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【工作機械基礎知識】NC加工とは?
NC工作機械のメリット・デメリット
公開日:2024.02.21
NC制御による加工方法は、近年の製造現場において欠かせない存在となっています。NC加工は生産性や品質の向上につながり、NC工作機械の種類や性能も日々進化し続けています。
そこでこの記事では製造業に携わるすべての方に向けて、“いまさら聞けないNC加工の基礎知識”をご紹介します。NC加工機の利点や導入時の注意点、そしてさらにはNC加工の未来展望もまとめて解説します。
NC加工とは、どんな加工方法か
NC加工とは、工作機械をコンピュータで制御して切削を行う加工方法で、NC加工ができる工作機械を「NC加工機」「NC工作機械」といいます。NCは「Numerical Control」の略で、日本語では数値制御を意味します。
また、NC加工に用いられるプログラムはNC加工プログラムといい、これにより工作機械の動きや切削条件を指示し、ワーク加工を行います。NC加工はプログラムに基づくため、複雑な形状やデザインの部品も一貫して高い精度で加工を行えるのが大きな利点です。
なお、NC工作機械はコンピュータ制御で加工を行う工作機械の総称であり、「NC旋盤」「NCフライス盤」「マシニングセンタ」などいくつかの種類に分けられます。
NC工作機械とは
NC加工ができるNC工作機械にもいろいろな種類があります。ここでは、NC工作機械の種類とその特性について見ていきましょう。
CNCとNC工作機械の違い
結論からいうとCNC工作機械(Computer Numerical Control)は、NC工作機械とほぼ同義と考えて差し支えありません。もともとは別の工作機械を指していましたが、工作機械の技術発達によって同じものととらえられるようになりました。
というのも、もともと初期のNC工作機械はテープに記録されたプログラムを読み取って機械制御を行っていました。ただ技術の進化とともにテープではなくコンピュータが利用され、そのようなコンピュータ内蔵の工作機械を特にCNC工作機械と呼ぶようになりました。CNC技術の誕生により高度で柔軟な加工が可能となり、それがさらに進化していき今日でも広く普及しているマシニングセンタや複合加工機へと発展していったのです。
コンピュータ制御が当たり前になったいまでは、NC加工機もCNC工作機械もどちらもコンピュータを使っているため、両者を区別する必要がなくなったということです。
マシニングセンタ(MC)加工との違いは?
マシニングセンタ(MC)は、NC工作機械の一種に分類される高度な加工機械です。マシニングセンタの特徴は、「ATC」を搭載している点です。ATCとはAutomatic Tool Changer(オートマチック・ツール・チェンジャー)の略称で、自動工具交換装置といいます。マシニングセンタには複数の工具が内蔵されており、工作機械自体で切削工具を自動的に交換しながら複数の加工を進行させることができます。
マシニングセンタはフライス盤が発展した機械なので、回転させた工具をワークに対して当てることで切削を行います。コンピュータ制御を行うフライス盤をNCフライス盤といいますが、それとの違いは先ほど説明したATCの有無にあります。
マシニングセンタについて、詳しくは、こちらの記事も参照してください。
「マシニングセンタとは? 構造・種類・メリットなどの基礎知識」
NC工作機械の種類
NC工作機械とは、数値制御技術を使用して動作する工作機械の総称です。この技術により、複雑な形状や高精度の部品を一貫して生産することが可能となります。以下、主なNC工作機械の種類とその特性についてご紹介します。
NC旋盤
旋盤は機械に取り付けたワークを高速回転させ、そこに工具を押し当てて旋削を行う加工方法です。かつては人が手でハンドルを回して加工を行う汎用旋盤(普通旋盤)が利用されていましたが、それにNC加工の機能が備わったのがNC旋盤です。
NCフライス盤
フライス盤は旋盤とは異なり、工具自体を高速回転させてそれがワークに接触することで切削加工を行います。旋盤同様、汎用フライス盤にNC加工の機能が備わったものをNCフライス盤と呼びます。NC旋盤はワークが回転する仕組みであることから、ろくろのように円筒状のものや円の形に削ったりする場合に使用されます。一方、NCフライス盤は工具が回転するので、彫刻のように削りたい部分に工具を押し当てて任意の形に加工を行います。
マシニングセンタ
マシニングセンタはmNCフライス盤にATC(自動工具交換装置)が搭載されたNC工作機械です。NCフライス旋盤と比較して多機能となっており、それにより部品の取り扱いやセットアップの時間を大幅に削減できます。工具主軸やテーブルが回転・旋回する「5軸加工」ができるマシニングセンタも存在します。
ターニングセンタ
ターニングセンタは、旋盤加工を基本とし、加えてフライス加工やドリル加工など、多種多様な加工が一台の機械で行える工作機械です。一般的には「NC旋盤」と「マシニングセンタ」を合わせたものをターニングセンタといい、複合加工機と呼ばれることもあります。ひとつの機械で複数の加工工程を一気通貫で行うことができるため、生産効率や精度が向上し、多品種少量生産にも柔軟に対応できるのが特徴です。
詳しくは、こちらの記事も参照ください。
「複合加工機とは。複合加工機のメリットやマシニングセンタとの違いを解説」
NC研削盤
NC研削盤は、数値制御によって動作する研削機で、主に研削加工を行います。上記に挙げた工作機械でも研削加工はできますが、NC研削盤は特に高精度な仕上げが要求される部品の加工に適しています。砥石を使用してワークの表面を削り取り、微細な仕上げや高精度な寸法加工を行います。「平面研削盤」「円筒研削盤」「内面研削盤」など目的に応じてさまざまな種類が存在します。
導入のメリット
NC工作機械はすでに多くの工場や工場で利用されています。ここではNC工作機械を導入することの具体的なメリットについて詳しく解説します。
高精度の加工が可能に
NC工作機械の最大のメリットのひとつは、その高い加工精度にあります。特に複雑な形状や曲線、微細な部分の加工が要求される際、手動の汎用工作機械ではどうしても限界が生じます。その点、NC工作機械はコンピュータで工具の座標や回転数を指定して加工を行うため、難易度の高い加工も高精度で行えます。
作業の効率化・生産性の向上
NC工作機械ではプログラムを作成すれば、あとは自動で加工を行ってくれます。マシニングセンタやターニングセンタのようにATCを搭載しているNC工作機械であれば、ワークや切削工具のセットアップの時間の短縮につながります。また、最近ではワークの自動取り外しができるパレットチェンジャー(自動パレット交換装置)を備えたNC工作機械も存在します。ワークの取り外し・入れ替えにかかる時間も短縮でき、ノンストップ加工が可能となります。
品質の安定
NC工作機械はプログラムに基づいて動作するため、一度設定された手順は毎回同じ動き、同じ精度で加工を行います。これにより、バッチごとのばらつきや人為的なミスが減り、安定した品質で製品を生産できます。
危険な業務の軽減、安全性の向上
従来の手動加工では、作業者が機械の近くで作業を行う必要があり、事故のリスクを常に伴っていました。しかし、NC工作機械の場合、一度プログラムをセットすれば、作業者が機械のすぐそばにいる必要はありません。そのため、作業者が機械に触れることでのケガや事故のリスクが軽減され、安全な作業環境の実現に寄与します。
導入のデメリットはあるか?
NC工作機械の導入には数多くのメリットがある一方、考慮すべき課題や注意点も存在します。続いては、導入に当たって検討すべきポイントや課題を紹介します。
導入費用
NC工作機械のデメリットがあるとすれば、初期投資が高額になってしまう点が挙げられるでしょう。特に高性能な機種や大型のものになると、数千万円単位の設備投資になることも珍しくありません。ただインシャルコストこそかかるものの、作業の自動化による人件費削減ができたり、省エネ型のものを選べば電気代削減効果も期待できます。そのため、導入に際しては経営戦略や予算をしっかりと検討し、長期的な視点で回収計画を立てることが重要です。
作業手順の変更
NC工作機械を導入することで、これまでの手動加工とは異なる作業手順や考え方が求められます。特にNCプログラムの作成や機械のセットアップが必要となり、複雑なプログラムの場合にはCADやCAMといったソフトも使用します。そのため研修や勉強会を実施するなどして、従業員がNC工作機械について理解を深められるような環境づくりに努めることが欠かせません。
汎用工作機械のほうが向いているものとは?
NC工作機械は一般的に、ある程度の生産ボリュームがある製品や複雑な形状の加工に向いています。一方で、試行錯誤をしながら加工を行う試作品の製作には不向きです。また、加工完成品の微修正や単品加工なども汎用工作機械を用いたほうが早いケースもあります。NC工作機械の導入を検討する際は、用途や生産量を考慮して適切な選択を行うことが大切です。
NC工作機械の選定のポイント
ここまでNC工作機械の導入メリットや注意点を紹介してきましたが、単にNC工作機械を取り入れるだけでは十分な導入効果はできません。ここでは導入時に押さえておきたいポイントを解説します。
導入コストとランニングコストを考慮する
NC工作機械の導入とは、いうなれば設備投資です。そして、企業が設備投資をする上では「設備投資に見合った収益を見込めるか」という考え方が前提となります。投資利益法、回収期間法などの計算方法を用いて、導入後かかるであろうコストを予測しておかなくてはなりません。その際には、導入時の費用だけでなく、ランニングコストも含めて計算を行い、NC工作機械を導入した場合に見込まれる利益額・利益率と照らし合わせます。
省エネ効果による電気代削減、自動化による人件費削減なども考慮して、総合的にコストパフォーマンスを判断しましょう。
加工目的に沿った工作機械を選定する
NC工作機械がいくら優れているからといって、すべての加工目的に適した万能な機械は存在しません。それぞれの工作機械には、特定の加工に特化した機能や性能があります。新たな工作機械の導入を検討する際は、加工目的に応じて最適な工作機械を選定することが、生産効率の向上や高品質な製品を生産するための重要な要素になります。
例えば、大量生産を目的としている場合、高速で連続的な加工が可能な機械を選ぶのがいいでしょう。一方、複雑な形状の部品を製造する場合は、精密加工が得意な機械や5軸加工機を選ぶといった具合です。
ブラザーの工作機械にも様々なバリエーションがあります。自社の目的に合う性能を持つものはどれか、確認してみてください。
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従業員教育の進め方
NC工作機械の導入に際して、従業員の教育は不可欠です。操作やプログラム作成には専門的な知識や技術が必要になるため、従業員に適切な教育を施して機械の機能を最大限に引き出す努力が欠かせません。社内で勉強会や研修を行うことはもちろん、工作機械メーカーが提供する教育プログラムを活用するのも有効です。
例えば、ブラザーでは、プログラミングやメンテナンスの講座を定期的に開催しています。基本から高度なテクニックまで、幅広い内容をカバーしています。従業員のスキルや経験に応じて、適切な教育プログラムを選ぶことで、安全かつ効率的な作業を実現できます。
工作機械技術の未来、その進化は
NC工作機械はすでに製造業における基本潮流となっています。その技術は日に日に発達し、これからさらに深刻化する後継者問題や労働人口減少という課題を解決する手立てとなっていくでしょう。最後に、NC工作機械がこれから進んでいく方向性や未来を考えてみましょう。
技術の躍進
近年、一度のチャッキングで複数箇所の加工が可能なNC工作機械が市場に浸透してきました。これにより、作業工程の短縮や生産効率の向上が図られており、ワークの取り出し・取り付けといった従来手作業で行っていた作業までもが自動化されています。
さらに、工作機械と産業用ロボットを連携させる取り組みも進んでいます。IoTやAI、5Gといった最新技術も取り入れ、それぞれの機械が連動して人の手をほとんど必要としないモノづくりの未来も考えられます。なお、自動、省人、無人をコンセプトとした工場を「スマート工場」といい、現時点では実証段階ではあるものの将来的には確実にそういったモノづくりの現場が主流になっていくでしょう。
加工支援ソフトウェアは進化していく
工作機械や工場の物理的な進化と並行して、加工支援ソフトウェアも日進月歩で発達しています。複数の軸を同時に制御しながら加工を行う「同時5軸加工」はその代表例です。3Dモデリングやシミュレーション技術の進化により、実際の加工前に仮想環境での検証も可能になっています。
さらに、工具の細かな経路や工具の摩耗量など、さまざまな情報を取得しそれを加工プログラムに反映する仕組みも開発されつつあります。機械学習が搭載されれば過去につくった製品や製造工程などのビッグデータを活用して、自らプログラムの最適化を行う加工ソフトウェアも登場するかもしれません。
自社の技術を数値化し、引き継げる
長年にわたる経験や独自の技術を持つ従業員が退職すると、そのノウハウが失われてしまい会社にとって大きな損失です。しかし、上記で紹介したようなスマート工場や加工支援ソフトウェアであれば、属人化していた技術やノウハウを数値化し、データベースとして保存することが可能となります。
それにより生産効率が上がるだけでなく、その情報を基に新しい従業員の教育や研修を行えるようにもなるでしょう。NC加工をはじめとしたさまざまな技術は、企業の価値あるノウハウを次世代に引き継いでいくための重要なカギとなるのです。
導入を検討、あるいは現状に課題を感じているなら、一度相談してみてはいかがでしょうか?
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文:小林悠樹
1988年生まれ。一橋大学卒業後、食品メーカーへ入社。営業職を経験したのち、2017年にフリーライターへ転身。企業への取材記事、通信大手のオウンドメディアなどをはじめ、幅広いコンテンツを手がけています。
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編集:株式会社イージーゴー
WEBコンテンツ、紙媒体、動画等の企画制作を行う編集制作事務所です。ライターコミュニティ「ライター研究所」も運営しています。
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