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About shishuPRO
四半世紀に渡り愛される、
刺しゅうデータ作成ソフト。
October 16, 2020
「家族の名前やお気に入りのイラスト、思い出の写真などを刺しゅうしたい」。そんなユーザーからこれまで支持されてきた刺しゅうデータ作成ソフト「刺しゅうPRO」。誕生から四半世紀が経ち、この秋にはvol.11が発売されます。刺しゅうPROの開発に携わってきたブラザー工業P&H事業開発部の武藤幸好さんと鈴木里実さんに、開発のきっかけや最新版の魅力について、オンラインでお話を伺いました。(COVID-19の影響もあり、今回はリモートで取材をしました)。
――「刺しゅうPRO」が発売されて25年が経ちました。開発のきっかけを教えてください。
1991年に、ブラザーとして最初の家庭用刺しゅうミシン(写真上から2枚目)を発売しました。ただ、縫製できる刺しゅうが内蔵の模様や文字のみと限定されていました。お客様からオリジナルのイラストや文字が刺しゅうできるツールがほしいと要望があり、刺しゅうデータを作成するソフト開発をすることになりました。
当時はパソコンが普及していなかったので、刺しゅうデータを作成する専用のソフトではなく、「刺しゅう工房」という専用機を開発しました。ハンディスキャナーが付いていて、描いたイラストをスキャンして刺しゅうデータに変換し、刺しゅう工房から専用のカードにデータを入れミシンに差し込み、刺しゅうをするという仕組みでした。その後、Windowsのパソコンが急速に普及し、専用機ではなくパソコン用のアプリケーションソフトを開発することになりました。それが「刺しゅうPRO」です。(武藤さん)
――刺しゅう工房から刺しゅうPROへ。どのような違いがあったのでしょうか?また、開発にあたり大切にしたことを教えてください。
一番の違いは、自由度が広がったことですね。刺しゅう工房は小さな液晶画面だけですので、細かい編集ができませんでした。パソコンのソフトならば、パソコンの画面上で細かい位置やデザインの調整ができるので、この違いは大きかったと思います。パソコンの知識がない方でも刺しゅうPROを使えば、お好みの刺しゅうができるように機能・ユーザーインターフェースを設計しました。(武藤さん)
――開発にあたって苦労されたことはありますか?
定期的にバージョンアップしているのですが、毎回新しい機能を追加することが大変です。バージョンアップの内容はユーザーさんからヒアリングをしまして、要望を分類して精査することから始まります。刺しゅうPROのコンセプトは、「手軽に、きれいに、いろいろな模様がつくれる」ですので、この3つをバランス良く維持するのが難しいのです。アプリのユーザーインターフェースや画像データ、アウトラインを刺しゅうデータに自動的に変換する技術は、毎回苦労しながら開発をしています。また、刺しゅうPROには日本版だけではなく海外版もあります。外国の方からも要望がたくさん来ますので、その声も聞きながら仕様の見直しを行っています。(武藤さん)
――刺しゅうPROはどのような方に愛用されていますか?
発売当初は一般の方向けにつくられましたが、最近はオリジナルグッズをつくって販売される、ビジネスユースでもたくさん愛用いただいております。弊社の職業用刺しゅうミシン(PRシリーズ)にも対応しており、そういったミシンでも十分使える機能をいろいろ搭載しています。(武藤さん)
――開発者のおひとりとして、これはおすすめしたいという機能はありますか?
図形データというのがつくれるのですが(写真上から5枚目)、その図形データを好きな形に分割できる機能、また、図形データの線のポイントを切断したり接続したりする機能が刺しゅうPRO10から追加され、作品をつくっていて微妙に形を変更したい時などによく使っています。(鈴木さん)
「ステッチデータを色ごとに分解」という機能です。一部分のパーツだけを切り出すことができる機能なので、全部の模様は要らないけれど一部だけを使いたいという時に便利です。(武藤さん)
――刺しゅうデータソフトは様々なものが販売されていると思いますが、刺しゅうPROの特長はどのようなところでしょうか?
データを作成して、編集して管理をするというところは各社大きな違いはないですが、機能によって細かい違いはあります。刺しゅうPROの機能で特に優れていると言われているのが、写真を刺しゅうで再現する機能です。また、ミシン本体とソフトウェアの両方を開発しているので、ミシンとの連携が取れた機能の提案ができていると思います。(鈴木さん)
――秋には刺しゅうPRO11が発売されます。どのようにバージョンアップされているのでしょうか?
キルト作品がつくりやすくなったことが大きなポイントです。例えば、背景ぬいの飾り模様フィルというものがありまして、それを選ぶと刺しゅうの周りなどを飾り模様で埋めることができます(参考作品:写真上から7枚目)。飾り模様フィル以外にも、エコーフィルを選ぶと波紋のように広がった、キルト作品でよく見かけるようなパターンをつくることができます。
他にも、ミシンの実用縫製で使えるステッチパターンが、パソコン上で自由につくれるようになったことも目玉のひとつです。あとは、無線機能が付いたミシンでしたら、ステッチパターンや刺しゅうデータをパソコンから無線で転送できるようになりました。作品が、よりつくりやすくなったと思っています。(鈴木さん)
――今後、刺しゅうPROはどんなふうになってほしいと思いますか?
ミシンで刺しゅうができることをご存じでない方もいらっしゃると思います。刺しゅうPROを通してミシンでも刺しゅうができることを知ってもらい、ミシンそのものを使う楽しさも伝えられる製品の提案ができればいいと思っています。(鈴木さん)
text:杉江さおり photo:junya
刺しゅうを知る、楽しむ、新しいきっかけを
刺しゅうはきっと、普段の生活に関わるもののなかにひとつはあって、一度は触れたことがある、とてもありふれたもの。しかし、時に記憶の奥深くに残ったり、ものに対する想い入れを強くしたりもする、ちょっと特別なものでもあります。
どうして刺しゅうに惹かれたの?
SeeSew projectは、刺しゅうの作品をつくったり、ライフスタイルに取り入れたりしているクリエイターの方々にそんなことを聞き、改めて刺しゅうがもつ魅力を探るために立ち上げたプロジェクトです。幼い頃にお母さんからもらったもの、お子さんに施してあげたもの、親しい人からプレゼントされたもの。あなたの身近にありませんか?SeeSew projectで話をうかがった方々は意外と、何気ないことを機に刺しゅうに魅了されているようです。