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ツールホルダーの種類と特徴 基礎知識や使用時の注意点も
公開日:2025.02.18
マシニングセンタで加工する際、内容に応じて切削工具を使い分ける必要があります。マシニングセンタに工具を取り付けるために使用するのが、ツールホルダーです。ツールホルダーにもいくつかの種類があります。高精度の加工をするためには、適切なホルダー選びが欠かせません。この記事では、主要なツールホルダーの種類とその概要、取り付ける際の注意点を解説します。
ツールホルダーとは
ツールホルダーは、マシニングセンタで加工を行う際に欠かせないパーツです。まずは、ツールホルダーの基本的な役割と種類を解説します。
工具をマシニングセンタなどに取り付ける際に使うパーツのこと
ツールホルダーとは、エンドミルやドリルなどの切削工具(ツール)を、マシニングセンタなどに取り付ける際に保持するためのパーツです。
前提として、マシニングセンタは主軸部分の形状がISO規格で定められており、使用できる刃物軸径も決まっています。しかし多様な加工を行うためには、太さ・長さ・形状の違う刃物を固定しなければなりません。そのために、ツールホルダーが必要不可欠なのです。
また、ただ単に刃物を固定するだけではありません。ホルダーにエクステンションやヘッドを組み合わせることで、目的に適したツールを構成することも可能です。
なお、ホルダーの形状もISO規格に準拠した規格で決まっています。日本の場合はBT規格が多いものの、他国の場合は他国の主流の規格があります。また、刃物軸径が大きくなるとホルダーも太くなる傾向にあります。
大きく2種類に分けられる
ツールホルダーは、さらに「ホルダー」と「アーバー」との2種類に分けられます。ホルダーについては詳しくは後述しますが、工具を保持する部分が凹状のものです。
一方、アーバーは工具を保持する部分が凸状のものです。フライスカッター・サイドカッターなど、外径が大きい円盤状・円筒状のツールを固定するために使用します。ホルダーと異なり、軸径と長さ・キー寸法等が各種で決まっている点が特徴です。
代表的なツールホルダーの種類と特徴
ツールホルダーのうち主要なものは、「コレットチャック」「ミーリングチャック」「焼嵌めホルダー」「ハイドロチャック」「サイドロックチャック」の5つです。それぞれの概要と特徴を解説します。
コレットチャック
コレットチャックは、ホルダーのなかでも一般的なものです。ドリル・リーマ―・タップ・小径エンドミルなどによく使用されます。
コレットチャックは、コレットとチャックユニットから構成されます。ナットを締めることでコレットが押し込まれ、ツール軸を締め付ける仕組みです。
コレットは、刃物軸径に合わせて、0.5mm刻みで存在します。掴む刃物軸系に合わせて、適切なものを使用しましょう。ただし他のホルダーより保持力が低いため、太い刃物はあまり固定できない点はデメリットです。
ミーリングチャック
ミ―リングチャックは、エンドミルなど軸径の大きいツールを掴むホルダーです。「ロールチャック」とも呼ばれます。内部に細い棒状のローラ(ニードルローラ)で締め付けるため、保持力が強い点が特徴です。大径エンドミルを使うときなど、加工に力が必要な際に使用します。
ミーリングチャックはホルダーの穴径によって、使用できるツールの径が決まります。ただしホルダーを締め付けても数十μしか閉まらないため、付ける軸径の精度も必要です。また、ホルダー自体が大きいため、工具長も長くなります。加えて、曲げ剛性もやや低めです。
焼嵌めホルダー
焼嵌めホルダーは、ホルダー穴を加熱することで拡張し、冷却してツールを固定するものです。熱の膨張で固定するため、固定用の機構がありません。その分、刃物軸に対して細いホルダーにでき、加工時の干渉を回避できます。
また、専用の機械で取り付けるため間違いなく取り付けられる点も特徴です。さらに取付精度・剛性・保持力に優れており、高精度加工にも適しています。
更にホルダーをスリムにできるためワークとの接近性が格段に良くなります。
ただし熱を使って固定する分、チャックの加熱や冷却に多少時間がかかります。加えて使用できるシャンク径が決まっているため、使用できる工具の数は絞られます。
ハイドロチャック(油圧チャック)
ハイドロチャックは内部に油圧機構をもつホルダーです。レンチで締め付けることで内部にあるオイルを圧縮し、ツール保持面を膨らませてツールを締め付けます。「油圧チャック」と呼ばれることもあります。
ハイドロチャックは、焼嵌めホルダーと同様に先端をスリムにできる点が強みです。焼嵌め装置も不要で、コレットホルダー以上に手軽に扱えます。加えて軸を油で包んでいる分、防振効果も期待できます。ただし使用しているうちに油の温度変化があったり、寿命が短かったりするため、扱いには注意が必要です。
サイドロックチャック
サイドロックチャックは、その名前のとおり側面からネジでとめて工具を固定するチャックのことです。保持力に優れており、大径の工具の保持にも適しています。構造が単純で、扱いやすいホルダーです。
ただしネジでとめる分だけ剛性が低く、びびりが発生しやすい点は弱みです。
その他のホルダーの種類と特徴
これまで紹介したホルダーは工具を挿入して固定するものでしたが、工具と一体化しているホルダーも存在します。なかでも使われることの多い、2つのホルダーについて紹介します。
先端交換式一体型ホルダー
先端交換式一体型ホルダーは、名前のとおりホルダーと先端に付ける刃先ツールが一体化しているものです。刃先ツールを変えることで、同じサイズのホルダーでさまざまな加工に対応できます。刃先ツールをホルダー内にねじ込むタイプであるため、工具全体の長さを短くでき、加工能力の向上にも期待できます。
ただし、万が一破損するとホルダーの中にネジ部が残る場合があります。その結果、ホルダーが使用できなくなることもあります。また、刃先ツールの互換性がやや乏しい点も弱みです。近年では複数の工具メーカーが一体型ホルダーを発売していますが、取り付けられる刃先ツールはメーカーによって決まっています。そのため「A社の先端交換式一体型ホルダーに、B社の刃先ツールを付ける」といったことは難しいことがほとんどです。
刃先(チップ)交換式一体型ホルダー
刃先(チップ)交換式一体型ホルダーも先端とホルダーが一体化したものですが、交換できるのが刃先のみである点が異なります。一体型である分、工具長自体を短くすることが可能です。また、切削能力も代表的なツールホルダーに比べると高めです。
刃先交換式一体型ホルダーは、特にBT30番の工作機械での使用が効果的です。BT30番の工作機械は全体的にコンパクトである分、他と比べてホルダーが小さく、主軸との結合も弱めです。しかし、工具長を短くできる刃先交換式一体型ホルダーを使用すると加工時の振動を抑えられます。結果、加工能力の向上にも期待できます。自社でBT30番の工作機械を使っている場合は、使用を検討してはいかがでしょうか。
工具をツールホルダーに取り付ける際の注意点
こうしたツールホルダーに工具を取り付ける際は、いくつか注意すべき点があります。期待通りの加工を行うためにも、これから紹介する内容を使用前に必ず確認しましょう。
用途や目的に応じて使い分ける
ツールホルダーは、使用する工具に合うものを使ってください。日本ではBTホルダーが主流となっていますが、それ以外にも規格として多種のインターフェースが存在します。マシン側主軸のインターフェースと合わせて、ツール側のインターフェースを用意しなければなりません。
もし合わないものを使ってしまうと、工具が必要以上に振動してしまい、加工精度が低下します。また、工具の寿命も短くなってしまう可能性もあります。
接触面のキズや汚れがないかを確認する
ツールホルダーの接触面(シャンク)にキズや汚れ、サビなどがないかも、よく確認しましょう。もし接触面にキズや汚れが付いていると工具との締結剛性が低くなり、加工精度の低下を招きます。工具を付け外しするたびに確認し、何か付着していればすみやかに取り除きましょう。
もしサビを発見した場合は、早急に取り除いてください。ツールホルダーにサビがあると、ホルダー自体の劣化が進みます。さらにサビがマシニングセンタ側にも移ってしまい、他の業務にも多大な影響を及ぼすケースがあります。使用後は、ホルダーを取り除いてよく洗いましょう。そして水気を丁寧に拭き取り、防錆油を塗ってください。
適切なツールホルダーを選んで高精度の加工を実現
ツールホルダーにはいくつもの種類があり、それぞれ構造や得手不得手が異なります。しかしそれを言い換えれば、特徴を把握して使いこなせば、思い通りの加工がしやすくなるということでもあります。
まずは、自分が行いたい加工の内容に合うツールホルダーはどれかを、瞬時に判断できるようになりましょう。そのうえで、適切に使い分けることが重要です。今回は代表的なものを5つと、一体型ホルダーを2つ紹介しました。これらは使用頻度の高い工具で、それぞれの特徴を覚えておくと便利です。
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文:シモカワヒロコ
1994年生まれ。月刊誌の編集者を経て、現在はWebや新聞、雑誌、書籍など幅広い媒体で活動中のライター・編集者。ザ・文系ながら、昔からメカが好き。
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編集:株式会社イージーゴー
WEBコンテンツ、紙媒体、動画等の企画制作を行う編集制作事務所です。ライターコミュニティ「ライター研究所」も運営しています。
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