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進化しているBT30番の実力は?40番との比較も
公開日:2024.02.21
コンパクトな工作機械は、場所を取らず、消費電力も少ないイメージがある一方で、大きなものは加工できなかったり、剛性が不足するイメージがあります。この記事ではBT30番で展開されるSPEEDIOシリーズの特徴を紹介し、コンパクトな工作機械への従来のイメージとの違いを紹介します。
目次
BT30番で展開されるSPEEDIOシリーズ
SPEEDIOシリーズとは、ブラザーが2013年から販売開始したコンパクトマシニングセンタのシリーズです。ブラザーの工作機械は最初、ミシンの重要部品を自社製造する目的で作られました。そして1985年には「CNCタッピングセンター」として外部に向けても発売され、その当時からコンパクトながらも高い生産性と環境性能をもつ工作機械として高く評価されてきました。
2013年、ブラザーではこれらのブランドをSPEEDIOシリーズとして一新。主軸にBT30番を採用し、さらに自社開発NCを搭載したことにより、高速動作と最適な制御を実現しました。SPEEDIOシリーズが発売された頃は、国内外でスマートフォンの需要が大きく伸びていた時期でした。そのためSPEEDIOシリーズはスマートフォン筐体の削り出しにも多く使われ、発売直後から販売台数を順調に伸ばしていきました。
近年、製造業のみならず社会全体で省エネに取り組む動きが増えています。それに伴い、特に自動車部品などを中心に、軽くて丈夫なアルミ部品の需要が増えています。そのためアルミ部品を削り出す加工の需要も増えてきました。さらにアルミは、他の金属に比べてリサイクル性が非常に高いため、材料が国内で調達しやすいことも、アルミ削り出し製品の需要を押し上げています。
コンパクトで加工が早いSPEEDIOシリーズは今後のアルミ需要や、工場の省エネにもフィットする工作機械なのです。さらにSPEEDIOシリーズの新しい機種は、ユーザーインターフェースも一新し、誰にでも使いやすい設計になっています。
BT30番のメリット
BT30番の工作機械には次の3つのメリットがあります。
・高い生産性
・コンパクト
・省エネ
BT30番はBT40番に比べて主軸が軽く、機敏な動作ができるのが特徴です。主軸が軽いため、少ない消費電力でも主軸を素早く動かせますし、主軸の移動と停止に伴う衝撃も少ないため、より機敏に動作させられるためです。工作機械における加工速度は、材料の材質や加工条件によってある程度決定してしまいます。つまり生産性を高めるためには、加工以外のツール交換やツールの移動などの時間を短縮する必要があります。BT30番の工作機械ならば、機敏な動作によりこれらの時間を短縮できます。
BT30番の工作機械はBT40番のものに比べると全体的に小型です。そのため工場内でスペースを取りません。もちろん加工物の材質にもよりますが、比較的小さめのものが多く、アルミなどのやわらかい素材を多く取り扱うのであれば、BT30番のコンパクトな工作機械を導入し、工場内のスペースに余裕をもたせることも可能になります。
BT30番はBT40番に比べると主軸が小さく軽くなります。さらに主軸に取り付ける工具もBT40番に比べて小型で軽いものになります。そのため主軸を動かすために必要な電力が低く、同じ加工をBT40番で行うのと比べると少ない電力で工作機械を動かせます。確かに大きい機械ならば、大きな製品の加工も小さい製品の加工も行えますが、小さな製品の加工をわざわざ大きな機械で行うのは、消費電力の無駄にもつながってしまいます。BT30番の小さく軽い主軸を採用した工作機械ならば、消費電力を抑え、省エネ効果が期待できます。
BT30番のデメリット
一方でBT30番の工作機械にはデメリットもあります。BT30番に対するイメージには次のようなものが挙げられます。
・大きな部品の加工がしにくい
・剛性に欠けるため、硬い素材の加工がしにくい
前述のとおりBT30番の工作機械のメリットの一つにコンパクトさがありますが、その一方でテーブルの大きさや刃物の可動域に限りがあり、大きな部品の加工は行いにくいというイメージをもたれがちです。さらに主軸が細い分、剛性に欠け、硬い素材の加工は難しいというイメージもあります。
しかしSPEEDIOシリーズには、BT30番をもつ工作機械にありがちな、これらのデメリットのイメージを覆せる機種もラインナップされています。
ワイドに削れるW1000Xd2
大きな部品の加工がしにくい際には、ワイドに削れるW1000Xd2がおすすめです。
W1000Xd2の特徴はコンパクトな機体に対して、加工領域が広いことです。W1000Xd2の加工領域は幅1000mm、奥行き500mmにもなります。
一般的にBT30番の工作機械の加工領域は、幅700mm、奥行き400mm程度です。一方で一般的なBT40番の機械の加工領域は、おおむね幅1050mm、奥行き530mm程度です。つまりW1000Xd2はBT40番にほぼ匹敵する加工領域をもっているのです。
広い加工領域と広いテーブルのメリットは、大きなものが加工できるだけではありません。テーブル上に治具を複数置けるのもメリットの一つです。複数の治具を置けば、一度の加工で2機種分の加工を行ったり、同時に複数工程分の加工を行ったりでき、加工時間の短縮か可能になります。
さらにBT30番のメリットでもあるコンパクトさや省エネもあるため、工場のランニングコストの低減に大きく貢献できるでしょう。
主軸剛性をアップしたF600X1
BT30番の工作機械では硬い素材が加工しにくいと感じる場合には、F600X1をおすすめします。
F600X1は従来のSPEEDIOシリーズに比べて主軸ベアリングを大きくしたり、主軸の保持スパンを広げるなどの改良により、主軸剛性を大幅にアップしました。それにより従来のSPEEDIOシリーズに比べると加工機の剛性比はおよそ1.5倍にまで向上しています。これによりF600X1では、従来はBT30番では加工しにくかった硬い素材の加工も可能になりました。
F600X1はW1000Xd2に比べると加工領域は小さくなりますが、それでも小型のBT40番に匹敵する程度の加工領域をもっています。そのため、工作機械の剛性という意味でも、加工できる部品の大きさという意味でも、BT40番にかなり近くなっているのです。一般的なBT30番では剛性が心許ないものの、BT40番を導入するのは少し大がかりに感じられるような、中間の加工にちょうどいい機種になっています。
BT30番のカバー範囲は広がっている
SPEEDIOシリーズはブラザーが2013年から販売開始したコンパクトマシニングセンタです。主軸にBT30番を採用しているため、コンパクトでエネルギー消費量の少ないのがメリットです。さらに従来のBT30番ではデメリットと感じられていた、加工領域の小ささや硬い素材が加工しにくいなどの点をカバーできる機種もラインナップしていますので、お客さまのご要望に合わせた、無駄のない加工が可能なシリーズになっています。
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文:石川玲子
工業、製造業の話題を中心に執筆を行うフリーライター。工学部機械工学科を卒業し、独立前は機械系エンジニアとして勤務し、WEBやパンフレット、書籍などの執筆に対応している。
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編集:株式会社イージーゴー
WEBコンテンツ、紙媒体、動画等の企画制作を行う編集制作事務所です。ライターコミュニティ「ライター研究所」も運営しています。
https://eggo.jp/
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