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自動車業界のEVシフトに伴う金属加工業界の変化
公開日:2024.02.21
脱炭素社会の実現に向けて、世界的にEV(電気自動車)へのシフトが進んでいます。工作機械市場において大きなシェアを占める自動車のニーズの変化は、金属加工業界にどのような影響をもたらすのでしょうか。
本記事では、自動車業界のEVシフト動向とともに、金属加工業界が受ける影響について詳しく解説します。
自動車業界のEVシフトの動向
アメリカのテスラ社や中国のBYDなどが市場を先行する形で、EVの売れ行きは世界的に加速しています。ガソリン車やディーゼル車など、化石燃料を使用する自動車から電気自動車に乗り換える動きは、日本でも今後加速することが見込まれます。
国内の自動車メーカーの研究開発や設備投資状況、インフラの整備動向からも、各メーカーがEVに力を注ぐ可能性が高いでしょう。
工作機械市場において、自動車は大きなシェアを占めています。EVの普及に伴い、エンジン、エンジン部品、電装品・電子部品、操縦装置などの自動車部品の製造は大きな影響を受けると考えられます。工作機械市場の大きなシェアを占める自動車に使われる部品が変われば、関連企業はそれに対応せざるを得ません。
とくにエンジンやエンジン部品は完全なEVでほとんど不要なことから、ガソリン・ディーゼル車のエンジン製造に携わる企業は事業転換を強いられることになるでしょう。
日本のEVに対する方針は
EV化に対する方針は各国が打ち出しています。日本では、「2050年カーボンニュートラル」の実現に向け、各メーカーがEVに関する方針を定めているほか、2021年の菅総理の施政方針演説において「2035年までに乗用車の新車販売で電気自動車100%を実現する」と表明しています。
これらのことから、EVシフトは着実に進むと予想されます。2017年時点で1%に満たなかった世界のEVシェアは、販売台数の伸長とともに急速に伸びていくことでしょう。
EVシフトに受ける影響
では、EVシフトによって金属加工業界にはどのような影響が現れるのでしょうか。
EVはエンジンの代わりに電池やモーターを搭載しています。ガソリン車のエンジン部品の製造過程では切削加工が行われますが、電池やモーターでは機械加工の要素が少ないことから、部品製造における設備投資の内容が変化する可能性が高いです。
たとえば、産業用電気機械やその他の電気機械と、自動車・自動車部品の設備投資構成を比較すると、金属加工機械の割合が低くなっています。また、自動車一台あたりの工作機械使用額試算は、ガソリン車が約15,000円であるのに対し、EVは約8,000円と半分程度に減少すると予測されています。
自動車製造における主要部品は、エンジンに代わりバッテリーやモーター、インバーターなどへと変化していくでしょう。加えて、EVの課題である航続距離の延長や、静粛性向上のニーズに対応するため、工作機械業界は車両の軽量化に寄与する方向に転換するなど、EV化にあわせ対策を講じる必要があります。
EVシフトにより減少が想定される切削加工部品
ガソリン車とは異なり、エンジンや内燃機関を持たないEVの普及拡大によって、エンジンの基幹部品の需要が大幅に減少することが見込まれます。
切削加工部品は、ギガキャスト(一体成形)の影響を大きく受けるでしょう。ギガキャストとは、多くの部品と工程でつなぎ合わせていた車体パーツを、一度の鋳造で一つの部品として製造する新しい技法のことです。数十の部品を統合できることから、コスト削減を図れるとしてすでに導入しているメーカーもあります。
ギガキャストによって、プレスメーカーや金型メーカーの仕事量、鉄の使用量とともに、内製しているプレス、溶接、組付工程が激減すると予想されます。ギガキャストは、自動車メーカーの収益化向上に寄与する技術である一方で、生産工程やサプライチェーンに大きな変化をもたらすものです。
EVシフトにより増加が想定される切削加工部品
EVシフトによって、増加が予想されている切削加工部品もあります。
自動運転で使われる半導体や電子部品の搭載が増加
近年では、IT技術の進展によって、EV化とあわせて車のスマート化も進んでいます。カメラやセンサを用いて運転をサポートするADAS(先進運転支援システム)や自動運転、インフォテイメント機能、テレマティクス技術などを搭載した自動車の開発によって、自動車に搭載される電子機器の数は今後ますます増加するでしょう。実際に、最新の自動車では100超の電子制御ユニットを搭載しているといいます。
これら電子機器の不具合が自動車の安全性を揺るがす可能性があることから、部品製造においてはゼロディフェクト(不良ゼロ)への要求が強まっています。これから自動車に搭載する電子機器に携わる企業は、不良を出さない仕組みづくりも考えなければなりません。
モーターやバッテリー
エンジン部品の需要が低下する一方で、モーター製造のための金型加工用工作機械の需要が高まると予想されます。モーターのコア材の製造には、高精度な打ち抜き用の金型を製作する必要があるためです。モーターの製造においては、塑性(そせい)加工機械の需要が増す可能性があります。
EVに使用されるリチウムイオン電池などのバッテリー製造では、プレス機械による金属ケースの加工や、工作機械による金型加工においてより精度の高い微細加工が求められる点も把握しておきましょう。マシニングセンタや研削盤、放電加工機、微細加工機のニーズが高まると考えられます。
減速機が主流に
EVシフトにより、従来のトランスミッション(変速機)ではなく減速機が主流になるとされています。減速機には複雑なギアや歯車が使用されていること、また騒音や振動の減少を図るために、減速機の製造においては精度の高い歯車加工が求められます。
軽金属部品が増える
EVの普及が進まない理由の一つに、ガソリン車と比較した場合の航続距離の短さがあります。EVの航続距離の延長には、軽さと強さを兼ね備えた新素材「CFRP(炭素繊維強化プラスチック)」やアルミを使用するなど車の軽量化が重要です。
とくに、軽量かつ加工性のよいアルミは、すでに自動車部品に多く使用されています。前述した通り、車両の軽量化が求められていることから、今後さらに活用されるようになるでしょう。アルミ加工法も見直されており、より生産性の高い工作機械の開発が期待されています。
切削加工業なら軽金属部品で勝負
世界的なEVシフトによって、エンジンを中心に今後不要になる部品が出てくることは確かです。その一方で、モーターやバッテリー、減速機などの新しい需要が生まれます。電気・電子部品においては、部品点数が増加するケースもあるほどです。
また、航続距離を伸ばすためには軽量化が必要なことから、アルミ合金の切削加工の需要は伸びることが予想されます。
自動車部品の製造に携わる企業は、自動車技術の進展とあわせ、新たなニーズに対応できる体制の構築を図る必要があるといえるでしょう。
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文:髙橋みゆき
1983年生まれ。2016年よりライター・編集者。各種民間保険、介護、医療、ITなど幅広いジャンルの記事を企画・執筆。
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編集:株式会社イージーゴー
WEBコンテンツ、紙媒体、動画等の企画制作を行う編集制作事務所です。ライターコミュニティ「ライター研究所」も運営しています。
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