Lesson 001
Backing material for embroidery Part.01
ミシン刺しゅうの仕上がりを
より良くするための接着芯。
基礎編
Jun 22, 2020
ミシン刺しゅうに必要不可欠な接着芯。アイロンで生地に接着するもの以外にも、水溶性のシートタイプがあったり、2つの接着芯で生地を挟む使用方法など、布に合わせた種類と方法を選ぶことが刺しゅうの仕上がりをより良いものにします。brotherに在籍しているエデュケーターと呼ばれる講師に、ミシン刺しゅう用接着芯の使い方を教わりました。基礎編と実践編の前後編に分けてお届けします。
—— なぜミシン刺しゅうでは接着芯が必要なのでしょうか。
手刺しゅうの場合は、その生地にあった縫い方や糸じまりを自分自身で調整できますよね。ミシンは機械なので、数ある生地に合わせてということができません。ある程度の生地の厚みや硬さ、地の目の粗さや細かさを、ミシンが刺しゅうするにあたって一定の品質が保たれるように生地を一定化するために必要なのが、接着芯です。
市販の洋服やバッグなどでロゴが刺しゅうされているものがありますが、生地の裏側の刺しゅう部分をよく見ると、紙のようなものが挟まっていることがあります。それが接着芯です。機械で刺しゅうをする場合は、家庭用でも工業用でも必須なんです。
—— いくつか種類があるとのことですが、どのように選ぶのがよいでしょうか。
「刺しゅう用接着芯」が一番オーソドックスなものです。一般的な生地全般向けの不織布タイプで、アイロンを使って接着します。洋裁に使うものは織りの接着芯で布地を補強するものですが、ミシン刺しゅう用のものは取り除くことが前提です。これは紙状のものなので、刺しゅう後にまわりを簡単に破いて剥がすことができます。刺しゅうの中には芯が残りますので、その部分がパリッとなりきれいに見えるんです。アイロンや洗濯にも耐える丈夫さも兼ね備えています。
—— 直接肌に触れるものに刺しゅうする場合、肌に当たる部分に接着芯が残っているとチクチクしてしまいませんか?
そうですね。インナーやタオルなどは、接着芯が残るがゆえにゴワゴワしたり、お子さんのものだとその部分が肌にあたり赤くなってしまうということも考えられます。肌に直接触れるものには、水溶性タイプがおすすめです。刺しゅう後にお水につけたり、洗濯をすることによって糊状になって溶けていきます。そうすることで刺しゅうの糸と生地の間の芯が全てなくなるんです。生地によっては溶けないタイプで刺しゅうすると厚ぼったさが気になることもありますし、どうしても接着芯を残したくないときにも水溶性のタイプは使用できます。
—— 水溶性の接着芯には2種類あるんですね。まずは「刺しゅう用水溶性シートL」の特徴を教えてください。
一番使い勝手が良いのが、「刺しゅう用水溶性シートL(写真上から3枚目、4枚目、5枚目)です。他の2点の接着芯と違い、不織布タイプではなく少し厚めのサランラップのようなとてもソフトな半透明のシート状のものなので、薄く柔らかな生地や伸縮性のある生地に適しています。また、まわりを破くことができるので刺しゅう後にすぐに活用でき便利です。アイロンを使用しないので生地を傷めることもなく、アイロンNGのデリケートな素材にも安心して使えます。面を埋め尽くさないラインだけの風合いを生かした刺しゅうの場合にも向いていますね。
—— 幅広い素材に適しているんですね。他の使用方法はありますか?
ループ状の毛足が長いものは刺しゅうが毛足の中に埋もれてしまうこともあるので、表面をフラットにするという意味で、「刺しゅう用水溶性シートL」を上に載せるという方法もあります。また、デニムや帆布などの硬い生地は刺しゅう枠の跡が残ってしまうことがあるんです。そのようなときに、枠の四隅のみに挟み込む使い方もおすすめです。
—— もう一つの水溶性の接着芯、「刺しゅう用水溶性シート(不織布タイプ)」はどのようなシーンでの使用がおすすめですか?
「刺しゅう用水溶性シート(不織布タイプ)」は強度があるので、透かしレースのようなものをつくるときにおすすめです。枠に接着芯だけを貼り刺しゅうを施します。一度水に濡らすことで接着芯が溶けて、レースのモチーフ、つまり縫い目だけが残ります。生地への刺しゅうではないので、何度も高速で針を通すと接着芯自体が破けてしまうことがあるので、2枚重ねて使用します。「刺しゅう用水溶性シート(L)」を三重にして代用も可能です。
text:高山かおり photo:中矢昌行
Information
テキストの中で紹介した3種類の接着芯は刺しゅうミシン販売店やこちらからご購入できます。生地と図案に合わせてぜひ使ってみてくださいね。
刺しゅうを知る、楽しむ、新しいきっかけを
刺しゅうはきっと、普段の生活に関わるもののなかにひとつはあって、一度は触れたことがある、とてもありふれたもの。しかし、時に記憶の奥深くに残ったり、ものに対する想い入れを強くしたりもする、ちょっと特別なものでもあります。
どうして刺しゅうに惹かれたの?
SeeSew projectは、刺しゅうの作品をつくったり、ライフスタイルに取り入れたりしているクリエイターの方々にそんなことを聞き、改めて刺しゅうがもつ魅力を探るために立ち上げたプロジェクトです。幼い頃にお母さんからもらったもの、お子さんに施してあげたもの、親しい人からプレゼントされたもの。あなたの身近にありませんか?SeeSew projectで話をうかがった方々は意外と、何気ないことを機に刺しゅうに魅了されているようです。