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中小企業省力化投資補助金
「カタログ注文型」とは?
補助額などを解説
公開日:2025.05.13
少子高齢化に伴う労働力人口の減少や原材料価格の高騰などにより、多くの中小企業が事業継続に課題を抱えています。そこで経済産業省は、令和5年度補正予算で「中小企業省力化投資補助金」を創設しました。
予算規模は、令和5年度補正予算で1,000憶円、既存基金の活用等を含めると総額5,000憶円に及びます。この大型の補助金制度では、IoTやロボット等の省力化製品の導入を支援することで、中小企業の生産性向上と賃上げの実現を目指しています。
この記事では、中小企業省力化投資補助金「カタログ注文型」の概要や特徴をわかりやすくご紹介します。
目次
中小企業省力化投資補助金とは?
中小企業の人手不足は深刻な課題となっており、日本商工会議所の調査によると全体の65.6%の企業が「人手が不足している」と回答しています。このような状況を踏まえ、政府は令和5年度補正予算で新たに「中小企業省力化投資補助金」を創設しました。この補助金には、付加価値額向上や生産性向上に効果的な「汎用製品」を「カタログ」から選択・導入する「カタログ注文型」と、個別の現場や事業内容等に合わせた設備導入・システム構築等の多様な省力化投資を支援する「一般型」の2つの類型で申請可能となっています。
「カタログ注文型」は、販売事業者と二人三脚で進める仕組みにより、補助金申請の経験が少ない小規模事業者でも、複雑な手続きに悩むことなく活用できるのが特徴です。また、製品の効果や価格の妥当性が事前に検証されているため、申請に必要な書類も大幅に簡素化されています。
それでは具体的に「カタログ注文型」の制度概要を確認していきましょう。
制度の概要と目的
中小企業省力化投資補助金は、中小企業等の人手不足解消と生産性向上を支援する制度です。IoT・ロボットといった省力化製品の導入費用を補助することで、売上拡大と賃上げを同時に実現することを目指しています。
本制度の予算規模は1,000億円(令和5年度補正予算)と大規模です。補助率は投資額の1/2以内で、従業員規模に応じて最大1,000万円(賃上げ要件達成時は1,500万円)まで補助を受けられます。
なお、本補助金の大きな特徴は「カタログ注文型」という点です。事務局が事前に承認・登録した省力化製品の中から選んで導入する方式を採用しており、製品の効果や価格の妥当性が検証済みのため、申請手続きが比較的簡素になっています。
販売事業者と共同で取り組む
「カタログ注文型」補助金
本補助金は、従来の補助金制度とは大きく異なる「カタログ型」という方式を採用しています。ものづくり補助金や事業再構築補助金では、事業者が独自に設備を選定し、事業計画書を作成する必要がありました。
一方、本補助金では事前に登録・承認された製品の中から選択する方式を採用し、販売事業者と共同で申請を行います。販売事業者は単なる製品の販売だけでなく、事業計画の作成から申請手続き、製品導入後のサポートまで一貫して支援を行います。
対象となる中小企業
本補助金を利用できるのは「省力化製品の導入により人手不足解消を目指す中小企業等」となっています。
具体的には、以下のいずれかの条件に該当する必要があります。
- 直近の従業員の平均残業時間が30時間を超えている
- 整理解雇に依らない離職・退職によって従業員が前年度比で5%以上減少している
- 採用活動を行い求人を掲載したものの、充足には至らなかった
また、補助を受けるためには、補助事業終了後3年間で労働生産性を年平均3.0%以上向上させる事業計画を策定することが求められます。
なお、以下の事業者は対象外となります。
- ものづくり補助金の交付決定から
10ヶ月未満の事業者 - 過去3年間に2回以上ものづくり補助金の交付決定を受けた事業者
- 事業再構築補助金の採択事業で使用する機器を本補助金で導入する事業者 など
申請スケジュール
2024年6月より申請受付が開始され、それ以降は随時申請を受け付けています。採択・交付決定も随時行われ、交付決定を受けた事業者は原則12ヶ月以内に事業を完了させる必要があります。
中小企業省力化投資補助金は2026年9月末頃まで継続的に公募を実施する予定で、工場の自動化設備やサービス業向けの省力化機器など、様々な業種で活用が期待されています。
中小企業省力化投資補助金
「カタログ注文型」の補助率と
補助上限額
中小企業省力化投資補助金「カタログ注文型」は、従業員規模に応じて補助上限額が設定されており、最大で1,500万円までの補助を受けられます。賃上げ上げ要件を達成することで、より多くの補助金を受けられる仕組みとなっています。
従業員規模別の補助率と
補助上限額
補助率はすべての事業者において1/2以内となっており、補助上限額は従業員規模によって以下のように区分されています。
- 従業員
5人以下 - 200万円
(賃上げ達成時300万円) - 従業員
6~20人 - 500万円
(賃上げ達成時750万円) - 従業員
21人以上 - 1,000万円
(賃上げ達成時1,500万円)
なお、補助金の交付額は、補助対象経費の総額に補助率(1/2)を乗じた金額と補助上限額を比較し、いずれか低い方の金額となります。
補助上限額の引き上げ要件
(賃上げ要件)
より多くの補助金を受けるためには、以下の賃上げ要件を両方達成する必要があります。
- 事業場内最低賃金を45円以上増加
させること - 給与支給総額を6%以上増加させる
こと
ただし、賃上げ要件を活用する場合は、申請時に賃金引き上げ計画を従業員に表明していることが必須となります。また、補助事業実施期間終了時点で要件を達成できなかった場合は、補助額が通常額まで減額になり、実績報告以降に賃金を引き下げた場合も補助金の返還を求められる場合があるので注意しましょう。
補助対象となる製品と活用事例
本補助金の対象となる製品は、事務局の「製品カタログ」に登録された省力化製品に限定されています。カタログには製品の対象業種や業務プロセス、期待される効果などが記載されており、自社の課題に合った製品を選択できます。
製造現場の自動化を実現する製品
製造現場では、加工・生産から保管・搬送まで、様々な工程で人手不足が課題となっています。以下のような製品を導入して製造工程を自動化することで、人手不足の解消と生産性の向上を実現できます。
●製品カテゴリ例
- 5軸制御マシニングセンタ
- 複合加工機
- 鋳物用自動バリ取り装置
- 自動倉庫
- 無人搬送車(AGV・AMR) など
これらの製品導入により、複雑な加工工程の集約や熟練作業の自動化が可能になります。例えば、5軸制御マシニングセンタでは複数台の機械による加工を1台に集約でき、夜間の省人運転もできるようになるでしょう。
また、鋳物用自動バリ取り装置なら、これまで人力で行っていたバリ取り作業の工数削減を実現できます。
※ブラザーの工作機(SPEEDIO)では、以下のモデルがカタログ登録されています。(2025年4月現在)
製品カテゴリ | モデル |
---|---|
5軸制御 マシニングセンタ |
U500Xd2 |
複合加工機 | M200Xd1 M300Xd1 |
鋳物用自動 バリ取り装置 |
デバリングセンターDG-1 |
サービス業の省人化を支援する
製品
労働集約型産業であるサービス業でも、人手不足が深刻な課題です。中小企業省力化投資補助金では例に示したような製品が補助対象になっています。
飲食店でよく見られるようになった配膳ロボットは、料理の運搬から下膳まで自動化できます。また、スチームコンベクションオーブンでシェフの技術をプログラム化すれば、熟練度に関係なく一定の品質の料理を提供できるようになります。
●製品カテゴリ例
- 清掃ロボット
- 配膳ロボット
- スチームコンベクションオーブン
- 自動精算機など
飲食店でよく見られるようになった配膳ロボットは、料理の運搬から下膳まで自動化できます。また、スチームコンベクションオーブンでシェフの技術をプログラム化すれば、熟練度に関係なく一定の品質の料理を提供できるようになります。
検査・品質管理の効率化を実現
する製品
検査・品質管理工程は人の目と経験に頼る作業が多く、作業者の負担が大きい分野です。自動化につながる製品を活用することで、作業時間の短縮と品質の安定化を実現できます。
これらの製品の導入により、検査・品質管理業務を大幅に効率化できます。また、自動化により人為的なミスを防ぐことにつながったり、処理能力が向上したりと、様々なメリットがあります。
●製品カテゴリ例
- 検品・仕分システム
- オートラベラー
- デジタル紙面色校正装置など
これらの製品の導入により、検査・品質管理業務を大幅に効率化できます。また、自動化により人為的なミスを防ぐことにつながったり、処理能力が向上したりと、様々なメリットがあります。
中小企業省力化投資補助金「カタログ注文型」の申請方法と手順
本補助金の申請は、中小企業等と販売事業者が共同で行います。カタログから製品を選び、販売事業者のサポートを受けながら申請を進めることで、小規模事業者でも取り組みやすい仕組みになっています。
申請の準備
申請に先立ち、以下の準備が必要です。
- GビズIDプライムアカウントの取得
- 人手不足の状態を証明する書類の用意
時間外労働時間の記録、従業員数の推移を示す書類など
- その他必要書類の準備
従業員名簿、損益計算書、貸借対照表など
具体的な申請手順
中小企業省力化投資補助金の申請フローは以下の通りとなっています。
- 製品の選定
事務局の製品カタログから、自社の課題解決に適した省力化製品を選択する
- 選定した製品の販売事業者と導入に向けた商談を実施
- 販売事業者と共同で事業計画を策定
- 電子申請システムから、販売事業者と共同で申請
- 事務局による審査が行われ、採択された場合は同時に交付決定
採択後の流れ
採択後は、実績報告や実地検査が行われるため、事業を最後まで完遂することが大切です。
- 交付決定後、省力化製品の導入を開始
原則12ヶ月以内に事業を完了する必要がある
- 実績報告の提出
- 実績報告の確認後:補助金の支払い
- 補助事業終了後:効果報告と実地検査
補助事業終了後3年間は、効果報告が必要で、省力化製品が事業所に導入されているかを確認するための実地検査も行われる
中小企業省力化投資補助金で事業成長を図ろう
中小企業省力化投資補助金は、IoTやロボット等の省力化製品の導入を支援することで、中小企業の人手不足解消と生産性向上を後押しする制度です。
カタログから製品を選んで申請できる仕組みにより、小規模事業者でも活用しやすい設計となっているのが特徴です。また、賃上げ要件と連動した補助上限額の引き上げにより、従業員の待遇改善も同時に実現できます。
2026年9月末まで随時申請ができるため、人手不足に悩む事業者は販売事業者に相談しながら、積極的な活用を検討してみてはいかがでしょうか。
なお、補助要件などは都度変更される場合があります。申請にあたっては、必ず事務局ホームページで最新の公募要領を確認するようにしましょう。
事務局:中小企業省力化投資補助金
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文:小林悠樹
1988年生まれ。一橋大学卒業後、食品メーカーへ入社。営業職を経験したのち、2017年にフリーライターへ転身。企業への取材記事、通信大手のオウンドメディアなどをはじめ、幅広いコンテンツを手がけています。
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編集:株式会社イージーゴー
WEBコンテンツ、紙媒体、動画等の企画制作を行う編集制作事務所です。ライターコミュニティ「ライター研究所」も運営しています。
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