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工作機械とは?定義や種類、これからの発展
公開日:2024.04.24
各種機械やその部品を作る工作機械は、モノづくりに欠かせない存在です。工作機械にはさまざまな種類があり、使用用途によって使い分けられています。この記事では、「工作機械がどのようなものか知りたい」「これから工作機械を導入したい」方に向け、工作機械とは何かをあらためて説明するとともに、その種類や加工方法、工作機械の歴史や選び方についてもご紹介します。
目次
工作機械とは その定義
工作機械とは、どのような機械を指すのでしょうか。まずは工作機械とは何かをあらためて説明します。
切削、研削などによって所要の形状に作り上げる機械
工作機械とは、さまざまな材料を切削・研削などの加工により、所要の形状に作り上げる機械のことをいいます。ただし、使用中に機械を手で保持する電動工具や、マグネットスタンドなどで固定する機械は工作機械とは呼ばれません。
工作機械では、次の加工が可能です。
・ 切削加工:刃物によって、素材の不要部分を除去する
・ 研削加工:砥石や砥砂で表面の凹凸をなくして精度を上げる
・ 特殊加工:電気やレーザーで加工する
材料から形を作り、各種機械やその部品を作る工作機械は、モノづくりに欠かせない存在です。主に金属を取り扱う工作機械は約300種類あり、「machine tool」「metal cutting machine tool」と表記されます。また、金属だけでなく、セラミックスやガラスなどの非金属の加工も可能で、海外では木工機械も工作機械に含まれます。
マザーマシンともよばれる
各種機械や機械を構成する部品は工作機械で作られることから、「マザーマシン」とも呼ばれます。「マザーマシン」は「母なる機械=機械を作る機械」を意味します。工作機械は、すべてのモノづくりの原点となる機械として世界中で活躍しています。
工作機械と産業機械の違いとは?
産業機械とは、製品や機械全体を加工するための機械のことです。産業機械は、工場などの施設に据え付けられていることが一般的で、製品や機械全体を加工するための、自動化された工程を受け持つ機械といえます。産業機械には、化学機械やボイラ、タンク、業務用洗濯機なども含まれます。
一方、工作機械は、前述したように製品の形や金属部品の加工のためにある機械です。日本産業規格(JIS B 0105)では、「工作機械とは、主として金属の工作物を、切削、研削などによって、または電気、その他のエネルギーを利用して不要部分を取り除き、所要の形状につくり上げる機械。ただし、使用中に機械を手で保持したり、マグネットスタンド等によって固定するものを除く」と定義されています。
主な工作機械の種類と加工例
日本産業標準調査会のJIS規格詳細によれば、工作機械には次項にて説明する旋盤、ボール盤、中ぐり盤などがあります。それぞれについて詳しく見ていきましょう。
旋盤
旋盤は工作機械の代表的な機種で、金属の工作物を回転させて刃物をあて、素材を主に円形や円筒状に削り出します。この特徴から、「丸物」「丸物加工」とも呼ばれます。
旋盤には、次のような種類があります。
・ 汎用旋盤:すべて手動で行われる旋盤
・ NC旋盤:汎用旋盤に数値制御装置(NC)が組み込まれたもの。プログラムによって自動で加工を行うため精度が安定する
・ タレット旋盤:旋回する刃物台(タレット)を汎用旋盤に取り付けたもの。タレットを回転させて複数の切削工具の切り替えができる
・ 立旋盤:主軸が真上向きの垂直方向に取り付けられたもの。製品を水平に回転させ加工する
・ 卓上旋盤:作業台に据え付けて使用するもの。小さな製品の加工などに利用される
・ 正面旋盤:作業者の正面に大型の主軸が向いたもの。面盤と呼ばれる部品を使い、加工する
旋盤で行う加工には、面削り、外丸削り、テーパ削り、中ぐり、穴あけ、突切り、ねじ切りなどがあります。
旋盤による加工では、シャフトやピン、ボルト、ニードルなどが作られています。
ボール盤
ボール盤とは、ドリル工具を回転させることにより素材に穴あけ加工をする機械のことです。ボール盤では、台に工作物を固定して、ドリル工具を回転させて穴あけ加工を行います。
ボール盤には、次のような種類があります。
・ 直立ボール盤:ボール盤の代表的なもので、床に機械を据え付け、垂直に上下する主軸で穴をあけるもの
・ 卓上ボール盤:作業台に設置して使用する小型のもので、構造は直立ボール盤と同様
・ 多軸ボール盤:複数のドリル軸で同時に複数の穴あけを行うもの
・ 多頭ボール盤:複数の主軸頭を持ち、それぞれに異なる工具を装着できる
・ タレットボール盤:回転式のタレットに複数の工具を装着できる。工具の取り替えなく連続加工可能
・ 深穴ボール盤:深い穴をあけることに特化したもの。ガンドリリングマシン、深穴加工機とも呼ばれる
・ ラジアルボール盤:主軸頭を装着したアームが旋回するもの。水平移動も可能で、素材を動かさずに複数の穴あけを行える
ボール盤で行う加工には、穴あけ加工、中ぐり加工、座ぐり加工、ねじ切り加工、リーマ加工などがあります。
ボール盤は、木材や金属の素材に穴をあける、穴を広げる、ネジ用の加工を行うなどの用途で使用されます。
中ぐり盤
中ぐり盤とは、すでに穴あけ加工がされた工作物の穴の内側からさらに穴を広げるための機械のことです。中ぐり盤では、工作物に切削工具を回転させながらあてていき、穴を繰り広げます。
中ぐり盤には、次のような種類があります。
・ 横中ぐり盤:主軸が水平方向に設置されたもので、大きな穴や深い穴の加工に適している
・ 立中ぐり盤:主軸が垂直方向に設置されたもので、安定した精度で加工できる
・ ジグ中ぐり盤:主軸の位置を高精度に調整できるため、精密性が高い
・ NC中ぐり盤:NCを備えたもの。加工作業を自動化できる
中ぐり盤は、自動車のエンジン部品の加工など、精度の高さを求められる穴加工で主に使用されています。
フライス盤
フライス盤とは、フライスと呼ばれる複数の刃が付いた工具を回転させて工作物を切削する機械のことで、ミーリングマシンとも呼ばれています。フライス盤では、上下左右に移動できる台に工作物を固定して、主軸に取り付けた刃物をあてて切削します。
フライス盤には、次のような種類があります。
・ 汎用フライス盤:すべて手動で作動させるフライス盤
・ NCフライス盤:汎用フライス盤にNCを備えたもの。加工作業を自動化できる
フライス盤で行う加工には、平面加工、側面加工、段差加工、溝加工、穴加工、3次元加工などがあり、金型や機械部品など、複雑な形状をした部品の加工に使用されています。
研削盤
研削盤とは、高速回転する砥石をさまざまな素材の工作物に接触させ、表面を削り取る機械のことで、グラインダーともよばれます。研削盤は主に表面仕上げに用いられ、円筒の工作物、平面の工作物、硬度の高い金属も高精度に加工できます。
研削盤には、次のような種類があります。
・ 平面研削盤:工作物の平面を研削するもの。砥石の外周に対して、工作物を平行に往復させて加工するものが多い
・ 円筒研削盤:円筒状の工作物の外側を研削するもの
・ 内面研削盤:円筒状の穴の内側を研削するもの
・ 工具研削盤:特定の工具を研削するためのもの
・ センタレス研削盤:円筒状の工作物をチャッキング不要で研削できるもの
・ ジグ研削盤:抜き型など穴の内側を加工するためのもの
・ 成形研削盤:平面研削盤にワーク形状に合わせた砥石を使い加工するもの
・ NC研削盤:NCを装着した研削盤。自動加工が可能
研削盤は、主に精密部品の仕上げ加工に使用されています。
マシニングセンタ
マシニングセンタとは、回転工具によって中ぐりやフライス削り、穴あけ、ネジ立てなどの複数種類の加工を連続で行えるNC工作機械のことです。マシニングセンタには、「ATC(Automatic Tool Changer:自動工具交換装置)」が備えられており、NC装置にプログラムをセットすることで、加工だけでなく工具の切り替えも自動で行えます。
マシニングセンタには、次のような種類 があります。
・ 門形マシニングセンタ:主軸が天井側に備えられているものでガントリー型ともよばれる
・ 横形マシニングセンタ:工具を地面と水平方向に取り付けたもの
・ 立形マシニングセンタ: 主軸を地面に対して垂直方向に取り付けたもの
・ 5軸制御マシニングセンタ:縦・横・高さの3つの軸に2つの回転軸を持つ、5軸型のもの
マシニングセンタは、金属部品の加工に用いられており、自動車のエンジン部品の切削や穴あけ、ボディ部品の金型製造などに使用されています。
詳しくは、こちらの記事も参照ください。
「マシニングセンタとは?構造・種類・メリットなどの基礎知識」
複合加工機
複合加工機とは、工具の自動交換機能を備えた、複数の加工を行えるNC工作機械のことです。一般的に、1つの部品を素材から仕上げまでには最低でも2つの工作機械が必要です。複合加工機を用いることで、素材から仕上げまでの工程を一台で行えます。
複合加工機では、ドライブシャフトやポンプカバーなどの部品が作られています。
詳しくは、こちらの記事も参照ください。
「複合加工機とは?複合加工機のメリットやマシニングセンタとの違いを解説」
歯切り盤
歯切り盤とは、ホブカッタやピニオンカッタ、ラックカッタなどの工具を用いて歯切り加工を行う機械のことです。歯切り盤では、歯車を成形するよう切削することで、さまざまな形状の歯車を作ります。
歯切り盤には、主に次の5つの種類があります。
・ ホブ盤:ホブと呼ばれる刃物を主軸に取り付け回転させ加工するもの
・ 歯車研削盤:高速回転する砥石を用いて歯車を成形するもの
・ 傘歯車歯切り盤:複数の刃物を取り付けた切削工具で歯切りを行う、傘歯車に特化したもの
・ ギアシェーバ:ピニオンカッタ・ラックカッタを用いて歯切り加工を行うもの
・ 歯車シェービング盤:歯車の仕上げを行うもの
歯車盤は、電気自動車やロボット、産業機械など、高い精度が求められる歯車製造に用いられています。
NC工作機械 各部名称と仕組み
ここからは、数値制御装置を備えたNC工作機械の各部名称とその仕組みについてご紹介します。
モータ
NC装置に組み込まれたプログラムに応じて、加工のために駆動するものです。組み込まれたプログラムによって、モータの動く方向や回転数を決められます。
チャック
加工物を保持するための土台で、爪で保持するスクロールチャック、切込みの入った筒で保持するコレットチャック、機械の油圧で締め付け保持するパワーチャックなどの種類があります。
タレット
刃物台とも呼ばれるもので、多角形のそれぞれの面にホルダーと刃物(ツール)を取り付けられます。ホルダーとツールは用途によって使い分けられるよう、さまざまな形状と取り付けの向きがあります。
油圧ユニット
油圧ユニットは、チャックの圧力調整やタレットの旋回、芯押台の前進・後退など、各部位の動作に関わる部分です。
ワーク
ワークとは、材料に加工を施した工作物や加工前の仕掛品のことで、ピースと呼ばれることもあります。
NC操作盤
マシニングセンタの動きを操作するためのもので、使用する工具や主軸の回転数、テーブルの位置、移動距離などを調整できます。
工作機械の歴史と未来
人類のモノづくりの進化とともに、工作機械も進化を遂げています。今も昔も生活の利便性向上に役立っている工作機械には、どのような歴史があるのか、詳しく見ていきましょう。
起源は古代エジプトまでさかのぼる
工作機械の起源をさかのぼると、古代エジプトに描かれた壁画にたどりつきます。この壁画には、弓を前後に動かしドリルを回転させる、「弓錐(ゆみぎり)」が描かれています。弓錐は工作機械の一種で、ボール盤の最古の例とされ、同様の方式は旋盤にも応用されるようになりました。
16世紀以降に入ると金属加工がはじまり、構造に金属の材料が用いられるようになり、水車や蒸気を用いた大型の工作機械も登場しています。19世紀の末ごろにはモータが開発され、20世紀以降の工作機械にはモータが使用されるようになりました。
日本メーカーの工作機械は、1980年以降常に世界トップ3
1950年代にアメリカで開発されたNC技術は、日本の工作機械メーカーの努力により開発・普及が進み、1970年代後半からは日本の工作機械の評価が世界的に高まりました。
工作機械の国・地域別生産額で1982年にアメリカを抜いて世界1位に躍り出ると、以降常に世界トップ3を維持しています。日本製の工作機械は、世界的に高い信頼を得ており、工作機械の製造大国として認識されています。
工作機械のレベルは、国の技術力を示すものといっても過言ではありません。日本の製造業は、工作機械の高度化もあり、世界トップレベルを維持しています。
工作機械が目指すもの
AIやロボットなど、近年のIT技術の進化はめざましいものがあります。これらの技術はすでに生活に浸透しており、さまざまな製品に利用されていることから、工作機械にも高精度化が求められています。
また、少子高齢化を背景とした人手不足が深刻化する中、工作機械にはモノづくりにおける作業の自動化・省力化の面でも大きな期待が寄せられています。常に一定の品質を保ちながら省人化を実現するために、今後は完全自動化を目指し開発が進められていくと考えられます。
これからの工作機械に求められるものは?選び方は?
これから工作機械を導入する場合、どのようなものを選択すればよいのでしょうか。まずは現在の課題と未来に考えられる課題を洗い出し、課題の解消と自社の発展に寄与するものを選択する必要があります。製造業が抱える課題の解決をサポートする工作機械の特徴と、その選び方について紹介します。
高精度であること
電気自動車へのシフト、自動運転技術の開発など、進化する技術に対応するため、製造の現場ではより精度の高い部品や製品を作ることが求められています。今後もさまざまな製品で、高精度化を求められていくことでしょう。工作機械を選ぶ際には、精密作業を自動で行える、精度の高いモノを作れる機械を選ぶ必要があります。
剛性のあること
工作機械における剛性とは、機械が頑丈で、かつ加工精度が安定していることを指します。工作機械を選ぶ際には、剛性の高さを確認することが重要です。剛性が不十分な工作機械は、機械自体ゆがみの発生と、それによる加工精度の低下を引き起こしかねません。
効率性
より効率性が高い工作機械を検討することで、省人化と利益向上を図れます。作業を自動化できるNC工作機械や、素材の加工から仕上げまで行える複合加工機の導入により、作業者の数を減らしながら高精度かつ安定した品質の製品を迅速に量産できます。また、機械による作業は人力とは異なり、作業者の違いによる品質のムラや疲労による能率の低下なども発生しません。
工作機械の導入時には、高精度かつ安定性が高く、加工スピードが速い、高効率のものを選択するとよいでしょう。
値段
工作機械は高額であることから、できる限り導入コストを抑えられるものを選択しがちです。しかし、メンテナンスや修理など、保守運用にかかるコストも視野に入れたうえで価格を比較し、検討することをおすすめします。
また、耐用年数の確認も大切です。導入コストを抑えても、耐用年数が短い機械は更新までの間隔も短くなり、かえって高上りになってしまうことがあります。
自社の取り扱い製品にマッチする機能、大きさの工作機械を選ぶには
工作機械にはさまざまな種類があります。人々の生活に欠かせないさまざまな製品の製造現場で活躍する工作機械は、今後も進化を続け、より豊かな生活に寄与していくことでしょう。
機械の更新や省人化のために工作機械の導入を検討している企業さまは、前述した選び方に加え、実際に現物を見て大きさを確認し、メーカーに相談したうえで選択することをおすすめします。
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文:髙橋みゆき
1983年生まれ。2016年よりライター・編集者。各種民間保険、介護、医療、ITなど幅広いジャンルの記事を企画・執筆。
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編集:株式会社イージーゴー
WEBコンテンツ、紙媒体、動画等の企画制作を行う編集制作事務所です。ライターコミュニティ「ライター研究所」も運営しています。
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