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製造業は国内回帰の流れも電気料金がネック。
電気料金削減のための方法とは
公開日:2024.02.21
近代の製造業において、製品の製造や材料、パーツの調達が国外で行われるのは当たり前になっています。多くの日本企業が海外にも工場を持ち、海外でも製品を製造しています。しかしその一方で、国内で製品を作ろうとする国内回帰の動きも目立つようになってきました。この記事では製造業の国内回帰と、それに伴うメリットとデメリット、デメリットの対策などについて紹介します。
目次
製造業の国内回帰とは?
まずは製造業における国内回帰について整理します。
国内回帰とは
製造業における国内回帰とは、海外にある工場を国内に戻すことを意味します。「回帰」には元の状態に戻ることや、同じ動作を繰り返すことなどの意味があります。しかし製造業における国内回帰では、元々の生産が日本で行われていたか否かは問いません。日本の企業が海外で行っていた生産を日本に戻すという意味で使用されます。
海外で生産されていた理由
日本企業の海外生産が増え始めたのは1970年代頃だといわれています。貿易摩擦の回避のため海外に工場を作らなければならなくなり、その頃から海外にも生産拠点を持つ企業が増えはじめました。その後1990年代になると、特に中国や東南アジアでの生産を中心に、多くの企業が海外に工場を持つようになりました。
特に1990年代以降、海外での生産が増えた理由には、海外のほうが人件費や電気代が安いことが挙げられました。また国内に比べて海外のほうが土地代安いケースが多く、新しい工場を建てやすかったことも理由です。
海外で生産を行えば、国内での生産に比べて輸送費はかかります。さらに日本国内から人材を派遣する必要もあります。しかし人件費や電気代、工場の建設費などを鑑みると、海外で作るほうがコストが抑えられたのです。そのため、海外での生産が増加していく時代が長く続きました。一方で、海外での生産を行う際には、ストライキや大規模なデモといった現地の情勢に影響を受けたり、国内に比べて品質管理が難しくなるなどのデメリットも存在していました。
国内回帰の背景にあるもの
しかし2010年代に入る頃から国内回帰の流れがはじまり、特に2020年以降になるとその流れが加速する傾向が見られます。
国内回帰が増えている理由はさまざまですが、特に多く挙げられるのは次のような理由です。
・コロナ禍による生産体制の不安定化
・米中貿易摩擦
・円安
・人件費の高騰
特に円安傾向や海外での人件費の高騰は国内回帰の大きな理由といわれています。中国やアジアを中心に、従来は人件費が安かった国でも、近年は賃金の上昇による影響が大きくなっています。さらに為替の市況も円安が続いているるため、余計に日本企業が支払うコストは高くなります。一方で、日本国内での所得が上がっていないこともあり、海外の人件費と日本の人件費に逆転現象が起きつつあるのです。
国内回帰に向けて国の支援も
そのような中、日本政府は製造業の国内回帰に向けた支援も行っています。それが「サプライチェーン対策のための国内投資促進事業費補助金」です。サプライチェーン対策のための国内投資促進事業費補助金とは新型コロナウイルス感染拡大の際に、国内のサプライチェーンの脆弱さが顕在化したことから、国内にも生産拠点を確保するために行われている事業です。2020年の第一次公募の頃の募集対象は、国民が健康な生活を営む上で重要なものを生産している企業など、ごく一部に限られていました。しかし2022年の第3次公募では車載通信機やロボット部品、ディスプレイなどの生産企業も含むなど、対象が大きく広がりました。
さらに「国際情勢の変化を踏まえた原材料安定供給対策事業」などもあり、このような国の政策によっても国内回帰の流れが強まっています。
国内回帰におけるメリットとデメリットについて
製造業の国内回帰には、メリットもデメリットもあります。
まず、生産を国内回帰させるメリットには次のようなものが挙げられます。
生産を国内回帰させるメリット
・国内で作れるので目が行き届き、全体の管理がしやすい
・品質が高いものが作りやすい
・海外情勢の影響を受けにくい
もちろん日本にも災害などの不測の事態が発生することがありますが、ストライキやデモ、テロなどのリスクは比較的低く、国外の影響を受けにくいのがメリットです。一方でデメリットとして代表的な要素には次のようなものがあります。
生産を国内回帰させるデメリット
・少子高齢化により従業員の確保が難しい
・電気代をはじめとした光熱費の高騰
現在日本は、少子高齢化により労働人口が減少する時代に突入しています。そのため製造業に限らず、どの業界でも労働力の確保が難しくなっています。さらに電気代や燃料代などの光熱費も高騰傾向にあるため、工場のランニングコストが増加傾向にあります。
国内回帰のデメリットを解消するために
製造業で国内回帰を行う際には、前述のようなデメリットへの対応が欠かせません。
まず従業員の確保が困難な点については、省人化に努める必要があります。製造業の魅力をアピールして求人を増やすなどの対策も考えられますが、現在は国内全体で労働力が減少しているため、あまり高い効果は見込めないでしょう。つまり自動化できるところは自動化するなど、工場の省人化が必要です。そのためNCなどを活用し、工程ごとの段取りを少なくしたり、より多くの加工ができる機械を導入して工数を減らす工夫を行わなければなりません。
また光熱費への対策としては、省エネ性能の高い機器を使用する方法があります。新しい機器を導入する際には、省エネ性能が高いものを選んだり、既存の機器でも古くてエネルギー効率が低いものがあれば省エネ性能が高い新しい機器に入れ替えるなどの工夫が必要です。
生産性の向上が製造業国内回帰へのカギ
製造業における国内回帰とは、これまで海外で行われていた生産を国内での生産に切り替えることをいいます。2020年頃からその傾向は強まっており、政府からもサプライチェーン対策のための国内投資促進事業費補助金などの形で支援が行われています。生産を国内に回帰させることで、生産が管理しやすくなり品質が向上する他、海外情勢の影響を受けにくくなるなど多くのメリットがあります。一方で国内には人手不足や光熱費の高騰などの課題への対応のため、作業の量が減らせる機器や、省エネ性能の高い機器を選ぶといいでしょう。
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文:石川玲子
工業、製造業の話題を中心に執筆を行うフリーライター。工学部機械工学科を卒業し、独立前は機械系エンジニアとして勤務し、WEBやパンフレット、書籍などの執筆に対応している。
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編集:株式会社イージーゴー
WEBコンテンツ、紙媒体、動画等の企画制作を行う編集制作事務所です。ライターコミュニティ「ライター研究所」も運営しています。
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