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中堅・中小成長投資補助金1次公募の採択結果を解説!
5つの指標から見る傾向
公開日:2024.08.27
「中堅・中小成長投資補助金」(大規模成長投資補助金)は、企業の成長投資を後押しし経済の活性化への寄与を目的とした制度です。事業拡大を検討するなかで、資金調達がネックとなりなかなか設備投資に踏み切れない企業は少なくありません。
補助金制度を活用することで、資金的負担を軽減しながら未来への投資活動を行えます。
本記事では1次公募の結果を振り返りながら、採択のカギとなるポイントを解説します。ぜひ最後までお読みください。
中堅・中小成長投資補助金1次公募の採択率は14.8%
中堅・中小成長投資補助金の1次公募結果が発表され、採択率は14.8%となりました。
有効申請数:736件
1次審査通過件数:254件(34.5%)
採択(プレゼンテーション審査通過):109件(14.8%)
採択された事業の平均投資予定額は約54億円となっており、比較的投資規模の大きい企業の採択が目立ちます。また、採択事業における平均目標賃上げ率は4.3%となっており、高い目標水準を掲げる事業が選ばれる傾向にあるといえます。
この結果から中堅・中小成長投資補助金は、中堅・中小企業の大規模な成長投資を後押しし、経済の活性化への寄与を目指していることがわかります。
さらに、採択事業者の多くが金融機関による確認書を提出しています。事業規模が大きいことを鑑みると、銀行や信用金庫との連携は欠かせない要件のひとつといえるでしょう。そのため、「第三者機関による計画の妥当性評価の有無」も採択のカギとなります(採択された109件のうち、金融機関による確認書を提出していない企業は2社のみ)。
2次回以降の公募への申請を検討している企業は、これらの点を念頭に置いて事業計画を立案することが重要です。
業種別では製造業と先端技術分野が主流
採択案件を業種別に見ると、製造業が多い傾向にあります。特に、半導体関連、自動車部品、機械製造、食品製造などの分野が目立ちます。
また、EV(電気自動車)関連、IoT・AI技術、環境・エネルギー分野など、先端技術分野への投資も少なくありません。政府が推進するデジタルトランスフォーメーション(DX)やグリーントランスフォーメーション(GX)の方針に沿った傾向といえるでしょう。
【採択事業一例】(成長投資計画名)
- 独自製法ノンフライカップ麺の新展開に向けた大規模投資
- 感動のモノづくりで近未来モビリティの実現に貢献!大型化・量産化の環境構築
- SDGs対応ボトルに特化した省人化工場の実現
- 工作機械用ツーリング高度化事業の大規模投資
- 工場の自働化と自社ノウハウの活用による農業・林業機械事業への進出
- 自動倉庫システムの構築による顧客特化型ソリューションの提供および研究開発力の強化
- プレス工程等の省力化機器でEV用オイルシール芯金部品へ展開
5つの指標から見る傾向分析
続いては、中堅・中小成長投資補助金1次公募の採択結果を5つの採択指標ごとに見ていきましょう。
1. 経営力
指標 (対象企業の中央値) |
採択者 (n=109) |
申請者全体 (n=736) |
---|---|---|
全社年平均売上⾼成⻑率 | 10%/年 | 7%/年 |
全社売上⾼増加額 | +55.0億円 | +19.5億円 |
全社売上⾼に対する 補助事業売上⾼の割合 |
73% | 53% |
経営力の面では、採択企業が高い成長率を示しています。全社年平均売上高成長率は採択企業が年率10%であるのに対し、全体では年率7%にとどまっています。また、全社売上高増加額も採択企業が55.0億円と、全申請者の19.5億円を大幅に上回っているのもポイントです。
審査では、長期的な成長ビジョンと戦略的思考が重視されます。5~10年後を見据えた具体的な全社ビジョンを描き、それに向けた論理的な戦略構築が評価のポイントとなります。
2. 先進性・成長性
指標 (対象企業の中央値) |
採択者 (n=109) |
申請者全体 (n=736) |
---|---|---|
補助事業年平均 売上⾼成⻑率 |
13%/年 | 8%/年 |
補助事業売上⾼増加額 | +41.1億円 | +14.1億円 |
補助事業年平均 労働⽣産性の伸び |
15%/年 | 12%/年 |
補助事業付加価値増加額 | +14.2億円 | +5.1億円 |
補助事業に限っても、採択企業は高い成長性を示しています。補助事業年平均売上高成長率は採択企業が年率13%であるのに対し、全申請者は年率8%です。また、売上増加額、生産性、付加価値増加額のいずれの指標においても、採択企業が全体を大きく上回っています。
競合他社との明確な差別化戦略、労働生産性の抜本的な向上計画などが重要視されるということでしょう。採択企業の事業概要を見ても、独自性の高い製品・サービス開発や、大幅な労働生産性向上施策が多く見られます。
3. 地域への波及効果
指標 (対象企業の中央値) |
採択者 (n=109) |
申請者全体 (n=736) |
---|---|---|
年平均従業員⽬標賃上げ率 | 4.3%/年 | 3.5%/年 |
従業員給与⽀給総額の増加額 | +2.3億円 | +0.9億円 |
年平均役員⽬標賃上げ率 | 4.0%/年 | 3.4%/年 |
役員給与⽀給総額の増加額 | +0.05億円 | +0.03億円 |
中堅・中小成長投資補助金は、「人手不足対策」や「持続的な賃上げ」が事業の主な目的です。そのため、補助事業を通じて、いかに従業員の労働環境改善につなげられるかも重要な指標です。
たとえば、従業員給与支給総額の増加額において、採択企業は2.3億円と全体を大きく上回っており、地域経済への貢献度が高く評価されています。
4. 大規模投資・費用対効果
指標 (対象企業の中央値) |
採択者 (n=109) |
申請者全体 (n=736) |
---|---|---|
全社売上⾼に対する投資額割合 | 36% | 50% |
補助⾦額に対する補助事業 付加価値増加額割合 |
126% | 61% |
全社売上高に対する投資額割合は採択企業が36%で、全申請者の50%よりも低くなっています。言い換えれば、売上規模に対してあまりに補助事業の予算が大きすぎるとマイナス評価につながりうるということです。
また、補助金額に対する補助事業付加価値増加額割合は採択企業が126%と、全申請者の61%を大きく上回っているのも特徴的です。つまり、補助金額に対して2倍以上の付加価値が出せるかがひとつの基準となるでしょう。
投資規模の適切性、投資に対する高い収益性、そして企業全体の成長につながる投資計画が求められます。
5. 実現可能性
指標 (対象企業の中央値) |
採択者 (n=109) |
申請者全体 (n=736) |
---|---|---|
ローカルベンチマークの得点 | 23点 | 22点 |
ローカルベンチマークの得点は採択企業が23点で、全申請者の22点をわずかに上回っています。ローカルベンチマーク(通称:ロカベン)とは、経済産業省が公表している企業の経営状態を把握するツールで、売上高増加率や営業利益率などの指標をもとに、経営状況を客観的に分析できます。
以上、これら5つの指標を総合的に見ると、採択された事業は「長期的視点に立った成長戦略」「高い生産性向上と地域への貢献」「効率的かつ実現性の高い大規模投資計画」などの要素を備えていることがわかります。
早期に準備を進めて中堅・中小成長投資補助金採択を目指そう
中堅・中小成長投資補助金の1次公募採択率は14.8%という結果でした。採択までの道のりは決して簡単ではありませんが、上手に活用できれば全社的な成長につながります。
そのためにも、申請書類作成には十分な時間を確保し、必要に応じて金融機関や専門家のアドバイスを受けることも検討しましょう。事業計画が採択されれば、売り上げアップや生産性向上、ひいては従業員の待遇改善にもつながります。今回ご紹介した1次公募の結果分析も参考にしながら、戦略的な事業計画を立案しましょう。
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文:小林悠樹
1988年生まれ。一橋大学卒業後、食品メーカーへ入社。営業職を経験したのち、2017年にフリーライターへ転身。企業への取材記事、通信大手のオウンドメディアなどをはじめ、幅広いコンテンツを手がけています。
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編集:株式会社イージーゴー
WEBコンテンツ、紙媒体、動画等の企画制作を行う編集制作事務所です。ライターコミュニティ「ライター研究所」も運営しています。
https://eggo.jp/
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