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機内計測とは?
その目的や機内計測によって課題を解決した事例を紹介
公開日:2024.10.08
切削加工においては、加工後のワークの計測が欠かせません。一般的に、加工済みワークの計測には、機械からワークを取り外して測定器を用いて計測する「機外計測」が行われます。しかし、機外測定には多くの時間と人手を要します。
工作機械の中でワークを自動で計測する「機内計測」を導入することで、ワークの計測にかかる時間の短縮や省人化を図れます。本記事では、機内計測とは何かをはじめ、機内計測の目的や機内計測で解決した課題の事例をご紹介します。
機内計測とは?
機内計測とは、工作機械の中でワークを計測することを指す言葉です。機内計測では、加工サイクル中にタッチプローブなどのセンサを用いてワークを計測します。
機内計測を行うことで、多くの不良品が出る前に加工不良を察知できるようになります。加工不良の察知により、再発防止策を講じられるほか、不良発見時の検査数を減らせる可能性もあります。
機内計測は全数行う必要はありません。また、自動旋盤を24時間稼働させているケースでは、機内計測により加工不良を未然に防げるようになるだけでなく、検査の手間を大きく軽減できる可能性があります。
機外計測とは
機外計測とは、機械からワークを取り外し、測定器を用いて計測する方法のことです。一般的には、加工後のワークの精度測定にはノギスやマイクロメーター、3次元測定器などを利用して人の手で計測を行います。
機外計測の場合、ワークを加工してからの計測となるため、不良品が出た場合には検査数が膨大になってしまうことがあります。また、検査員によって検査の方法や力加減に差が出てしまったり、ヒューマンエラーが出てしまったりするなどのデメリットがあります。
機内計測は、これら機外計測にある課題の解決に役立ちます。
機内計測の目的
ワークを加工している中で精度が出ない理由の1つに、機械の熱変位があります。熱による温度変化でボールねじの伸縮や鋳物などの形状変化により、NC側で指定した加工の位置からずれてしまうことで、精度が出なくなってしまうのです。
機内測定の導入によって、このような課題を未然に防げる可能性があります。そのほか、加工不良の原因の把握や発見時の検査数の低減、加工不良の原因の特定などにも役立ちます。
加工不良品ができる前に対処できる
連続運転で精度が落ちたり、不具合が起きたりした場合には、大量の加工不良品ができてしまいます。機内測定により、このような事態が発生する前に機械を止めるなどの処置を施せるようになります。
また、機内で加工原点位置をタッチプローブにより計測および補正することで 、ズレなく安定した精度の加工が可能になります。
加工不良の原因を迅速に把握する
定期的な機内測定により、どの時点で加工不良が発生したのかの特定や加工不良の原因を迅速に把握できるようになります。加工不良の原因の迅速な把握は、いち早い再発防止策に役立てられることも利点です。素早い再発防止策の実施により、同様の加工不良の発生を未然に防止できます。
不良発見時の検査数を減らす
加工済みのワークに不良が見つかった場合、連続して加工したワークすべてでの検査が必要になるなど不良検査に多くの時間と手間がとられてしまいます。もし不良が発生した場合でも、機内計測により素早く発見できれば不良検査を必要とするワークの数も少なく抑えられます。
機内計測に用いられる機器
ここからは、工作機械内での計測を実現するためにどのような機器が使用されているのかをご紹介します。
タッチプローブ
接触式センサのタッチプローブは、機械の熱変位やワーク脱着時のズレ、ロボット搬送時の誤差などで加工原点がズレた場合に機内で再測定できる装置です。計測結果から、そのズレ量によりワーク脱着の再トライや加工原点の再設定などをすることで、安定した加工が可能になります。
工具折損検出器
工具折損検出器は、その名の通り工具の折損を検出する機器です。工具折損検出器での測定により、プログラム通りに加工されていないなどの未加工による不良を防止できます。
工具長測定器
工具長測定器は、工作機械内で工具を自動で計測する機器です。工具長測定器での計測により、加工前の段取り時間の短縮や段取り時のミスの防止が図れます。
ATC振れ検出システム
ATC振れ検出システムは、ATC(自動工具交換装置)動作時の締結誤差や、再現性のない切粉の噛みこみなどで発生した工具の振れをセンサで検出できるシステムのことです。ATC振れ検出システムにより、図面と異なる寸法の加工がされてしまうなどの不良を防止できます。
機内計測で課題を解決した事例
これらの機器でさまざまなトラブル防止を図れる機内計測を活用することで、切削加工によくある課題を解決できる可能性があります。ここからは、機内計測の導入が課題解決につながった事例を5つご紹介します。
ロボット搬送の事例
ロボット搬送を活用したケースでは、搬送時のワークの傾きが原因で、穴あけ加工時に刃物が折れてしまうという課題がありました。
タッチプローブによる機内計測でZ方向の高さを計測し、公差以上の傾きが検出された場合にアラーム発出と機械の停止を行うようにした結果、ドリルの折損がなくなるとともに、不良品の流出もなくなりました。TC振れ検出システムは、ATC(自動工具交換装置)動作時の締結誤差や、再現性のない切粉の噛みこみなどで発生した工具の振れをセンサで検出できる システムのことです。ATC振れ検出システムにより、図面と異なる寸法の加工がされてしまうなどの不良を防止できます。
加工前のワークの厚みが異なるために加工原点が変わってしまう例
加工前のワークの寸法のバラつきによって、加工原点が変わってしまうケースです。
加工機は加工原点からプログラム通りに動くものの、素材となる加工前のワークの寸法がばらついているために安定した生産ができないという課題がありました。
このケースでは、タッチプローブで高さを測定して、加工原点を再設定して加工を行うようにすることで課題を解決しました。タッチプローブによる機内計測によって、ワークごとに寸法を合わせて加工原点を変化させることが可能です。
計測したワークの厚みはマクロ変数に保存され、その後の加工にも用いることができます。
プログラムを動かしても加工ができていない例
機械自体 はプログラム通りに動くにもかかわらず、加工ができていないケースです。この場合、加工ができない原因としては工具が折れている可能性が考えられます。
しかし、加工中は機械の扉が閉まっているため、工具が折れているかどうかを確認できません。機内計測により、加工前に測定器に刃物を当て、工具が折れているかを確認できるようになりました。機内計測では、工具オフセットが未入力の場合でも、先端をサーチして計測することも可能です。また、測定器の工具接触面 よりも大きな工具もオフセットして計測できます。
このように、工具長や工具折損を機内計測することで、不良ワークの流出 を未然に防止できます。
工具長計測の段取りに時間がかかってしまう例
ツールプリセッタを使用し機外で工具を手動計測すると、20分程度の時間がかかります。また、手動計測では工具番号の間違いなどのヒューマンエラーが発生することもあります。
機内計測を導入することで、21本の工具をわずか90秒で計測できるようになりました。全工具の自動計測化を実現してことで、作業時間の短縮化や段取り品質の向上を図れます。
加工した穴が寸法より大きいといった突発的なトラブルの例
加工した穴が寸法より大きいといった突発的なトラブルが発生してしまう場合、その原因としては工具の振れが考えられます。
工具が振れる原因には、刃物とホルダーの締結誤差や、主軸テーパー部への切りくずの噛みこみなどがあります。このような工具の振れの解決には、ATC振れ検出システムが役立ちます。渦電流センサをヘッドに取り付けることで、工具が振れた際にはアラームを発出し、異常を知らせます。突発的なトラブルによる不良品の流出を防止できます。
機内計測で手間なく加工不良の
予防とスピーディーな段取りを
実現
生産性の低下を招く加工不良は、経営リスクの1つです。
多くの時間と手間、作業者を必要とする機外計測から、工作機械内でワークや工具長の測定が可能な機内計測に切り替えることで、さまざまな加工不良を未然に防げるだけでなく、加工前の段取りにかかる時間の短縮や質の向上も見込めます。
コスト削減や生産性の向上への取り組みとして、機内計測の導入を検討してみましょう。
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文:髙橋みゆき
1983年生まれ。2016年よりライター・編集者。各種民間保険、介護、医療、ITなど幅広いジャンルの記事を企画・執筆。
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編集:株式会社イージーゴー
WEBコンテンツ、紙媒体、動画等の企画制作を行う編集制作事務所です。ライターコミュニティ「ライター研究所」も運営しています。
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