エネルギーの無駄削減を実現し環境に配慮したものづくりに貢献するSPEEDIO Blue Technology

工作機械に省エネルギーが求められている理由

製造業は、人が生活するうえで欠かせないものづくりを行っている業界です。しかし、そのニーズに応えるためには、多くのエネルギーを消費しなければなりません。

近年では、温暖化の影響とみられる気候変動への対策や資源の枯渇を背景に、世界的に温室効果ガスの削減に取り組んでいます。日本では、政府が「2050年カーボンニュートラル」を掲げ、企業にも温室効果ガスを削減するよう求めています。

経済産業省資源エネルギー庁が公表する「令和4年度エネルギーに関する年次報告書（エネルギー白書2023）」によると、2021年の日本の最終エネルギー消費に占めるシェアは、企業・事業所部門が63.5％を占めています。さらに、企業・事業所部門の中では、製造業が最大のシェアとなる68.6％を占めているとのことです。

これらのことから、国内で多くのエネルギーを消費している企業・事業所部門の中でも、製造業が省エネルギーに取り組むことには大きな意義があることがわかります。製造業の各企業が消費電力を抑え、省エネルギーに取り組むことで、温室効果ガスを日本全体で大きく削減できる可能性があるのです。

工作機械は電力消費が大きい

では、製造業の各企業はどのようにして省エネルギーを実現すればよいのでしょうか。効果的な取り組みとしては、消費電力の大きい工作機械を省エネ対応のものに更新することが考えられます。

工作機械の更新によって省エネを実現することは、地球環境に配慮しながら電気料金の削減を図れることもメリットです。

工作機械の中でも、電力が多く消費される部分には主軸モータ、サーボ （主軸以外の各送り軸）、クーラント、エアコンプレッサー、操作パネルなどがあります。

主軸モータは、工作機械の中心となる部分です。主軸モータの回転によって切削や研磨を行うため、加工中や起動・停止時に大きな電力を消費します。

サーボは、各軸の動きを正確に制御するためのモータとアンプのことです。各軸の動きを制御するため、連続的な電力供給を必要とします。

クーラントは、切削時に発生する熱を冷却するための液体 のことです。クーラントをくみ上げるためのポンプに電力を使用します。

工作機械内部に圧縮空気 を供給するエアコンプレッサーは、一定の空気圧を維持するために電力を使用します。さらに、操作パネル、各種センサー、機内灯等々、またそれら全体を制御するNC装置においては、常時電力を消費しています。

このように、工作機械はワークの加工中はもちろん、切削していない間でも内部の温度や状態を保つために多くの電力を消費しているのです。

工作機械における省エネ化の
ポイント

SPEEDIO Blue Technologyは、大きく電力を消費する工作機械にあるエネルギーの無駄を削減し、トップクラスの省エネ性能を実現しています。

図のグラフは、EV車に使用されるインバーターケース部品を加工した際の消費電力量とエア消費量を他社製品と比較したものです。消費電力量に関しては、他社の40番マシニングセンタと比較して80％、他社の30番マシニングセンタ比較して30％低いというデータが出ています。

エア消費量に関しても、他社の30番マシニングセンタと比較して約70％削減できていることがわかります。

一般的な製造業の企業においては、消費電力の55％が生産設備、25％がコンプレッサーといわれているため、これらを削減することが省エネのポイントです。SPEEDIOは、設備の消費電力とエアの消費を抑えることで、トップクラスの省エネ性能を実現しているのです。

SPEEDIO Blue Technologyの
省エネ6つのポイント

前述したSPEEDIOが有するトップクラスの省エネ性能について、さらに詳しく見ていきましょう。

高効率主軸（IPM）モータ

ブラザー独自の高加減速タイプの同期モータは、回転・停止のレスポンスが速いため、省電力かつ高効率な切削を実現できます。

その理由は、高効率主軸（IPM）モータのロータ内部にあります。

IPMモータのロータ内部には永久磁石が埋め込まれています。この永久磁石の強力な磁力によって、高速・高出力が可能になりました。

誘導モータの場合、モータが回転するまでには次の3つのステップが必要です。

<誘導モータが回転するまでの流れ>

IPMモータの場合、モータの回転までにはステップ2の部分を必要としません。SPEEDIOのIPMモータでは、ロータの磁界発生に電力を使用しないため、他社の多くが採用している誘導モータと比較して省エネルギーなのです。

電源回生システム

SPEEDIOの省エネ性能の大きなポイントに、電源回生システムがあります。電源回生システムとは、ハイブリッド自動車が減速時に充電するように、モータの減速時に発電作用を起こし、その発電で発生した電力を活用するシステムです。

例えば、インバーターケースを加工したときには、消費した電力量の23％を回生電力として得られます。スタートとストップを繰り返すタップ加工では、50％という高い回生率を得られます。

省エネNC機能

省電力を実現する大きな要因となっている高効率主軸モータと電源回生システムに加え、SPEEDIOは省エネNCも備えています。具体的には、次の機能で待機時間の無駄な電力使用を削減します。

工作機械は、待機時間にも多くの電力を消費しています。SPEEDIOは、ワークを加工していない間の無駄なエネルギーを手間なく削減できる機能で省エネに寄与します。

エアパージ

SPEEDIOでは、エアパージにおけるエア流量を抑えることで省エアを実現しました。エアパージとは、エアを吐出することで主軸へのクーラント侵入を防ぐ機能です。

エアパージにおけるエア流量を少なくするため、クーラントの入りにくい高い密閉構造にすることにより、エア消費量を大幅に削減しています。

主軸エアブロー

工具交換時にエアの吐出で異物を取り除く主軸エアブローでも、エア消費量を削減しています。従来、主軸エアブローでは工具交換時の全領域でエアを吐出していました。

それを、必要な区間にのみ3倍のエアを吐出することにより、少ない消費電力とエア流量でしっかりと洗浄できるようになりました。

消費電力アプリ

消費電力アプリは、サーボ、ポンプ、その他の機器など、用途に分類して消費電力量を表示するツールです。サイクル単位での消費電力計算も可能です。可視化したデータをもとに、さらなる省エネに取り組めるようになるでしょう。

さまざまな省エネ機能を搭載し
エネルギーの無駄削減に寄与するSPEEDIO Blue Technology

電源回生システムをはじめ、省エネNC機能などさまざまな省エネ機能を搭載しているSPEEDIO。性能向上により、エア消費量を最適化することでエネルギーの無駄を削減しています。

ワーク1個当たりの電力量を1999年に発売したTC-S2Aと2022年発売のS500Xd1を比較すると、消費電力を52％削減できています。

エネルギーの無駄削減は、コスト削減だけでなく地球環境への負荷低減のためにも必要な取り組みです。エネルギー消費量の多い製造業では、各企業がエネルギー削減に努める必要があるでしょう。

省エネ性能を持つ工作機械への更新は、高いエネルギー削減効果を見込めます。これから工作機械の導入・更新を検討している企業は、生産効率向上とあわせて省エネ性能にも着目して製品を選定することをおすすめします。