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もの補助だけじゃない。工作機械に使える補助金
公開日:2024.02.21
国による補助金にはさまざまなものがあります。工作機械の導入に補助金を活用したい場合には、どのような補助金の申請を検討すればよいのでしょうか。本記事では、ものづくり補助金をはじめとする「工作機械の導入に活用できる補助金」とあわせ、補助金活用のメリットとデメリットについて解説します。
補助金とは?助成金との違い
はじめに、補助金と助成金の違いについてあらためて確認していきましょう。
補助金とは、国や自治体が実施する「企業が取り組む事業に対する資金的支援」のことです。補助金では、支給する総額の予算が定められており、さらには審査があるため、補助金受給の要件を満たしていても採択されない可能性があります。一般的には募集期間が定められていることから、申請を募集期間内に行うことも重要です。
助成金も補助金と同様に、国や自治体が企業などに資金的支援を行うために設立されます。補助金とは異なり要件を満たしているものは受給できる可能性が高いです。
ただし、助成金の中でも補助金に近い性質を持つものがあります。補助金、助成金という名称だけで支給ハードルの高低を見定めないよう、活用したい補助金・助成金がある場合には内容や申請要件を確認しましょう。
工作機械の購入に使える4つの補助金
ここからは、工作機械の購入に使える補助金として、ものづくり補助金、先進的省エネルギー投資促進支援事業、事業承継・引き継ぎ補助金、事業再構築補助金の4つをご紹介します。
どのような補助金なのか、それぞれについて見ていきましょう。
ものづくり補助金
ものづくり補助金は、主に中小企業が行う生産性向上につながる革新的なサービスの開発や試作品開発、生産プロセスの改善などに必要な経費を補助する制度です。
ものづくり補助金には「通常枠」「回復型賃上げ・雇用拡大枠」「デジタル枠」「グリーン枠」「グローバル市場開拓枠」の5つの枠があります。各申請枠の概要は次の通りです。
申請枠 | 概要 |
---|---|
通常枠 |
革新的な製品・サービス開発または生産プロセス・サービス提供方法の改善に必要な設備・システム投資等を支援 補助上限額:750万円~1,250万円 補助率:2分の1 3分の2(小規模・再生事業者) |
回復型賃上げ・ 雇用拡大枠 |
業況が厳しい事業者が賃上げ・雇用拡大に取り組むための革新的な製品・サービス開発または生産プロセス・サービス提供方法の改善に必要な設備・システム投資等を支援 補助上限額:750万円~1,250万円 補助率:3分の2 |
デジタル枠 |
DXに資する革新的な製品・サービス開発または生産プロセス・サービス提供方法の改善による生産性向上に必要な設備・システム投資等を支援 補助上限額:750万円~1,250万円 補助率:3分の2 |
グリーン枠 |
温室効果ガスの排出削減に資する取組に応じ、革新的な製品・サービス開発または炭素生産性向上をともなう生産プロセス・サービス提供方法の改善による生産性向上に必要な設備・システム投資等を支援 補助上限額:エントリー 750万円~1,250万円 スタンダード 1,000万円~2,000万円 アドバンス 2,000万円~4,000万円 |
グローバル市場 開拓枠 |
海外事業の拡大等を目的とした設備投資等を支援。海外市場開拓(JAPANブランド)類型では、海外展開に係るブランディング・プロモーション等に係る経費も支援 補助上限額:3,000万円 補助率:2分の1 3分の2(小規模・再生事業者) |
出典:ものづくり・商業・サービス補助金事務局「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金公募要領(16次締切分)」
ものづくり補助金では、機械装置のほかシステム構築費、技術導入費、専門家経費をはじめさまざまな経費を補助の対象としています。
省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業
省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業は、工場や事業場において省エネルギー性能の高い設備や機器の導入などを支援する補助金です。この補助金には、「先進事業」「オーダーメイド型事業」「エネルギー需要最適化対策事業」の3つの区分が設けられています。
事業区分 | 概要 |
---|---|
先進事業 |
資源エネルギー庁に設置された「先進的な省エネ技術等に係る技術評価委員会」において決定した審査項目に則り、SIIが設置した外部審査委員会で審査・採択した先進設備・システムへの更新などを支援 補助上限額:15億円/年度 補助率:2分の1以内(大企業・その他) 3分の2以内(中小企業等) |
オーダーメイド型事業 |
機械設計をともなう設備または事業者の使用目的や用途に合わせて設計・製造する設備への更新などを支援 補助上限額:15億円/年度 補助率:3分の1以内(大企業・その他) 2分の1以内(中小企業等) |
エネルギー需要 最適化対策事業 |
SIIに登録されたエネマネ事業者と「エネルギ支援サービス契約」し、SIIに登録されたEMS(エネルギーマネジメントシステム)を用いて、より効率的に省エネルギー化を図る事業を支援 補助上限額:1億円/年度 補助率:2分の1以内(中小企業等) 3分の1以内(大企業・その他) |
出典:一般社団法人 環境共創イニシアチブ「令和4年度補正予算 省エネルギー投資促進・宇用構造転換支援事業費補助金(四次公募)」
省エネルギー投資促進支援事業費補助金
省エネルギー投資促進支援事業費補助金は、省エネルギー性能の高いユーティリティ設備・生産設備などへの更新や、EMS(エネルギーマネジメントシステム)の導入を支援する補助金です。
この補助金には、「指定設備導入事業」と、指定設備導入事業とあわせてEMSを導入する企業を支援する「エネルギー需要最適化対策事業」の2つの区分が設けられています。
事業区分 | 概要 |
---|---|
指定設備 導入事業 |
SIIがあらかじめ定めたエネルギー効率等の基準を満たし、補助対象設備として登録・公表している指定設備に更新する事業を支援 補助上限額:1億円/事業全体 補助率:3分の1以内(中小企業等/大企業・その他) |
エネルギー需要 最適化対策事業 |
指定設備導入事業に加えて、SIIに登録されたエネマネ事業者と「エネルギー管理支援サービス」を契約し、SIIに登録されたEMS(エネルギーマネジメントシステム)を用いて、より効果的に省エネルギー化を図る事業を支援 補助上限額:1億円/事業全体 補助率:2分の1以内(中小企業等) 3分の1以内(大企業・その他) |
出典:一般社団法人 環境共創イニシアチブ「令和4年度補正予算 省エネルギー投資促進支援事業費補助金(二次公募)」
本補助金におけるエネルギー需要最適化対策事業は、導入予定の設備が「指定設備導入事業」に該当し、かつEMS機器の導入を組み合わせる場合のみが補助金の対象です。
EMS機器の導入を単独で行う場合は、「省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業」の対象となる点に注意が必要です。
事業承継・引継ぎ補助金
事業承継・引継ぎ補助金は、事業承継を機に行う新しい取組や事業再編などを支援する補助金です。
事業承継・引継ぎ補助金には「経営革新」「専門家活用」「廃業・再チャレンジ」の3つの事業区分があります。それぞれの概要は次の通りです。
事業区分 | 概要 |
---|---|
経営革新事業 |
引き継いだ経営資源を活用して経営革新等に取り組む者を支援。創業支援型、経営者交代型、M&A型の3つの類型がある 補助上限額:600万円~800万円 補助率:2分の1以内~3分の2以内 |
専門家活用事業 |
事業再編・事業統合にともない株式・経営資源を譲り受ける、あるいは譲り渡す予定の中小企業等を支援 補助上限額:600万円以内(最大150万円上乗せ) 補助率:2分の1以内~3分の2以内 |
廃業・再チャレンジ事業 |
経営革新、専門家活用それぞれと併用可能。M&Aで事業を譲り渡せなかった中小企業などが、地域の新たな需要の創造や雇用の創出にも資する新たなチャレンジをするために、既存事業を廃業する場合を支援 補助上限額:150万円以内 補助率:3分の2以内 |
出典:事業承継・引継ぎ補助金事務局「令和4年度 補正予算 事業承継・引継ぎ補助⾦(6次公募)」
事業承継・引継ぎ補助金では、店舗等借入費用のほか、設備費、原材料費、謝金などさまざまな経費を補助の対象としています。
事業再構築補助金
事業再構築補助金とは、新型コロナウイルス感染症によって打撃を受けた経済の活性化を目指して、新分野展開や業種転換、業態転換、事業再建など、事業再構築に意欲的な企業を支援する補助金です。
2023年9月7日時点で事業再構築補助金には「成長枠」「グリーン成長枠」「卒業促進枠」「大規模賃金引上促進枠」「産業構造転換枠」「物価高騰対策・回復再生応援枠」「最低賃金枠」8つの申請枠が設けられており、建物費やシステム構築費などのほか、機械装置の購入やリースも補助対象経費とされています。
事業区分 | 概要 |
---|---|
成長枠 |
成長分野への大胆な事業再構築に取り組む事業者が対象 補助上限額:7,000万円 補助率:中小企業等 2分の1(大規模な賃上げ達成で3分の2に引き上げ) 中堅企業等 3分の1(大規模な賃上げ達成で2分の1に引き上げ) |
グリーン成長枠 |
研究開発・技術開発または人材育成を行いながらグリーン成長戦略「実行計画」14分野の課題解決に取り組む事業者が対象 補助上限額:エントリー 8,000万円(中堅企業1億円) スタンダート 1億円(中堅企業1.5億円) 補助率:中小企業等 2分の1(大規模な賃上げ達成で3分の2に引き上げ) 中堅企業等 3分の1(大規模な賃上げ達成で2分の1に引き上げ) |
卒業促進枠 |
成長枠またはグリーン成長枠に同一の公募回で申請する、中小企業等からの卒業を図る事業者が対象 補助上限額:成長枠・グリーン成長枠の補助金額上限に準じる 補助率:中小企業等 2分の1 中堅企業等 3分の1 |
大規模賃金引上促進枠 |
成長枠またはグリーン成長枠に同一の公募回で申請する、大規模な賃上げに取り組む事業者が対象 補助上限額:3,000万円 補助率:中小企業等 2分の1 中堅企業等 3分の1 |
産業構造転換枠 |
国内市場の縮小等、構造的な課題に直面している業種・業態の事業者が対象 補助上限額:7,000万円 補助率:中小企業等 3分の2 中堅企業等 2分の1 |
最低賃金枠 |
最低賃金引き上げの影響を受けている、かつ原資の確保が困難な事業者が対象 補助上限額:1,500万円 補助率:中小企業等 4分の3 中堅企業等 3分の2 |
物価高騰対策・回復再生応援枠 |
業況が厳しい事業者、事業再生に取り組む事業者、原油価格・物価高騰などによる影響を受けている事業者が対象 補助上限額:3,000万円 補助率:中小企業等 3分の2(一部4分の3) 中堅企業等 2分の1(一部3分の2) |
出典:事業再構築補助金事務局「事業再構築補助金公募要領(第11回)」
事業再構築補助金では、企業規模によって補助金額や補助率が異なります。申請する前に、申請回の事業再構築補助金の公募要領で確認しましょう。
補助金を利用するメリット
企業が補助金を利用するメリットには主に次の3つがあります。
返済不要な資金を調達できる
補助金は融資とは異なり、受給した補助金を将来的に返済・返還する必要がありません。ただし、申請要件となる目標値を達成できない場合には、返還を求められることがあります。
新規事業創出や既存事業の拡大を考えている企業は、返済の必要がない資金調達の手段として、補助金の活用を検討してみましょう。
コストを抑えながら経営改善に取り組める
補助金を活用することで、経営への負担を抑えながら先進的な機器を導入できます。それにより、業務環境の改善や光熱費をはじめとする各種コストの低減など、さまざまな効果が期待できます。
また、補助金申請にあたり事業計画を見直すことで、中長期的な経営改善に着手できるのも利点です。
助成金と比較して適用範囲が広い傾向にある
補助金は対象経費として認められる範囲が助成金よりも広い傾向にあります。事業にかかるさまざまな経費を洗い出し、利用可能な補助金を探してみるとよいでしょう。
補助金を活用する際の注意点
これらのメリットがある一方で、補助金を活用する際にはいくつか気をつけたいことがあります。補助金申請の前に、活用時の注意点をチェックしておきましょう。
申請・報告に手間がかかる
補助金を申請するための準備や受給までの手続きには大きな手間がかかります。採択されやすいよう、内容をよく練り伝わりやすく事業計画書を作成する必要があるだけでなく、採択後には詳細な報告書を作成し提出しなければ補助金を受け取れません。
たとえばものづくり補助金の場合、事業の企画に加え、付加価値額や給与支給総額の算出とその根拠、将来の展望などについて記した事業計画書を作成する必要があります。申請する枠によっては、決算書や従業員に関する資料などの追加資料も必要です。
また、事業終了後には、5年間の経過報告を提出するよう定められています。各種資料を用意し、報告書を作成する手間も含めると、これらが大きな負担となる企業もあるでしょう。
補助金は後払い
補助金の支給は、原則として事業の終了後になる点にも注意が必要です。補助金を受け取るためには、先に補助金を利用する事業にかかる資金を自社で用意しなければなりません。
支給が申請の1年後になることも多々あります。資金を内部留保でまかなえない場合には、補助金を受給するまでどのようにして経営を維持していくのか、どのような方法で資金を調達するのかを考え計画する必要があるでしょう。
不採択の可能性もある
補助金には審査があるため、申請後に不採択になる可能性も大いにあります。時間と手間をかけて事業計画書を作成したにもかかわらず不採択になれば、事業へのモチベーションにも影響が出てしまうかもしれません。
不採択になったあとには事業計画書をブラッシュアップして再度申請する、異なる補助金に申請するなどして何度もチャレンジすることも大切です。
補助金なら経営に負担をかけずに生産性向上を目指せる!
事業拡大や新規事業創出だけでなく、工作機械の導入・更新の際にも活用できる補助金はないかを調査し、活用を検討してみましょう。
補助金を利用することで、経営を圧迫することなく新たな工作機械を導入できる可能性があります。ただし、補助金の申請から受給までには時間と手間がかかる点に注意が必要です。より円滑な補助金活用を望む場合は、全国商工会連合会や商工会議所、あるいは補助金申請支援を行う工作機械の販売メーカーなどに相談してみましょう。
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文:髙橋みゆき
1983年生まれ。2016年よりライター・編集者。各種民間保険、介護、医療、ITなど幅広いジャンルの記事を企画・執筆。
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編集:株式会社イージーゴー
WEBコンテンツ、紙媒体、動画等の企画制作を行う編集制作事務所です。ライターコミュニティ「ライター研究所」も運営しています。
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