Interview 005
Kanako
何かをつくることと、
大切な人からもらうプレゼントの喜び。
January 26, 2018
刺しゅうの魅力や惹かれた理由などを聞く連載インタビュー。第五回目は、雑貨ブランド「LOTA PRODUCT」を主宰し、モデル、イラストレーターといった多岐に渡る活動をされている香菜子さんのご登場です。香菜子さんがデザインしてくれた刺しゅう模様も、このページの最後に紹介していますので、是非あわせてチェックしてみて下さい。
―― 美術大学をご卒業されたとのことですが、どんな幼少期を過ごされたのでしょうか?
父が染色家、叔父が陶芸家で、そういう環境もあってか、いつも何かをつくっている子供でしたね。弟が今、アーティストとして活動していたり、我が家は、お勤めができない家系のようなんです(笑)。なので、美術大学を志すようになったのは自然の流れでしたね。
―― 専攻は何だったのでしょう?
陶芸です。でも現在は、メインのモデルとしてのお仕事をはじめ、イラストを描いたり、執筆をしたり、ブランドや百貨店などとのコラボレーションでファッションアイテムをつくったりと、色々なことをやらせてもらっています。それぞれ、表現の仕方は違うのですが、自分が素直に楽しいと思えることという点では一貫していて、きちんと向き合い、真摯に取り組むことを常に心がけていますね。仕事に限らず、普段の生活においても。
―― それは素晴らしいですね。ものづくりって本来は楽しいものだと思うのですが、いざ仕事となると、目的が変わってきてしまい、その楽しさが次第に失われていってしまうことも稀にあると思うのですが……。
そうかもしれないですね。仕事だと、色んな人の意見が入ってくるから、進行していくうちに、段々と自分が本当にやりたかったものを忘れてしまうことがたまにあります。そうなったときは、好きなアーティストの画集を改めて見たりして、意識を戻すようにしています。昔、母から「つくっているときに楽しい気分じゃないとダメよ」と、よくいわれていたことを思い出すようにもしていますね。確かに、やらなきゃっていう義務感があると全然いいものができないんですよ。休んだり、距離を置いたりすることも大切だなって思うんです。
―― お二人のお子さんがいらっしゃって、お忙しい日々を送られていると思うのですが、かなり精力的に活動をされていますよね。
二人とも大きくなって(現在、娘さんが大学一年生で息子さんが小学六年生)、手があまりかからなくなりましたから。でも、彼女たちが幼いころは、ほぼ専業主婦で時間が余っていて、何かつくりたいってウズウズすることもありました。今とは逆の時期がしばらくあったんですよ。そんなときは、学校で必要な巾着袋を手づくりしたり、ランチョンマットに刺しゅうを施したり、手を動かすようにすることで、バランスを保つようにしていました。
―― 刺しゅうはよくやっていたのでしょうか?
本格的にやってはいなかったのですが、オーダーでシンプルなタオルに刺しゅうを入れたりはしていましたね。 刺しゅうってものに特別性がプラスされると思うんです。17、8年前くらい、誕生日に、一緒に旅行に行くくらい親しい友人から、私の名前のイニシャルが入った真っ白のハンカチをプレゼントしてもらったことがあるんです。それがすごく嬉しかったのを覚えていますね。でも、あまりに綺麗だし、特別なものだから、なかなか使えなくて……。時々、眺めては満足して、また棚にしまう、観賞用のハンカチになっています(笑)。
―― 香菜子さんがご友人にプレゼントするとしたら、どんなものをあげたいですか?
日常で使える、飽きがこない日用品に、さりげなくワンポイントで刺しゅうを施したものなどをプレゼントしてみたいですね。昔、アンティークショップで買った、お気に入りのクロス(右写真の十字の刺しゅうが施されているもの)があるのですが、そんな雰囲気のものを。でも、糸の密度が高いので、手刺しゅうだと大変そうなんですよね。でも、刺しゅうミシンがあれば、気軽にできそう。自分が普段使うものにも取り入れてみたいですね。
text:大隈祐輔 photo:山田薫
Kanako
栃木県出身。女子美術大学 工芸家陶芸専攻卒。在学中にモデル業をはじめ、2005年、第二子出産を機に雑貨ブランド「LOTA PRODUCT」を設立。2008年からはイラストレーターとしての活動もスタートさせ、幅広い活躍を見せている。著書にコーディネートブック『東京みちくさ案内』(2017年、主婦と生活社)がある。
Creator’s Motif
Designed by Kanako
アンティークの刺しゅうを、
イメージした印象的なマーク
「さりげなく普通の布を印象づけてくれるもの、自分が素直に色んなところに施してみたいと思うものをつくってみました」
この写真のクロスに施されている香菜子さんがデザインした刺しゅうデータは、刺しゅうダウンロードサービス「ハートステッチズ」からダウンロード可能です。※会員登録後、有料での販売となります。
刺しゅうを知る、楽しむ、新しいきっかけを
刺しゅうはきっと、普段の生活に関わるもののなかにひとつはあって、一度は触れたことがある、とてもありふれたもの。しかし、時に記憶の奥深くに残ったり、ものに対する想い入れを強くしたりもする、ちょっと特別なものでもあります。
どうして刺しゅうに惹かれたの?
SeeSew projectは、刺しゅうの作品をつくったり、ライフスタイルに取り入れたりしているクリエイターの方々にそんなことを聞き、改めて刺しゅうがもつ魅力を探るために立ち上げたプロジェクトです。幼い頃にお母さんからもらったもの、お子さんに施してあげたもの、親しい人からプレゼントされたもの。あなたの身近にありませんか?SeeSew projectで話をうかがった方々は意外と、何気ないことを機に刺しゅうに魅了されているようです。