渡部 しのぶ

人事総務部 人事グループ

ダイバーシティ推進で違いを強みに

渡部しのぶ

なぜダイバーシティに取り組むのか

近年、「ダイバーシテ(多様性」という言葉をよく耳にすると思います。日本でも女性の活躍を推進する気運が高まり、多くの企業がダイバーシティに取り組んでいますが、当社の場合は、女性活躍推進だけがターゲットというわけではありません。
そもそもダイバーシティに取り組むことは、企業にどのようなメリットがあるかご存知でしょうか。一言で表現すると、「イノベーションの促進」です。会社は、同じ思いを共有した多くの人で成り立っています。人は誰もが多様な存在であり、その多様性をポジティブに捉えて事業経営に活かそうとする中から、新たな発想・イノベーションが創発されることが期待されます。
ダイバーシティの考えが社内に浸透すると、社内の人の多様な背景、多様な価値観、多様な能力を持った一人一人をお互いがこれまで以上に尊重できるようになります。それぞれの多様性はイノベーションの源泉となり、多様性を越えたチームワークは組織力として現れてきます。それこそが市場の競争に勝ち抜くために必要不可欠なものであると考えます。
当社もこうした考えをベースに、対象を限定することなくそれぞれの違いを尊重し合い、その違いを強みに変えて活躍できる環境づくりを目指した取り組みを行っています。

  • ※当社ではダイバーシティとインクルージョンの概念を合わせて「ダイバーシティ」と表現しています。
渡部しのぶ

ブラザー販売の取り組み

当社では世間で「働き方改革」が叫ばれる前から、長年WLM推(ワーク・ライフ・マネジメントに取り組んできました。これは、限られた時間の中で高い成果を生み出す、生産性の高い働き方を追求するもので、この取り組みを通じて「個人のライフを尊重することがワークの活力につながること」「ワークに費やした時間ではなく、成果や影響に価値がある」といった気付きが生まれました。ここからWLMの取組みをさらに高める形でダイバーシティ推進の活動がスタートしました。
当社のダイバーシティ推進の取組みには「フェア」「ケア」「キャリア自律」の3つの視点があります。
まず1つ目の「フェア」の視点での取組みです。2017年に全社横断で取り組んだ「人財活性化プロジェクト」を通じ、公募で参加した社員の声を反映して2018年度に人事評価フローの見直しと運用の徹底、昇格要件の見直しを行いました。これにより、より納得度の高い公正な評価がなされ、与えられる仕事の機会がフェアになることを目指しています。また、前述のWLM活動を継続するだけでなく、フレックス制度の導入によりさらに自律的に業務の効率化を進めています。その結果当社では、4年連続増収増益を実現しています。にもかかわらず、ひと月の残業時間は11.8時間と同業他社に比べて少なく、年休取得率も86%(2018年度実績となっており、社員一人ひとりがいかに働き方を意識して、限られた時間の中で成果を出すための活動をしているかを分かっていただけるかと思います。
そして2つ目が「ケア」の視点です。これは、いわゆる弱者救済策ではなく、性別、育児、介護、健康その他さまざまな「違い」が個の活躍を阻害してしまう状況を取り除こうという考え方です。長い年月を過ごす中で、ライフイベントが発生することは当然で、それによって今までと同じ働き方ができない時期を迎えるなど、制約を持つこともあるでしょう。ただその一時的な制約があるという理由だけで、想いを同じくして活躍してきた社員が力を発揮できなくなることを避けたい、という想いで各種制度を整えています。その結果、例えば育児に関しての実績を挙げれば、女性社員の育休取得後の復帰率は100%であり、育休後も職場で活躍しています。もちろん男性社員の育休取得実績もあり、厚生労働大臣から子育てサポート企業として3度のくるみん認定を受けています。フレックスタイム制度は、働き方に制約のある社員にも大いに活用されており、まだ限定的ではありますが在宅勤務制度の活用事例も出てきているところです。
そして3つ目の視点が「キャリア自律」です。会社側は様々な制度や環境の整備を行うことができますが、それを利用する従業員自身にもきちんと意識を持ってこれらを活用し、自ら強みを伸ばし、発揮してもらわなくてはなりません。単なる肩書としてのキャリアではなく、ありたい自分を描き、それに向けて当社の仕事を通じてどのように近づいていくかを、ひとりひとりが考え、自律的に行動を起こせるよう働きかけています。
この3つの視点の活動を通じ、全ての社員が強みを活かしてイキイキと活躍できる会社を目指しています。

渡部しのぶ

今後目指す姿

時代は、個々の価値観の多様化が進み、変化のスピードはどんどん速くなっています。このような時代・市場を相手にビジネスを続けていくためには、当然求められる仕事の質も変わってきています。当社はチームワークをひとつの強みとしていますが、こうした世の中の流れを踏まえると、一律で同じような考えや能力を持つ人間の集団ではなく、様々な考えや能力を持った人たちが意見を持ち寄って意思決定できる集団に変わらないと生き残れない時代になってきています。
よって、当社が行うダイバーシティ推進の目指すゴールは、違いを強みに変えられる組織です。現在は、「属性がそれぞれ違う」ではなく、「強(能力がそれぞれ違う」と捉え、まずはそれぞれの強みを存分に発揮して活躍できる環境をつくっているところです。それが実現すると、イノベーションの創出が活発となり、より多くの顧客価値を創造できるようになります。また働く人にとって、会社が自らの能力を活かして、他社の役に立てる場になり、高いモチベーションに繋がり、イキイキと働くことができます。
このストーリーを実現させるカギを握るのは、会社で働くすべての人の意識です。いろいろな施策や制度を整備していますが、うまく活用できるかどうか、成果につなげられるかどうかは一人一人の自覚にかかっています。自分だけではなく、一緒に働く他者の持つ「違い」や「価値観」を理解し、尊重する意識を持つことが大切です。それは単に相手か自分のどちらかに合わせるということではなく、健全な交渉を通じて、お互いができる落としどころを見つけることを意味しています。その切り札となるのが、ひとり一人が持っている「強み」です。ですから、一人一人が日々の業務はもちろん、自主的な学び、様々な経験を通じて、自分の強みを磨き、積極的に発揮する意識を持ってほしいと思います。 ダイバーシティ推進を担当する者として、今後も会社で働くすべての人が当事者であることを忘れないよう、こうした意識の大切さもどんどん会社全体に発信していきたいと考えています。

2013年「第7回ワーク・ライフ・バランス大賞」優秀賞受賞

(ワーク・ライフ・バランス推進会議)

受賞理由:職場ごとの具体的なアクションプラン設定とチーム・個人の表彰制度の設置。

  • ○自律的に管理できる人材作りを目指す「ワーク・ライフ・マネジメント」を提唱し、社長自ら従業員と直接対話。職場ごとに具体的なアクションプランを設定し、優れた活動を行っているチームや個人を表彰する「ワーク・ライフ・マネジメント大賞」を設置。
  • ○育児支援休暇制度の充実に取り組み、男性の育児休暇制度取得者が2011年度ゼロから2012年度10名に増加。
  • ○活動を始めて3年で、ワーク・ライフ・マネジメントの認知(2011年39%、2012年87%、2013年90%と実践(2011年59%、2012年84%、2013年85%が大幅に向上。
2013年「第7回ワーク・ライフ・バランス大賞」優秀賞受賞(ワーク・ライフ・バランス推進会議)