Report 004
nunohaku
布からはじまる
彩り豊かなコミュニケーション。
May 20, 2020
去る2月22日・23日に“布”にまつわるつくり手たちの祭典「布博(ぬのはく) in 名古屋」が開催されました。「布博」開始の2013年以来、初上陸となる名古屋。奇遇にも、刺しゅうミシンparieの内蔵模様のデザインを手がけるatsumiさんの出身地でもあり、ブラザーの本社を構える場所でもあります。そんなご縁から、atsumiさんが出展するブースにて「parieでミシン刺繍体験」と題したワークショップを行い、多くの方にお越しいただきました。「布博」を主催する手紙社の方のお話を交えながら、当日のレポートをお届けします。
様々な業種の展示会に利用されることもあるという広いホールは、つくり手と来場者との熱気で満ちていました。入口のゲートをくぐると、布博の名物企画だという出展者お手製のウェルカムアイコンがお出迎え。今回のテーマである“いちご”のオーナメントが華やかに宙に浮かびます。趣向を凝らした作品が、ひと足早い春を感じさせてくれました。
たくさんの人でにぎわう会場を進むと、彩り豊かな布や手芸用品、あたたかみのある雑貨、そしてフードブースからは美味しそうな匂いが漂います。「布博」とはどのようなイベントなのでしょうか。主催者の手紙社の方へお話を伺いました。
「元々はテキスタイル作家さんに焦点を当てたイベントでした。オリジナルのテキスタイルをはじめ、布製品をつくっている方を集めたイベントが布博です。そこから徐々に規模が大きくなって、現在は布にまつわる手芸用品、ボタンやビーズなどのパーツを扱っている方にもご参加いただいています。
私たちは「東京蚤の市」をはじめとした“蚤の市”イベントも定期的に開催しています。開始は布博より1年前でした。“蚤の市”は、古き良きフランスやヨーロッパでの蚤の市というのをテーマにしていますが、布博は布と手芸に特化させたいという思いがありました。ボタンやビーズの出店者さんはヴィンテージを扱っている方が多いので、“蚤の市”にも布博にも参加されている方がいらっしゃいます」
atsumiさんのブースでは、刺しゅうミシンで製作した缶バッジやポケット、手芸メーカーと共同開発したニードルホルダーなど刺しゅうにまつわるたくさんのものを、atsumiさん自らお客さんとコミュニケーションを取り、販売していました。作家さんから直接ものを買うことができることも布博の魅力です。
「布博にお越しになるみなさんはつくることが好きな方が多いので、買った後にご自身で楽しめるようなものを中心に持ってきています。例えば、プリントを施したトートバッグがそうです。不定期で行っている、ぬりえをするように刺しゅうするというワークショップでも使用しています。知人の古着屋さんから仕入れさせてもらっているヴィンテージクロスにプリントしたものもあります。全部刺しゅうしてもいいですし、途中まででも、何もしなくてもかわいいです。自分のペースで好きなように刺しゅうを楽しんでいただけたら、と思っています。私が手刺しゅうで作成しているアクセサリー(写真上から2枚目)も販売しています」
ブース内では、parieを体験できるワークショップを実施。以前はデモンストレーションのみで、来てくださった方は刺しゅうミシンが動いているのを見ているだけだったため、実際に体験してほしいという思いから実現しました。ご参加くださった方へお話を伺うと、みなさん初めてparieを触ったという方ばかり。
「ミシンは想像以上に簡単で、見ているだけでできてしまうんですね(笑)。手刺しゅうでは布地によって細かい刺しゅうが難しいものもあるので、そういったときに活躍しそうです」とおっしゃるのは、お子さん用に刺しゅうミシンを買いたいと思っていた方。「子どものために買っても結局名前を入れるだけで終わってしまう、という話を聞いたことがありました。parieならイニシャル以外に素敵な図案がいくつもあるので、子どものもの以外にも刺しゅうできそうだなと思いました」
布博では、アーティストによる弾き語りライブやゲストを招いたトークイベントも見どころです。初日には、atsumiさんが自身のお仕事や刺しゅうを始めたきっかけなどについて、手紙社の方とお話しました。企業とのお仕事だけでなく、個人の方からオーダーを受けて製作する刺しゅう作品についても実際の作品写真をスクリーンに映しながら、エピソードを披露。自身のものや贈りものとしての刺しゅうなど、オーダーの数だけ物語がある刺しゅう。様々なお話に会場はあたたかな空気で包まれました。
text:高山かおり photo: junya
Information
布博
2013年より手紙社が主催している、テキスタイルと刺しゅうとアクセサリーの祭典。東京を中心に関西や台湾などでも開催し、ものづくりをする方から熱い支持を受けている、布が持つ魅力を伝えるイベント。
刺しゅうを知る、楽しむ、新しいきっかけを
刺しゅうはきっと、普段の生活に関わるもののなかにひとつはあって、一度は触れたことがある、とてもありふれたもの。しかし、時に記憶の奥深くに残ったり、ものに対する想い入れを強くしたりもする、ちょっと特別なものでもあります。
どうして刺しゅうに惹かれたの?
SeeSew projectは、刺しゅうの作品をつくったり、ライフスタイルに取り入れたりしているクリエイターの方々にそんなことを聞き、改めて刺しゅうがもつ魅力を探るために立ち上げたプロジェクトです。幼い頃にお母さんからもらったもの、お子さんに施してあげたもの、親しい人からプレゼントされたもの。あなたの身近にありませんか?SeeSew projectで話をうかがった方々は意外と、何気ないことを機に刺しゅうに魅了されているようです。