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製造業界の人手不足はどう解決できるのか? 原因と共に解説

公開日:2023.08.24

     

国内のさまざまな業界で労働力不足が加速しています。特に製造業では影響が大きく、「ギリギリの人手で現場を回している」「人材を募集しても必要な数を確保できない」と悩む経営者の方も少なくありません。

人手不足で会社の競争力が低下したり、受注は順調なのに生産ラインが追いつかず、黒字倒産したりする深刻なケースも発生しています。製造業はこの事態に、どう向き合えばよいのでしょうか。

本記事では製造業が人手不足となる社会的背景や、人手不足がもたらす問題、人手不足解消のためにできる対策を紹介していきます。人手不足でお困りの経営者の方や人事担当者の方は参考にしてみてください。

製造業の現状は人手不足

製造業の現状は人手不足

2017年12月に経済産業省が行ったアンケート調査によると、製造業では実に94%以上の大企業・中小企業が人手不足と回答しました。さらに32%が「ビジネスにも影響が出ている」と答えています。

厚生労働省が2019年に行った調査「我が国を取り巻く人手不足等の現状」では、人手不足の状況を「人手不足感D.I.」という指標で表しています。

人手不足感D.I.とは「人員が過剰とする企業」の割合から「不足とする企業の」割合を引いた指標です。雇用形態別に人手不足感D.I.を見ると、2013年2月〜2019年2月で正社員に対する人手不足感が高まっている業種のトップが製造業でした。

働く方の所感を通じた人手不足感D.I.の水準を職種別にみても、「接客・サービス業」「建設・採掘職」「販売職」「医療・福祉関係専門職」などと同様に、製造業で働く方の多くが人手不足を感じていることが浮き彫りになっています。


出典:経済産業省「製造基盤白書(ものづくり白書)2018年版」
https://www.meti.go.jp/report/whitepaper/mono/2018/honbun/mobile/honbun_mb/101021_mb.html[新しいウィンドウ]

出典:厚生労働省「我が国を取り巻く人手不足等の現状」
https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/roudou/19/dl/19-1-2-1_01.pdf[新しいウィンドウ]

特に不足しているのは「技能人材」

前述した2017年の経済産業省による調査では、製造業の中でも特に「技能人材」の確保が困難な実態が明らかになりました。複数回答では「特に確保に課題がある人材」について、83.3%の企業が「技能人材」を挙げており、あらゆる人材の中で高くなっています。

技能人材とは、研究業務、製品開発・技術開発業務、品質・生産管理業務、製造・加工業務の4業務に従事する従業員のこと。製造業の幅広い分野で中核となる技能人材が不足している傾向にあります。

出典:経済産業省「製造基盤白書(ものづくり白書)2018年版」
https://www.meti.go.jp/report/whitepaper/mono/2018/honbun/mobile/honbun_mb/101021_mb.html[新しいウィンドウ]

製造業が人手不足になる理由

なぜ、製造業が人手不足に陥っているのでしょうか。原因とされているのはアナログな体制が続く中での「国内労働力人口の減少」と「高齢化」の2つです。2つの原因をより詳しくみていきましょう。

国内労働力人口の減少

国内労働力人口の減少は製造業の人手不足を招いている一因です。日本では人口が減少し続けており、国立社会保障・人口問題研究所の将来推計では、2053年に日本の総人口は1億人を下回ることが予測されています。

総人口の減少とともに、労働力人口(15歳以上の就業者と完全失業者を合わせた人口)は減少しており、1989年に8,552万人いた労働力人口は、30年後の2019年には7,510万人と1,041万人以上減少しています。

働ける年代の人口が減り続けていれば、製造業で働ける人が少なくなるのも必然です。総務省の調べによると、実際に製造業の就業者数は、2002年からの約20年間で157万人減少しています。製造業では特に34歳以下の若年就業者の数が、約20年間で121万人減少するなど、若手労働力の減少傾向は顕著です。

また東京への一極集中は地方の若手労働力不足を加速させています。製造業では工場などの拠点を地方や郊外に構えることが多いため、地方の若手労働人口のさらなる減少を招いていると言えるでしょう。

このように、人口に関する数字を見ると、製造業は特に限られた人材の中で事業を継続・拡大しなければならない状況であることが分かります。事業に関わる情報をデータ化し、人手不足解消のための対策を検討することが、製造業界全体における急務です。

出典:国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成29年)推計結果表」
https://www.ipss.go.jp/pp-zenkoku/j/zenkoku2017/pp29_Report3.pdf[新しいウィンドウ]
出典:厚生労働省「労働力人口・就業者数の推移」
https://www.mhlw.go.jp/stf/wp/hakusyo/kousei/19/backdata/01-01-03-03.html[新しいウィンドウ]
出典:総務省「2022年版 ものづくり白書」
https://www.mhlw.go.jp/content/000944612.pdf[新しいウィンドウ]

高齢化

少子高齢化も製造業の人手不足を確実に後押ししています。日本の65歳以上人口は1950年には総人口の5%未満でしたが、その後に上昇を続けて2019年には28.4%に達しました。

製造業における高齢就業者の割合も2002年には4.7%でしたが、2018年に8.9%に増加しています。高齢就業者はいつまでも働けるわけではありません。高齢者の退職によって、製造業のさらなる人手不足につながっているのが現状です。

日本の製造業での技術継承は、長らく「見て覚える」「やって覚える」といった手法が中心でした。それではマニュアル化されていないケースも多く、高齢就業者が退職すると属人的なノウハウも失われていまいます。そのため若手が育ちにくい環境となっているのも人手不足につながっている要因です。


出典:内閣府「令和2年版高齢社会白書(全体版)」
https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2020/html/zenbun/index.html[新しいウィンドウ]
出典:経済産業省「ものづくり人材の確保と育成」
https://www.meti.go.jp/report/whitepaper/mono/2021/pdf/honbun_1_2_1.pdf[新しいウィンドウ]

人手不足が引き起こす3つの問題

人手不足が引き起こす3つの問題

人手不足は企業にさまざまな問題をもたらします。厚生労働省が「人手不足が会社経営・職場環境に及ぼす影響」についてアンケート調査を行ったところ「大きな影響をもたらしている」と答えた企業が22.5%、「ある程度の影響を及ぼしている」企業が49.9%と、合わせて72.4%に上りました。

影響とはどのようなことなのか、具体的に人手不足が製造業にどのような問題を引き起こすのかを見ていきましょう。


出典:厚生労働省「令和元年版労働経済の分析-人手不足の下での「働き方」をめぐる課題について-」
https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/roudou/19/19-2.html[新しいウィンドウ]

生産が追い付かない

人手不足の現場では、新規事業への着手や既存事業の拡大が困難です。新規に需要が増えても対応できないケースも出てくるでしょう。

すでにギリギリの人員で現場をまわしている工場もあります。そうした現場では、新規の受注を断らざるを得ない事態も起きています。

いくら受注が増加傾向にあっても生産ラインが維持できなくなれば、最悪の場合、黒字倒産してしまうかもしれません。

利益が出にくい状況になる

自社の生産ラインが回らない場合には、余剰生産能力のある他社へ外注する手もあります。

しかし、外注すれば外注費の分、自社でまかなう場合に比べて利益は上がりません。利益の上がらない仕事で経営が苦しくなってくれば、既存の事業を縮小したり、人件費の安い海外での生産に頼ったりするケースも出てきます。

職場環境の悪化

厚生労働省のアンケート調査では「人手不足が職場環境に及ぼす具体的な影響」として、全産業で「残業時間の増加・休暇取得数の減少」が最も多く挙げられています。

人手不足で「長時間労働を余儀なくされる」「休みが十分に取れない」などの労働環境の悪化は製造業でも深刻な問題です。

製造業の現場で従業員の労働環境が悪化すると、離職率が増えたり、採用が難しくなったりします。過重労働は労働災害や事故の発生にもつながりかねません。

従業員の労働意欲が低下したり、メンタルヘルスに悪影響をおよぼしたりする弊害も考えられます。こうした労働環境の悪化も人手不足によって生まれる問題と言えるでしょう。

出典:厚生労働省「令和元年版労働経済の分析-人手不足の下での「働き方」をめぐる課題について-」
https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/roudou/19/19-2.html[新しいウィンドウ]

人手不足解消のためにできること

人手不足解消のためにできること

政府は製造業の人材不足を問題視しており、現状を調査したり人材確保事業を立ち上げたりするなど、人手不足対策に予算を投じています。

一方で人手不足の解消には、製造業自らが対策を講じていくことも大切です。製造業の企業経営者や人事担当の方が検討できる対策としては、次のようなものがあります。

● 労働環境や福利厚生の見直し
● キャリアパスの明確化
● 採用の見直し
● 事業の効率化

以下にそれぞれを解説していきます。

労働環境や福利厚生の見直し

労働環境の見直しは離職を防ぎ、人材を定着させるために重要な要素です。働き方改革の推進などを行っているなら、若い人材を迎え入れるためにも、自社サイトやSNSなどでアピールして興味を持つ人を増やしていきましょう。

福利厚生の見直しも有効です。福利厚生は人材確保だけでなく、社員のモチベーションアップにも効果を発揮します。アンケートをとるなどして従業員が必要とするものを把握しておくと有効な対策が打てます。

製造現場の労働環境をより快適にすることも重要です。例えば気温の高い夏場にむけて、工場や倉庫などで活躍する冷房機器、業務用スポットクーラーをより快適なものにしてみるのもよいでしょう。

ブラザーエンタープライズのスポットクーラー「Pure Drive」は、水の気化熱で外気を冷却するため、排熱を放出せずにダクトも不要。作業場全体を涼しくして快適な環境づくりができます。

▼ブラザーエンタープライズ「Pure Drive」
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労働環境や福利厚生の見直し

キャリアパスの明確化

人手不足解消には、キャリアパス制度の導入も有効です。キャリアパス制度とは、昇進・昇給の確かな基準を設けた人事制度のこと。従業員一人ひとりが目標とするキャリアを決めて、企業がそれを応援できれば働き方の多様化にも適応しやすくなります。

社員のモチベーションを高める効果も期待できます。モチベーションが高まれば離職率が低下するだけでなく、仕事のパフォーマンスも向上するでしょう。

採用の見直し

採用基準の見直しも検討してみましょう。性別や年齢、国籍にとらわれない人材採用も選択肢です。ただし、採用の幅を広げるには、雇用環境自体の整備も必要となります。

採用業務の効率化も重要です。採用業務が効率化できれば、少ない時間とコストでより多くの人材に応募してもらえる可能性が高くなります。

これまでの方法で採用の結果が出ていないなら、新しい採用方法の導入も検討に値するでしょう。SNSやWebメディアを活用した採用活動や、採用活動をアウトソーシングしてみる方法も検討してみてください。

事業の効率化

世の中の機械化やIT化に加え、新型コロナウィルスの流行による社会の変化などの影響を受け、製造業の在り方自体が変わってきています。こうした中では単に人を増やす努力をするだけではなく、少ない人数で必要な製造が行える効率化が重要です。

DX推進や自動化によって業務効率化を図れば、より少人数で業務を担えるようになるでしょう。またRPA(仮想知的労働者)で定型作業を自動化することで、定型作業に充てていた人材をよりコアな業務に注力できるようになるはずです。

DXやRPAの実現には初期投資が必要ですが、長期的に見ると利益を確保しやすくなるため、時代に合った効果的な取り組みと言えます。

データ分析によるビジネスモデルの変更や展開

事業の状況を分析して、より利益を得られるビジネススタイルがある場合は、現在のビジネスモデルを変更するのも一つの選択肢です。環境の変化に対応するため、経営資源を再結合・再構成する企業変革力のことを「ダイナミック・ケイパビリティ」と呼びます。

国内の製造業の中には、ダイナミック・ケイパビリティを発揮してプロセス改革を行い、さまざまな環境変化に柔軟に対応し、実力を伸ばしてきた事例も複数存在しています。

「変化に素早く対応する」「変化を予測し先手を打つ」「自ら変化を作り出す」ことを実践し、ダイナミック・ケイパビリティを高めることは、経済産業省・厚生労働省・文部科学省の3省によって共同執筆された「2020年版ものづくり白書」でも推奨されている方法です。

出典:経済産業省・厚生労働省・文部科学省「「2020年版ものづくり白書」
https://www.meti.go.jp/press/2020/05/20200529001/20200529001-1.pdf[新しいウィンドウ]

製造工程の効率化

人手不足に対応するには、現場業務の効率化も重要です。機械化すれば効率化できるだけでなく、労働環境の改善にもつながります。

ITツールやAIなどのデジタル技術を活用すれば、人間が行っている業務の負荷を軽減し、生産効率を高められます。生産ラインへのロボット導入で人手による業務を自動化することは代表的な例と言えるでしょう。

カメラやセンサーで製造設備の監視や保守点検業務を省人化する、AIによる画像認識で目視だった検査を自動化するなどすれば、限られた人材を、よりコアな業務に充てられるようになります。

ブラザーのパートナー企業である「東京エレクトロン デバイス株式会社」では、画像処理で部品を数え部品倉庫の入庫時、部品払い出し時、在庫部品の棚卸時などに実施する部品計数作業を、画像処理により補助するシステムで、検査後製品ラベルとしてブラザープリンター「QL-820NWB」や「QL-800」から出力することが可能です。



詳しくは「パートナーページ|東京エレクトロン デバイス株式会社様」[新しいウィンドウ]をご覧ください。

製造現場では「入出庫や工程の管理に時間がかかる」「効率的にトレーサビリティを実現したい」などの声が聞かれます。そうした課題も「入庫ラベル」や「トレーサビリティラベル」などを出力するシステムで解決が可能です。

ブラザーではブラザー機器と連携が取れているパートナー企業に、生産管理システムや、WMS、ロボット連動などを提案しております。この機会にぜひブラザーのパートナーページ[新しいウィンドウ]をご覧くださいませ。

人材育成の効率化

製造業では高齢化した熟練技術者の退職が増えているため、若手技術者の育成が欠かせません。若手の育成もこれまでのように、属人化したノウハウを「見て覚える」スタイルを続けているようでは、時間がかかってしまいます。

若手技術者を育成するには、マニュアルを用意して熟練技術者がもつスキルの「見える化」が重要です。熟練技術者の経験に頼っていた業務を標準化すれば、若手人材のスキル・技能習得に役立てられるでしょう。

まとめ

製造業の人手不足解消は急務です。人不足の現状と原因を踏まえた上で、今回ご紹介した「人手不足解消のためにできること」の中で、すぐにできることから取り組むことをおすすめします。

事業を効率化するには、さまざまな方法があります。中でも現場機械の投入による業務効率化は、直接的に人手不足を解消できる方法です。新たな機械を導入したりリニューアルしたりするだけでも、少ない人数でも対応できる範囲が増え、業務が効率化するでしょう。

ブラザー販売株式会社では、製品を通じた作業の効率化で、製造業ビジネスの幅を広げる後押しをしています。製造業で解決したい課題があれば、ぜひご相談ください。

   
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ブラザー販売 ビジネスNAVI 編集部

ブラザー販売、ビジネスNAVI担当者です。ビジネスNAVI編集者として、トレンドコラムやお客様の導入事例、パートナー企業、製品のソリューション情報などを発信していきます。

   

※この記事の内容は、2023年8月現在のものです。
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