスティングにあるメリット・デメリットを把握しておくことで、よりよい製品を効率的に製造できる可能性があります。ダイカスティングの基礎をしっかりと理解して、日々の業務に役立てていきましょう。
-
文:髙橋みゆき
1983年生まれ。2016年よりライター・編集者。各種民間保険、介護、医療、ITなど幅広いジャンルの記事を企画・執筆。
-
編集:株式会社イージーゴー
WEBコンテンツ、紙媒体、動画等の企画制作を行う編集制作事務所です。ライターコミュニティ「ライター研究所」も運営しています。
https://eggo.jp/
- 加工の実力を知りたい
- SPEEDIOの加工の実力を知る
- ブラザーホーム
- 製品情報
- 工作機械
- マシナリーお役立ちNAVI
- ダイカスティングとは?