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工作機械で電力消費が多い場所は?工作機械の省エネ
公開日:2024.02.21
エネルギー供給のひっ迫、燃油価格の高騰、気候変動への対応などを背景に、各企業は消費電力の削減に迫られています。製造業においては生産設備が消費電力の8割を占めているともいわれ、生産工程でいかに電力消費を抑えるかが省エネの鍵といえるでしょう。この記事では工作機械において電力消費の多い部位を解説しながら、消費エネルギーを削減するためのヒントをご紹介します。
目次
省エネの重要性と工作機械の役割
近年、地球温暖化の進行や資源の枯渇が深刻な社会問題となっています。それを背景に日本政府は温室効果ガスの削減に向けた取り組みを進めており、2030年度までに温室効果ガス排出を2013年度比で46%削減するという目標を掲げています。現状、日本全体の電力のうち6割以上が企業・事業所で消費されており、さらに業態別では製造業がその半数を占めています。そのため、製造業界全体として省エネを推進することは、日本全体の温室効果ガス削減に寄与します。
それでは製造業者は、具体的にどのように消費電力を削減していくのがいいのでしょうか。資源エネルギー庁の統計によれば、製造業の消費電力のうち8割以上が生産設備によって消費されています。つまり、製造業者が消費電力削減を考えるうえでは、「生産過程のなかで、いかにして電力を削減するか」を検討するのがもっとも効率的といえるでしょう。
工作機械で電力が多く消費される部分
工作機械は製造業の生産ライン上で欠かせない存在です。ただ、それらの機械は高い生産能力と引き換えに、大量の電力を消費します。具体的には、以下のような部位で電力が使われます。
主軸モーター:工作機械の中心となる部分で、これが回転することによって切削や研磨を行うことができます。加工中や起動停止時に特に大きな電力を消費します。
サーボ:各軸の動きを正確に制御するためのモーターとアンプ。微細な動きを制御するため、連続的な電力供給が必要となります。
クーラント:切削時に発生する熱を冷却するための液体・油です。クーラントをくみ上げるポンプなどで電力を消費します。
エアコンプレッサー:工作機械内部に圧縮気体を供給する装置で、工具の着脱や切りくずのエアブローなど重要な役割を担います。一定の空気圧を維持するために、多くの電力が消費されます。
操作パネル:タッチパネルや各種のセンサー、通信機能を有する現代の操作パネルは常時電力を消費します。駆動系の消費電力には及ばないものの、24時間365日稼働する生産ラインなどでは累計の消費電力は無視できないものとなります。
工作機械のサイズや種類によって電力消費の事情は異なりますが、基本的には上記のような主要部位で電力は消費されます。また、加工以外で消費される待機電力も見逃せません。切削していないときでも実際には、工作機械は内部の温度や状態を保つために電力を消費しており、ライトが付属している場合には照明でも電力は使われます。
工作機械の電力消費を削減する方法
製造業において多くの電力を消費する工作機械。続いては、工作機械の電力消費を削減するための方法を紹介します。
加工時間を短くする
加工作業を素早く完了させることは、電力消費削減に直接つながります。具体的には、ワークによって切削条件や工具を見直したり、生産工程を改めたりすることで、作業の無駄を省きます。1ワーク数秒の短縮でも、それが積もり積もって大きな削減効果が期待できます。
設定や機械の最適化
工作機械の動作設定や動作範囲の最適化を行うことで、無駄な動きが減り電力消費につながるケースもあります。機械の性能や加工物の特性を十分に理解し、切削速度や送り量、切り込み量などの調整を行いましょう。また、必要以上に大きな設備を使用することは電力の無駄が生じるため、生産量や加工内容に応じて機械のダウンサイジングを検討するのも有効です。
待機電力を減らす
工作機械は加工中だけでなく、待機時も一定の電力を消費しています。無駄な待機電力をカットするために、稼働していないときの機械の電源をオフにする、または低消費モードに切り替えることで節電を図ることができます。
エア消費量を少なくする
エアパージやエアブローなどエアコンプレッサーの運用を最適化し、エア消費量の削減することでも電力消費の低減を行えます。また、エアリークを防ぐための定期的な点検やメンテナンスも有効です。
高効率な機器の導入
最新の工作機械は省エネ化が進んでおり、古い機械に比べると大幅に消費電力を抑えられます。高効率な機械は初期費用こそかかるものの、消費電力が低く、加工時間の短縮にもつながります。労働時間短縮による、空調・照明設備にかかる電力削減効果も期待できるでしょう。
省エネ対応の工作機械のメリット
省エネは、近年の工作機械のトレンドのひとつといえます。省電力化された工作機械を導入することには、次のようなメリットがあります。「老朽化した機械を使用している」「工作機械の買い替えを検討している」という製造業者の方は参考にしてみてください。
コスト削減
省エネ対応の工作機械は、電力消費を大幅に削減できます。たとえば、ブラザー工業が開発する「SPEEDIO」シリーズ(主軸30番)は環境性能に優れ、高速・高効率な加工が可能です。一般的な主軸40番マシニングセンタから置き換えた場合、80%の消費電力削減効果が期待できます。
企業イメージの向上
ESG投資という言葉も登場しているとおり、CO2排出量の削減は企業収益や資金調達に直接影響します。省エネ工作機械の導入は環境負荷の低減に寄与することから、企業の社会的評価やイメージ向上にもつながります。
生産性の向上
工作機械といえば、かつては一工程ずつ手作業で行う汎用工作機械が一般的でした。ただ、今日ではコンピュータ制御のCNCマシニングセンタが主流です。それらの工作機械は切削条件をプログラム入力して自動運転ができるため、加工工程を大幅に効率化できます。省エネ対応工作機械は特に、高効率な動作や先進技術を取り入れていることが多いため、導入することで生産性の向上につながります。
工作機械関連の省エネ補助金
省エネ対応の工作機械の価格は、数百万円から高いものでは数千万円することも珍しくありません。投資額が大きい分、導入に際しては資金計画をしっかりと立てることが大切です。国や自治体が提供する補助金や助成金を利用するのも方法のひとつです。たとえば、省エネ対応の工作機械を導入する際に利用できる制度には、以下のようなものがあります。
省エネルギー設備投資利子補給金
省エネ対応の設備投資を行う企業に対し、金融機関からの融資にかかる利子の一部を補給してくれる制度です。補給率は最大1%、補給期間は最大10年間に設定されています。
SII:一般社団法人 環境共創イニシアチブ|公募情報(新規融資)(3次公募)(令和5年度 省エネルギー設備投資利子補給金)
省エネルギー診断拡充事業
企業の現状のエネルギー消費状況や省エネの取り組み状況を診断し、具体的な改善策を提案してくれる制度です。直接的な経済支援ではありませんが、専門家による詳細な診断を受けることができ、設備更新や活用できる補助金の案内なども行ってくれます。
設備を点検して光熱費削減 省エネルギー診断 (shoeneshindan.jp)
省エネルギー投資促進支援事業
事業者が計画したエネルギー消費削減対策の取組のうち、基準を満たした省エネルギー性能の高い設備の導入に要する経費の一部を補助してくれる制度です。空調設備や冷凍冷蔵設備、印刷機械などに利用でき、工作機械も補助対象に含まれています。
SII:一般社団法人 環境共創イニシアチブ|公募情報(2次公募)(令和4年度補正予算 省エネルギー投資促進支援事業)
省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業費補助金
2050年のカーボンニュートラルの実現に向け、先進的な設備システムへの投資、機械設計を伴ったオーダーメイド型設備の導入、またそれに準ずる生産体制の更新・改修など、省エネルギー効果の要件を満たす事業経費の一部を補助してくれる制度です。
SII:一般社団法人 環境共創イニシアチブ|事業トップ(令和4年度補正予算 省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業)
環境性能の高い工作機械を導入して消費電力を削減
工作機械における消費電力削減の取り組みは、「環境負荷の低減」と「コスト削減」の両方に寄与します。作業工程や切削条件を見直したり、エア消費量を最適化したりして、現状の生産工程で消費電力を削減できないかを検討してみましょう。また、古い設備を省エネ対応の工作機械に置き換えるだけで、大幅に消費電力を削減できることも少なくありません。生産効率の向上やメンテナンスコストの削減といった付加的なメリットも得られるため、省エネ型の工作機械への投資も検討してみましょう。
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文:小林悠樹
1988年生まれ。一橋大学卒業後、食品メーカーへ入社。営業職を経験したのち、2017年にフリーライターへ転身。企業への取材記事、通信大手のオウンドメディアなどをはじめ、幅広いコンテンツを手がけています。
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編集:株式会社イージーゴー
WEBコンテンツ、紙媒体、動画等の企画制作を行う編集制作事務所です。ライターコミュニティ「ライター研究所」も運営しています。
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