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省エネ補助金とは?基本的な仕組みとメリット
公開日:2024.02.21
エネルギー価格の高騰が続くなか、企業にとって省エネは重要な課題の一つです。省エネ補助金とは、事業所や設備に省エネ対策を行うために使える補助金です。この記事では省エネ補助金の概要や中小企業が使える補助金、補助金を利用するメリットなどについて紹介します。
省エネ補助金とは?
省エネ補助金とは、経済産業省の環境エネルギー庁が行っている、省エネルギー政策の一つです。
世界的に省エネに向けての意識が高まるなか、日本政府も省エネに向けたさまざまな政策を行っています。そのうちの一つが、企業や団体などが、より省エネ性能の高い設備や建物を使えるように支援する施策です。たとえば企業が省エネのために投資を行った場合には、特別な税制を適用できるような制度もあります。また、もう少し分かりやすい仕組みとして、省エネのために設備を新しくしたり建物を新築する際に、それにかかる費用を補助する、補助金制度があります。
補助金には「省エネルギー投資促進に向けた支援補助金」や「AI・IoT等を活用したさらなる輸送効率化推進事業費補助金」など、いくつかの種類があります。これらをまとめて総称したものが「省エネ補助金」です。省エネ補助金以外にも地方自治体が交付している補助金もあります。
省エネ補助金で調べると「中小企業等の省エネ・生産性革命投資促進事業費補助金」が出てくる場合もあります。しかし2023年現在は「中小企業等の省エネ・生産性革命投資促進事業費補助金」は存在していません。省エネに対する施策は変化が多いため、省エネ補助金について調べる際には、最新の情報を確認するようにしましょう。
● 省エネ補助金と現在の施行状況一覧
補助金名称 | 公募状況 | 参考サイト | |
---|---|---|---|
省エネルギー投資促進 に向けた支援補助金 |
省エネルギー投資促進・ 需要構造転換支援事業費補助金 |
4次公募 2023年9月8日~11月2日 |
https://sii.or.jp/senshin04r/ |
省エネルギー投資促進 支援事業費補助金 |
2次公募終了 3次公募予定なし |
https://sii.or.jp/shitei04r/ | |
省エネルギー投資促進に向けた支援補助金 | 第4回 2023年10月6日~11月10日 |
https://sii.or.jp/rishihokyu05/ | |
中⼩企業等に向けた省エネルギー診断拡充事業 | 申込期限 2024年1月上旬 |
https://shoeneshindan.jp/ |
中小製造業で使える
省エネ補助金について
2023年の時点で、中小製造業で使える省エネ補助金には次のようなものがあります。
中小企業等エネルギー利用
最適化推進事業費補助金
まずは中小企業等エネルギー利用最適化推進事業費補助金についてです。こちらは省エネ診断や省エネ提案を受けるための補助金です。中小企業の事業所で、どのような省エネ技術が導入できそうか、どこをどのように改善すれば省エネになるのかなどを知るために使えます。省エネのための計画づくりや省エネに向けた設備の更新、現在のエネルギーの使用状況のチェックなどが行えます。
省エネルギー技術等の導入可能性の検討を含めた指導等の事業にかかった費用について、約4億円を上限に定額が支払われます。
また、その結果をもとに設備更新にはどのような補助金が使えるかも相談できます。
中⼩企業等に向けた省エネルギー診断拡充事業費補助金
こちらも、省エネに向けて専門家からアドバイスを受けるための費用を補助するものです。前述の「中小企業等エネルギー利用最適化推進事業費補助金」は、事業所全体の省エネ診断を対象としていたのに対し、こちらは設備単位での省エネ診断が受けられます。たとえばボイラーや空調設備の他、工作機械や加工機械などの生産設備単体にも適用できます。
工場やビルなどのエネルギー管理状況の診断、運用改善や設備投資の提案を受けるのにかかる経費のうち定額が17億円を上限に支払われます。
中⼩企業等に向けた省エネルギー診断拡充事業費補助金でも、診断後に、設備更新に向けて活用できる補助⾦についても相談できます。
省エネルギー投資促進に向けた
支援補助金
省エネルギー投資促進に向けた支援補助金とは、省エネに対し、先進性が認められた設備や施設を導入する際に使える補助金です。省エネに対して、他の見本となるような優れた技術が組み込まれた設備や施設があらかじめ認定されており、それらを導入する際に補助金が使える仕組みになっています。認定されている設備には、たとえばブラザー工業株式会社のコンパクトなマシニングセンタ「SPEEDIO」のような工作機械や、株式会社IHIの水潤滑式オイルフリースクリューコンプレッサーなどが含まれています。
こちらの補助金は2023年6月までは令和4年度の補正予算で公募していましたが、9月現在、公募は終了しています。今後も同じような補助金の公募が始まる可能性もあります。
● 省エネルギー投資促進に向けた
支援補助金の一覧(令和4年度版)
事業区分 | Ⓐ先進事業 | Ⓑオーダーメイド型事業 | Ⓒ指定設備導入事業 | Ⓓエネルギー需要 最適化対策事業 |
|
---|---|---|---|---|---|
事業要件 |
外部審査委員会において、以下の先進性が認められた設備・システムを支援。 |
機械設計が伴う設備又は事業者の使用目的や用途に合わせて設計・製造する設備等 |
予め定めたエネルギー消費効率等の基準を満たし、 補助対象設備として登録及び公表した指定設備を導入する事業。 |
事前登録されたエネマネ事業者と「エネルギー管理支援サービス」を契約し、 EMSを用いてエネルギー使用量を計測することで、より効果的に省エネルギー化及びエネルギー需要最適化を図る事業。 |
|
省エネルギー 効果の要件※1 |
申請単位において、原油換算量ベースで以下いずれかの要件を満たす事業
※複数の対象設備(ⓐⓑⓒ)を組み合わせて申請する場合、各設備の省エネ効果の合算値で上記要件を満たすこと ※非化石 転換の場合も増エネ設備は認めないこととする。 |
申請単位において、原油換算量ベースで以下いずれかの要件を満たす事業
※複数の対象設備(ⓐⓑⓒ)を組み合わせて申請する場合、各設備の省エネ効果の合算値で上記要件を満たすこと ※非化石 転換の場合も増エネ設備は認めないこととする。 |
予め定めたエネルギー消費効率等の基準を満たす設備を導入すること <ユーティリティ設備>
<生産設備>
|
申請単位で、「EMSの制御効果と省エネ診断等による運用改善効果」により、原油換算量ベースで省エネルギー率2%以上を満たす事業 |
|
補助対象経費 | 設備費、設計費、工事費 |
設備費、設計費、工事費 |
設備費 |
設備費、設計費、工事費 |
|
補 助 率 |
中小 企業者等※2 |
2/3以内 |
1/2以内 ※投資回収年数7年未満の事業は1/3以内 |
1/3以内 |
1/2以内 |
大企業※3 その他※4 |
1/2以内 |
1/3以内 ※投資回収年数7年未満の事業は1/4以内 |
1/3以内 |
||
補助金限度額 (非化石) |
【上限額 】 15億円/年度 (20億円/年度) ※複数年度事業の1事業当たりの上限額は30億円 (40億円) |
【上限額 】 15億円/年度 (20億円/年度)
※複数年度事業の1事業当たりの上限額は20億円 (30億円) |
【上限額 】 1億円/年度 ※複数年度事業は認められない |
【上限額 】 1億円/年度 ※複数年度事業の1事業当たりの上限額は、1億円) |
※補助金限度額等については執行団体と協議の上決定するものとする。
(注)エネルギー消費原単位改善率での申請は、設備更新後において、生産量が増加し、かつ、エネルギー消費量が増加する事業に限る。
※1 Ⓐ、Ⓑ、Ⓓ事業共通で投資回収年数が5年以上、経費当たり計画省エネルギー量が補助対象経費1千万円当たり1kl以上の事業であること、トップランナー制度対象機器を導入する場合はトップランナー基準を満たす機器であること。「エネルギー使用量が1,500kl以上の工場・事業場」と「中小企業者に該当しない会社法上の会社(株式会社、合名会社、合資会社、合同会社、有限会社)※みなし大企業を含む」は、省エネ法に基づき作成した中長期計画等に記載されている事業であること。導入した補助対象設備の1年間のエネルギー使用量と省エネルギー効果を報告できること。
※2 中小企業者等とは、中小企業者(中小企業基本法第2条に規定する中小企業者であって、みなし大企業を除く)、個人事業主、中小企業団体等及び会社法(平成17年法律第86号)上の会社(株式会社・合名会社・合資会社・合同会社・有限会社)以外の法人(医療法人、社会福祉法人、NPO法人等)であり、かつ従業員が300人以下の法人。
※3 大企業とは、会社法(平成17年法律第86号)上の会社(株式会社・合名会社・合資会社・合同会社・有限会社)であり、「中小企業者」、「みなし大企業」のいずれにも該当しない法人。なお大企業の申請要件は以下のいずれかの要件を満たす場合のみ補助対象事業者とする。
・省エネ法の事業クラス分け評価制度において「Sクラス』または「AクラスJに該当する事業者(一次公募に申請する場合、以下の※を満たすこと)
※「Sクラス』については、公募締切時点で「令和3年定期報告書分」として資源エネルギー庁ホームページにて、「Sクラス」として公表されていることが確認できる事業者※「AクラスJに該当する事業者として申請する場合は、令和3年定期報告書「特定第4表事業者の過去5年度間のエネルギーの使用に係る原単位及び電気需要平準化評価原単位の変化状況」を提出すること。
・中長期計画書の「ベンチマーク指標の見込み」に記載された2030年度(目標年度)の見込みがベンチマーク目標値を達成する事業者
※4 その他とは、みなし大企業に該当する法人。会社法(平成17年法律第86号)上の会社(株式会社・合名会社・合資会社・合同会社・有限会社)以外の法人(医療法人、社会福祉法人、NPO法人等)であり、かつ従業員が300人超えの法人。
ここで紹介した以外にも地方自治体が独自に設けている補助金が使える場合もあります。また年度や補正予算によって、補助金の募集が再開されたり、停止されたり、新しい補助金の募集が始まる可能性もあります。そのため、経済産業省のホームページなどを参考に、最新情報を確認してみてください。
省エネ補助金を利用するメリット
省エネ補助金には、さまざまなメリットがあり、代表的なものを挙げます。
資金調達に役立つ
補助金は返済不要な交付金です。そのため、そのまま事業の資金として使えます。返済計画などに悩む必要もないため、使いやすいのがメリットです。
会社のイメージアップ
補助金を受けられることになると、補助金の採択事業者として社名が公表されます。
補助金を受ける際には審査があり、その基準の一つに事業の継続可能性や事業のクリーンさも含まれています。そのため採択事業者として公表されることで「きちんとした企業」というイメージが付きます。
また、省エネに取り組んでいる事業者であるという企業イメージも作れるため、会社全体のイメージアップにつながります。
省エネや設備更新ができる
補助金を利用することで、本来よりも軽い負担で省エネ設備を導入したり、エネルギー消費量の少ない設備に更新できます。古い設備の入れ替えができるだけでなく、事業所の光熱費を下げたり、新しい設備の導入により新しい製品が作れるようになったりします。
省エネが求められる背景
日本では政府主導の省エネ政策の一環として、上記のような省エネ補助金が交付されています。なぜなら今、世界全体で省エネが一つの大きなテーマになっているからです。政府が中小製造業をはじめとする事業者に対して省エネ対策をすすめる理由には、次のようなものがあります。
脱炭素化に向けた世界的な潮流
現在、地球温暖化が深刻化しているといわれています。そして地球温暖化が進んでしまう理由としてCO2の排出が挙げられています。地球温暖化を防ぐため、CO2の排出の抑制やカーボンニュートラル、SDGsなどさまざまな目標が掲げられています。
CO2の排出原因として大きな割合を占めているのが、電力などのエネルギーです。つまり温暖化対策のためには、電力やガスなどのエネルギーの使用量を少なくする必要があります。
日本は先進国の一つとして、世界を先導して省エネに取り組む責任を求められています。そのため政府は省エネ補助金などの政策を行い、日本国内の省エネ対策を進めていこうとしているのです。
効果的な省エネのためには製造業が変わる必要がある
省エネのもう一つの目的はエネルギー需給問題です。世界的な情勢の影響などにより電力の供給が限られる一方、電力の需要は増えています。電力に限らず、エネルギーの需要が供給量を上回りかねない事態が続いており、社会全体で省エネが求められている状態です。日本国内では製造業でのエネルギー使用量が高いため、特に製造業で省エネ対策が求められています。
省エネ補助金が実施される背景を知っておくと、省エネ補助金を申請する際に有利になりますので、エネルギー問題や地球温暖化対策のトレンドなども簡単にチェックしておきたいものです。
これらのことから日本政府も現在、省エネ政策に力を入れています。そのため中小企業でも使える補助金もさまざまです。補助金の利用はメリットも多く、補助金を利用して設備を更新すれば、経済的な負担も少なく、省エネや光熱費の削減、新しいビジネスチャンスの開拓にもつながります。補助金を上手く利用し、事業を推進させていきたいものです。
また繰り返しにはなりますが、補助金の名称や制度は変わることもあるため、申請にあたっては、必ず最新の情報を確認するようにしましょう。
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文:石川玲子
工業、製造業の話題を中心に執筆を行うフリーライター。工学部機械工学科を卒業し、独立前は機械系エンジニアとして勤務し、WEBやパンフレット、書籍などの執筆に対応している。
https://peraichi.com/landing_pages/view/mechawriter -
編集:株式会社イージーゴー
WEBコンテンツ、紙媒体、動画等の企画制作を行う編集制作事務所です。ライターコミュニティ「ライター研究所」も運営しています。
https://eggo.jp/
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