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物流DXとは|新型コロナウイルスの影響について解説
公開日:2022.07.27
「物流業界では物流DXが推進されています。折から、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で巣ごもり需要が増えてEC(電子商取引)市場が拡大したこともあって、トラックドライバーの不足が深刻化しています。
このような人手不足などの問題を解決するためにサプライチェーンの効率化を図るなど、物流DXは今後、加速することが見込まれます。本記事では、物流DXの概要、コロナ禍における状況、国の取り組みなどについて解説します。役立ててください。
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物流DXとは
DXとはデジタルトランスフォーメーションのことで、物流DXは機械化やデジタル技術で物流のこれまでの在り方を変革することを意味しています。
・物流DXの概要
経済産業省によれば、DX とは、「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」(デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン (DX推進ガイドライン)より引用)としています。
簡単に言えば、物流DX とはデータやデジタル技術によって物流のこれまでの在り方を変革することです。
現在物流業界は、ネットショッピングの隆盛で物流市場規模は小口配送を中心に拡大する一方、トラックドライバーなどの人手不足が深刻化しています。この課題解決に向けてDXへの取り組みが期待されています。
出展:経済産業省「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン」(DX推進ガイドライン)
・物流DXの具体的な目的とは
物流DXの目的は2つあります。1つは、デジタル技術の導入によってビジネスモデルに革新をもたらすことです。大量生産・大量消費からEC市場への拡大などによる多品種・少量生産への変化によって、店舗を中心としたビジネスモデルからの変革が求められています。
もう1つは、人手不足を解決するために、AI(人工知能)、IoT(モノのインターネット)、ドローンなどの技術によって業務を効率化して、省人化やオペレーションの標準化により生産性を向上させ、働き方改革を実現することです。
物流業界の課題とは
物流業界は、現在、人手不足、長時間労働、宅配便の増加、サプライチェーンの再構築といった課題を抱えており、その解決が急務となっています。
・人手不足・長時間労働
内閣府「令和3年高齢社会白書」によると、わが国の人口は2015年に減少に転じ、今後も人口減少は続くと見込まれています。これによって、2015 年から 20年後の2035年には15歳~64歳の生産年齢人口は1,225万人減少し、2065 年までには生産年齢人口は3,100万人、0歳~14歳若年人口は691 万人減少すると見込まれています。
生産年齢人口の減少は、物流業界でのEC(電子商取引) 市場の急成長もあり、今後、日本の年間国内貨物輸送量の9割を占めるトラック輸送のドライバー不足をさらに深刻化させると見込まれています。
▼トラックドライバー需給の将来予測
2017年度 | 2020年度 | 2025年度 | 2028年度 | |
---|---|---|---|---|
需要量 | 1,090,701 人 | 1,127,246 人 | 1,154,004 人 | 1,174,508 人 |
供給量 | 987,458 人 | 983,188 人 | 945,568 人 | 896,436 人 |
不足 | △103,243 人 | △144,058 人 | △144,058 人 | △278,072 人 |
営業用トラックのドライバーについて、公益社団法人鉄道貨物協会の「平成30年度本部委員会報告書」は、2025年に約20万8千人が不足すると予測していて、現在働いているドライバーの高齢化も懸念されます。
このトラックドライバーの人手不足の要因には、長時間の拘束や低い賃金などが挙げられています。
出展:国土交通省「平成30年版交通政策白書」
出展:公益社団法人鉄道貨物協会「平成30年度本部委員会報告書」
出展:内閣府「令和3年高齢社会白書」
・宅配便の増加
人手不足、長時間労働の背景には、近年のEC市場の拡大により、宅急便が増加していることがあります。新型コロナウイルスの感染拡大もネットショッピングの利用者を増加させました。
BtoC-EC 市場規模の経年推移(単位:億円)
経済産業省の令和2年度電子商取引に関する市場調査報告書によれば、消費者向け電子商取引の市場規模は、2013年に約11.1兆円だった市場規模は年々拡大を続け、2020年には全体で倍近い約19.3兆円規模に成長。物販系分野に限っても12.2兆円規模に達し、最近5年間で約1.5倍に拡大しています。
このように宅配便は、市場規模が拡大し続けていますが、一方で配送会社は膨大な業務量、煩雑な事務処理などの業務過多と人手不足に悩まされる状況が続いています。加えて、不在配達が全体の約2割に達していて、再配達によるドライバーや物流業界の負担が大きくなっています。
このトラックドライバーの人手不足の要因には、長時間の拘束や低い賃金などが挙げられています。
出展:経済産業省商務情報政策局情報経済課「令和2年度産業経済研究委託事業(電子商取引に関する市場調査)報告書」
・新型コロナウイルスによるサプライチェーンへの影響
新型コロナウイルス感染症の拡大によって、世界経済は世界恐慌並みに落ち込みました。外務省によれば、IMFの試算で2020年の世界の実質GDPは2019年比マイナス3.2%で、各国も2019年に比べ日本のマイナス4.7%始め、米国マイナス3.5%、ドイツマイナス4.8%、フランスマイナス8.0%、英国マイナス8.9%でした。
国境を越えるグローバルサプライチェーンは世界各地で寸断し、自動車部品や電子部品など多くの物資の供給が途絶しました。このような現状から、サプライチェーンの多元化や製造事業者の生産拠点の分散など、今後、サプライチェーンの再構築が望まれています。
出展:外務省経済局「主要経済指標」
物流DXによる課題の解決方法とは
物流DXによる課題の解決法には、配送の効率化を高める機械化や各種手続きのデジタル化、業務の効率化などがあります。
解決法①:機械化
担当者が物流DXによる課題解決法の1つは、機械化です。例を挙げれば、ラストワンマイル配送の効率化があります。ラストワンマイルとは最後の区間という意味で、ネット通販では物流の最終拠点からエンドユーザーまで効率化をめぐる攻防が活発化しています。
当日配達や翌日配達の配送サービスの充実化、好きな場所で好きな時間に荷物を受け取る物流体制の構築、物流業務のアウトソーシング、ドローンの活用などの取り組みが進められています。
幹線輸送の機械化では、トラック隊列走行・自動化や自動運行船などの技術で輸送を効率化するとともに、運転負担の軽減、安全性の向上など作業する人の労働負荷の軽減を図ります。
庫内作業の機械化では、倉庫への入荷から出荷までの業務の自動化と在庫のコンピュータによる一元管理や、倉庫内の荷物を扱う業務を効率化する自動搬送ロボット、倉庫内のピッキング作業を効率化するピッキングシステム、倉庫内の在庫・入出荷・検品・ピッキングなどを一元管理する倉庫管理システムなどがあります。
工程管理や道具の保管場所のルール付けにラベルシールを活用して「見える化」を図り、業務に関わるメンバーが共通認識を持てるようにするのも有効です。
解決法②:デジタル化
ST物流DXによる課題解決法の2つ目は、デジタル化です。各種手続きの電子化はその一例で、運送状やその収受の電子化、特殊車両通行手続きの迅速化などがあります。
運送状電子化はe-AWBとも呼ばれ、日本は先進諸国に比べて導入が遅れています。e-AWBとは、AWB(航空運送状)すなわち荷主の運送業者と、航空会社の間の運輸契約を電子化することで、紙のAWBを印刷、処理、保管する必要はなくなるのがメリットです。
また、「SIPスマート物流サービス」は内閣府が主導している国家プロジェクトです。SIPとは戦略的イノベーションプログラムの略称で、物流と商流を可視化し、最適化に向けて、生産から入出庫、トラック動態、店舗在庫、購買などサプライチェーン上のさまざまなプレイヤーのデータを共有し、全体の生産性向上を目指しています。
解決法③:効率化
マニュアル3つ目の解決方法は業務の効率化です。例えば、同じ納品先なのに別の倉庫からそれぞれ別のトラックで運搬に出発するなど、適切に在庫管理ができていないために業務が非効率であることが業界内での問題として良く挙げられます。
、商品管理する際にラベルにQRコードを印刷するなど、管理をデジタル化することで業務の効率化につなげることができます。
こういった在庫管理などの問題を解決できるソリューションを導入することで、業務の効率化を図り、上述のような物流業界特有の課題を解決できる場合があります。物流DXは大掛かりな仕掛けも多く、導入しづらい側面があるため、こういった基本的なところからスモールスタートしていくのも有効な対策であるといえます。
ブラザー販売では、こういった物流DXをスモールスタートするための各種ソリューションを取り扱っております。
もしここまでにお伝えしてきた課題をお持ちの場合は、ぜひ一度ご相談ください。
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物流DXを成功させるポイントとは
物流DXを成功させるポイントについて、以下に解説します。
①信頼・協力を得る
製造企業が物流DXを成功させるポイントは、現場の人達の信頼・協力を得ることです。上層部が自分たちだけで物流DXを進めようとするのは無理があります。
物流の現場にとって、モノの運送、保管、荷役などはが本業です。その現場に携わる人達には、それまでのアナログな業務で培った工夫や改善した部分がたくさんあり、その人たちの知恵や経験を活かせるよう協力を得ることが必要です。その現場を無視して、すべてトップダウンで進めることは、避けなければなりません。
②現場にメリットを感じてもらえるように工夫する
製造物流DXを進めようとして、かえって現場の負担を大きくする場合があります。例えば、物流DXを進めるのは、現場の動き、物事の様子をデジタル化し、データとして扱える状態にすることが必要ですが、現場の人たちに機械を操作して情報を入力させることは、多忙な現場にさらに負担をかけます。
むしろ現場の人達に、デジタル化によってアナログな報告書を作成しなくてもよいとか、センサーによりデータ取得を自動化できるとか、長時間労働がなくなるなどのメリットを感じてもらえるように工夫することが大事です。
物流DXに取り組む企業の事例
物流実際に物流DXに取り組んだとあるファストファッションの最大手企業の事例を紹介します。
アパレル業界では販売時期を過ぎて売れ残った商品が大量に廃棄されことが常態化していますが、この企業では商品を売り切るために、DXで製造開始から販売開始までのサプライチェーンを高速化する社内変革を実現しました。
全社的に電子タグを採用、POSシステムで集まったデータなどから、消費者のニーズに必要量だけを生産する体制を構築しました。売り場の商品も3~4週間で75%程度が入れ替わるので、消費者は心理的に購入をせかされています。
この事例の企業では遠隔地からの注文でも38時間以内に配送を完了し、世界各国でも48時間以内には店に届くスピーディーな生産体制となっています。
まとめ
物流DX とはデータやデジタル技術によって物流のこれまでの在り方を変革することです。その目的の1つは、デジタル技術の導入によってビジネスモデルに革新をもたらすことです。2つ目は人手不足を解決するために、業務の効率化、生産性の向上により働き方改革を実現することです。
今後人口の減少に伴い生産年齢人口も減少し、EC 市場の急成長によるトラックドライバーの労働需給の逼迫が大きな課題となっています。
この課題の解決には、物流DXによる機械化とデジタル化が必須です。企業が物流DXを成功させるには、現場の人達の信頼・協力を得ることが必要です。そためには、DXによる長時間労働がなくなるなどのメリットを感じてもらうことが大切になります。
ブラザー販売 ビジネスNAVI 編集部
ブラザー販売、ビジネスNAVI担当者です。ビジネスNAVI編集者として、トレンドコラムやお客様の導入事例、パートナー企業、製品のソリューション情報などを発信していきます。
※この記事の内容は、2022年7月現在のものです。
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