Interview 002
Aki Yoneda
手づくりの温かみを、
刺しゅうと洋服で表現したい
December 18, 2017
刺しゅうの魅力や惹かれた理由などを聞く連載インタビュー。第二回目は、ファッションブランド「Omas Hände」のデザイナーでモデルとしても活動をしている米田有希さん。米田さんがデザインしてくれた刺しゅう模様も、このページの最後に紹介していますので、是非あわせてチェックしてみて下さい。
―― まず、モデルとしても知られる米田さんが、洋服のデザイナーとしても活動するようになったきっかけを教えて下さい。
家族とスペインに引っ越すことが決まったとき、それまでのペースではモデルができなくなるなと思ったんです。でも、何か表現することは続けていきたくて。ブランド自体は東京に居た頃に立ち上げたんですが、洋服のデザインだったら日本じゃなくてもできるなと思って、引っ越しを機に本格的にやるようになりました。
それからは4人の子供の世話をしながら、合間を縫って洋服をつくり、シーズン毎の展示会をするタイミングで一時的に日本に戻る生活を送っています。
―― デザインで特にこだわっていることはありますか?
つくるのは毎回6~8型くらいで、ふんわりとしたシルエットのものが中心なんですが、どれも身体を動かしたときに可愛く見えるよう、特にフォルムにはこだわっていますね。
―― 手刺しゅうを施した、特別な一点ものもつくられているそうですね。
ベースとなる洋服ができあがって、刺しゅうが入っていたらより可愛くなるかも、と思ったものだけにひとつひとつ施しています。刺しゅうはとても存在感があるので、ちょっとしたモチーフだったとしても、洋服が華やぐんですよね。なので、全面ではなく一部分だけに入れて、元の雰囲気や風合いを壊さないようにしています。
―― 手刺しゅうはある程度時間がないと進められないと思うのですが、どんなときにやっているのでしょう?
家事を終わらせた午前中か、夜子供達が寝た後ですね。やらなきゃいけないことが他にあったり、忙しかったりすると、モヤモヤした気分が刺しゅうに反映されてしまうような気がしていて。すっきりしているときにやる方がはかどるんです。
あと夏場、家族とよく海に出かけるんですが、ビーチでリラックスしながら刺しゅうしたりもしますよ。刺しゅうに必要な道具は針と糸とはさみだけなので、どこでももっていけるところがいいですよね。気晴らしのお伴に最適なんです。
―― 元々、刺しゅうに興味があったのでしょうか?
私のおばあちゃんが元々お裁縫を教えていて、幼いころ、よく洋服などをつくってもらっていたんです。そのときからずっと、刺しゅうや縫製に興味をもっていましたね。
「Omas Hände」はドイツ語で「おばあちゃんの手」という意味。おばあちゃんへの憧れや手づくりのものの温かみを表現したいなと思ってつけた名前なんです。
―― ご自身で刺しゅうをやりはじめたのはいつからですか?
実際にはじめるまでは間が空くんですが、長女を妊娠していたときが最初ですね。時間があったので、手縫いでつくった巾着袋に試しに施してみたら、とても楽しかったんです。
その後、ちょっと続けてみようかなと思って、手芸屋さんに通うようになりました。それからしばらく経ったあるとき、自分で刺しゅうを入れたジーンズを履いて出かけたら、友達に「私にもつくって欲しい」とお願いされたことがあって。そのころは完全に自己流だったので、せっかくならもっと綺麗に縫えたものをあげたいなと思って、刺しゅうを習いに行ったり、本を読んで勉強するようになり、それが今につながってくるんです。
―― 刺しゅうミシンがあったら、どのように生活に取り入れてみたいですか?
刺しゅうのいいところって、気軽さと使い古されたものを蘇らせられることだと思うんです。シミがついたり、破けてしまった洋服って行き場をなくしてしまいがちだけど、刺しゅうならそれを隠せるし、補強もできるし、彩りにもなる。刺しゅうミシンだったら時間をかけずにできるから、より気軽ですよね。
あと、誰かにプレゼントをあげるときにも使ってみたいですね。自分が贈りたいものを選んで、好みの模様を施せば、さらに特別な、想いのこもったプレゼントになるはずです。
text:大隈祐輔 photo:山田薫
Aki Yoneda
徳島県出身。女子美術大学卒。10代からモデルとして活動し、2012年に趣味である手刺しゅうを取り入れたブランド「」を立ち上げる。同年よりスペインに移住。3人の女の子、1人の男の子の母という顔ももつ。著書に『AQUi モデル米田有希のNatural Life』(2014年、主婦の友社)がある。
Creator’s Motif
Design by Aki Yoneda
和のテイストが加わった、
家紋のようにも見えるお花模様
「2018年の春夏コレクションで、お花の手刺しゅうを施した一点もののコンビネゾンを製作したのですが、今回はその雰囲気に少し和のテイストを加えてみました。お花の上に家紋のようにも見えるパターンが重なっているイメージです。シンプルな麻のジャケットやワンピースの背中の首元に入れると可愛いかなと思っています」
この写真の洋服に施されている米田有希さんがデザインした刺しゅう模様は、刺しゅうダウンロードサービス「ハートステッチズ」からダウンロード可能です。※会員登録後、有料での販売となります。
刺しゅうを知る、楽しむ、新しいきっかけを
刺しゅうはきっと、普段の生活に関わるもののなかにひとつはあって、一度は触れたことがある、とてもありふれたもの。しかし、時に記憶の奥深くに残ったり、ものに対する想い入れを強くしたりもする、ちょっと特別なものでもあります。
どうして刺しゅうに惹かれたの?
SeeSew projectは、刺しゅうの作品をつくったり、ライフスタイルに取り入れたりしているクリエイターの方々にそんなことを聞き、改めて刺しゅうがもつ魅力を探るために立ち上げたプロジェクトです。幼い頃にお母さんからもらったもの、お子さんに施してあげたもの、親しい人からプレゼントされたもの。あなたの身近にありませんか?SeeSew projectで話をうかがった方々は意外と、何気ないことを機に刺しゅうに魅了されているようです。