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【アナログゲームを文化のひとつに】ゲームマーケットを運営する株式会社アークライト・インタビュー
2020年初頭から新型コロナウイルス感染予防のため、多くの人が外出自粛を余儀なくされています。そんな状況のなか、さまざまなメディアを中心に注目されているのが、電源やインターネットを使わない「アナログゲーム」です。
そんなアナログゲームを総合的に取り扱うイベント、「ゲームマーケット」は、2000年に初めて開催。当時来場者400人だったゲームマーケットは、2019には来場者が約3万人に達する大規模なイベントに成長しました。現在は老若男女を問わず、広い世代に愛されるこのイベントには、これまでどのような背景があったのでしょうか。
今回は、そんなゲームマーケットを運営されている株式会社アークライト営業部の片岡大輔さんにアナログゲームの魅力やオリジナルのものを作りたい人へのアドバイス、初心者にもおすすめの遊びやすい商品など、さまざまなお話をお聞きしました。
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株式会社アークライト 片岡さんにインタビュー
―― まずはゲームマーケットについて、簡単にご説明いただけますでしょうか。
片岡さん:ゲームマーケットは、“アナログゲーム”という、電源を使用しない形式でのゲームの総合的イベントです。メインはボードゲームと呼ばれるジャンルですが、それ以外にも TRPG(※)や、トレーディングカードゲームといったものも取り扱われています。
※テーブルトークロールプレイングゲームの略。あらかじめ用意された物語の登場人物となった各プレイヤーが、ルールの範囲内で主体的に行動しながら、物語を完成させる遊び。
―― 2010年よりゲームマーケットはアークライト様が主催・運営をされているとのことですが、そこに至るまでの背景をお聞かせください。
片岡さん:ゲームマーケットは2000年、ゲーム研究家の草場純さんという方が同じくアナログゲームが好きな仲間たちと有志で開催されたのが始まりでした。
当時の日本では、ボードゲームは今ほど流通がされておらず、海外から個人で輸入するか、一部のショップが輸入、日本語訳をつけて販売されているものを購入することが一般的でした。ゲームマーケットでは、そんなボードゲーム好きたちが「自分はもう遊ばないけど、タンスの肥やしにするのはもったいない」と手持ちのものを持ち寄って交換をする、中古で販売するといった趣旨があったとのことです。
―― ゲームマーケットはもともとボードゲーム好きな方々が集まって始まったイベントだったのですね。
片岡さん:ゲームマーケット第1回の来場者は400人、出展者は32ブースでしたが、徐々に多くの方に知られるようになり、2009年の来場者は1,350人に。しかし、来場者が1,000人を超えたことから個人では運営が難しくなり、弊社に草場さんと知り合いだった社員もいたことから、運営を引き継ぐこととなりました。
―― 来場者の増加により、運営面でも大きく変わったところはあるのでしょうか。
片岡さん:2010年に引き継いで以降、ゲームマーケットは東京都台東区にある東京都立産業貿易センター台東館の2フロアを会場としていましたが、2012秋は3フロアでの開催となりました。フロアが3つにわかれるのは運営面でも難しいと判断し、2013年春からは会場を東京ビッグサイトに移したタイミングで来場者数も5,000人まで伸びました。さらに2019年秋には土曜・日曜の2日間で約3万人と、本当に多くの方にご来場いただいています。
―― 来場者の増加に伴い、客層にも変化は見られましたか。
片岡さん:当初の客層は30代、40代のボードゲーム好きの男性がメインというマニアックなイベントでした。ボードゲームの認知が進んだためか、今では女性やカップル、お子さまを連れていらっしゃるファミリー層も珍しくないように感じます。
―― 世代を超えてボードゲームで遊ぶ方々も増えているのですね。
片岡さん:もともとゲームマーケットには、「どうぶつしょうぎ」などで遊べる子どもゲームコーナーが常設されており、お子さまとお母さんがそこで遊んでいる一方、お父さんは自分の興味のあるゲームを探す……なんて光景もありましたね。
―― ゲームマーケットは2020年春に新型コロナウイルス感染症の流行拡大に伴い、開催を自粛されています。2020年秋開催における課題はどんなところにあったのでしょうか。
片岡さん:ゲームマーケットにはその場でゲームを遊んでいただく試遊卓があったのですが、ゲームによって100枚以上もあるカードを逐一消毒できるかといえば、現実的ではありません。ゲームマーケットは買い物が主な目的とはいえ、買う前や買った後すぐに遊んで楽しめるのも魅力のイベントです。
試遊卓を作ることができないのは非常に心苦しいですし、残念に思っています。新型コロナ収束後、再び試遊卓で来場者の方々に楽しく遊んで帰っていただくことができるようになるのが、現在の望みですね。
ゲームマーケットに参加する際のポイント
―― 初めてゲームマーケットに行く方へのアドバイスはありますか。
片岡さん:ゲームマーケットには、ご家族でふらっといらっしゃる方も見られるので、まずは、有名な企業やメーカーのブースを回ったり、一般の出展者のゲームで「おっ!」と思うものをチェックしてみたりするのがおすすめです。
これまでは試遊卓があり、実際に遊んでみて「面白い。買おう!」といったことも可能でしたが、現在は新型コロナウイルス感染予防の観点から試遊卓を設置できません。ただ、出展者も興味を引くような装飾をしたりと、各自工夫を凝らしているので見て回るだけでも楽しいでしょう。
―― 素敵な装飾をされている方も多いため、面白そうなゲームや、自分好みのビジュアルのゲームも見つけられそうですね。
片岡さん:気になるゲームを見つけたら、出展者に「どんなゲームなんですか?」と声をかけてみてください。ゲームの特徴やおすすめのポイントを紹介いただけるでしょう。
―― では、アナログゲームが好きで出展者としてゲームマーケットに参加したいと思っている方へのアドバイスはありますか。
片岡さん:アナログゲームは起点となったアイデアやデザインをいったん形にするために家でプリンターを使って印刷、友達とテストプレイをして改善をする……といった形で作られることがほとんどだと思います。
そうなると、アナログゲームは実物がないと遊べず、改善もできません。いいものを作るためには、テストプレイと改善のプロセスは大切です。ゲームの精度を上げるには、印刷して遊べるようにしましょう。そこを怠ってしまうと、来場者から興味を持ってもらえる良い作品を作り出すことは難しいと思います。
―― たしかに、作っているうちは一方だけが有利になってしまうルール設定や、スムーズにゲームが進まないという課題に気付かないかもしれません。
片岡さん:ゲームマーケットが始まった頃は帰宅後、自宅のプリンターで印刷したゲームのカードをハサミで切り、保護シートに入れて10個限定で販売する……という出展者も珍しくありませんでした。しかし、コミックマーケットの影響で日本では同人活動をしている方をターゲットにしている印刷業者も多く、現在ではボードゲームのカードの印刷を請け負うサービスも増えています。
ゲームの率直な意見を求めるのに、ボードゲームカフェやショップにお願いして知らない方に遊んでもらうのも良いですが、そこでいきなり印刷所で仕上げたものよりも、プロトタイプのものを自宅で印刷して作り、いただいた意見をもとに直していくのが望ましいでしょう。そのため、プリンターのある環境がゲーム作りには欠かせないといえます。
アナログゲームはコミュニケーションツールでもある
―― 2020年より外出自粛により自宅で過ごす時間が増加、メディアでもアナログゲーム特集などが見られるようになりましたが、実際にアナログゲームを取り巻く環境に変化は見られるのでしょうか。
片岡さん:容易に人が集まることができない理由から、ボードゲームカフェや販売店のようにリアルの店舗は厳しい状況が続いているものの、販売数は伸びており、市場には成長が見られます。
最近は市場の広がりから書店でも取り扱いされており、地方でもボードゲームを手に取って見られるようになっています。雑誌のようにコンビニでも買える段階ではありませんが、このまま文化として浸透しつつあるため、十分な下地はできていると思います。
―― アナログゲームの魅力はどこにあるのでしょうか。
片岡さん:人と人とのコミュニケーションツールになれるところだと思います。
アナログゲームはユーザー人口が少ない頃、ゲームのシステムやギミックの面白さが重視されていました。しかし、昨今ユーザー人口が増える中で、若年層を中心にボードゲームをコミュニケーションツールとして捉えており、交流を求めているという印象があります。
我が社としてもアナログゲームには「人と人との関わり」という魅力があると考えています。ボードゲームによって生まれた、遊びを通じての会話やコミュニケーションによって関係性が良好になったり、コミュニケーションが円滑に進んだりと商品だけではない、その先の体験を提供しています。
―― では、アナログゲームに興味を持った方におすすめしたい、初心者でも楽しめるアナログゲームをご紹介いただけますでしょうか。
片岡さん:ルールが簡単な「ito」(イト)は、どなたでもすぐに仲良くなれるのが特徴のゲームです。
1人1枚配られた1〜100までのカードを、お題にそって数字を口にせずに表現し合うルールとなっています。たとえばお題が「給食の人気メニュー」の場合、数字が大きくなれば人気のため、「100はカレーかな」「90はなんだろう」なんて考えます。
―― それぞれの人となりや価値観が明らかになるゲームのため、自己紹介代わりにもなりそうです。
片岡さん:ゲームとしてのルールはあるものの、周りのリアクションを見ながら会話を誘発するギミックもあります。
数字が低いと思う人からカードをオープンし、順番に並べられればクリアです。他にも「動物の強さ」であれば、「100はライオンかな?」「象ならもっと上じゃない?」と人それぞれの価値観を楽しむ魅力もあります。
―― みんなでワイワイ楽しみながら遊べそうですね。
片岡さん:続いては、販売から10周年を迎える「ラブレター」というゲームです。このゲームは愛するお姫様に、お城にいるさまざまな役職の人たちの力を借りてラブレターを届けるのが目的となっています。
「ラブレター」もいたってルールはシンプルで、山札から引いたカードとすでに持っているカードのいずれかを捨てるのを繰り返して進めていきます。カードの総枚数も少なく、1回のプレイが5分ほどなので気軽に遊べるのもおすすめのポイントです。
―― 「ito」でボードゲームの楽しさを知った後、ルールをもとに考えて進める「ラブレター」を遊ぶのも楽しそうです。
片岡さん:最後は、アークライトが海外からライセンスを取得して日本語版を出している、協力型クイズゲームの「ジャスト・ワン」です。
回答者となるプレイヤーのひとりがランダムに選んだヒミツの言葉をもとに、その他のプレイヤーが推理しやすいヒントを考えます。しかし、もしもヒントが被ってしまった場合は無効となってしまうため、ひねったヒントを出す必要があります。
「ジャスト・ワン」はWeb会議ツールを使ったオンラインでも遊びやすく、報道番組などでも取り上げられたことから売上も増加しています。
アナログゲームはコミュニケーションツールでもある
―― 片岡さんのボードゲームにおける目標をお聞かせください。
片岡さん:私には「ボードゲーム=人生ゲームのイメージを変えたい」という目標があったのですが、現在のボードゲーム人気を見ていると達成に近づいているのではないかと思っています。もちろん人生ゲームは広義の意味ではボードゲームですが、現在流行っているボードゲームとは別のジャンルともいえます。
世界規模でボードゲームをプレイする人口が増え、もともと人気だった重厚なシステムのものから気軽に遊べる直感的なものも遊ばれるようになり、日本オリジナルのゲームも出てくるようになりました。
次の目標としては、夕食後に家族3世代でボードゲームを遊んでいるという海外のように、日本でもご家庭でボードゲームを遊ぶことを日常的にすることです。
―― たしかに、ご家族でのコミュニケーションツールにもボードゲームはぴったりですね。
片岡さん:これまでは趣味が似ている友人たちとボードゲームカフェで遊ぶことも多かったのですが、ゲームマーケットではベビーカーを押しながらくるご夫婦も見られるので、ご家庭で遊ぶことも増えている印象を持っています。おそらくコロナ禍で外出が難しいため、自宅で遊ぶことが増え、徐々に文化としてご家族で遊ぶことが根付いているのかもしれません。
そのためには引き続き、ボードゲームを広く知っていただき、特殊な趣味ではないものにしていきたいですね。
―― ゲームマーケットの今後の展望をお聞かせください。
片岡さん:より多くの方に足を運んでいただけるよう、イベントを広く知ってもらうことです。
現在はこれまで限られた人の趣味だったアナログゲームが徐々に広まる段階にあり、出展企業も他業種からの参入が増えて市場も広がっています。このままもっとイベントを大きくし、ボードゲームという文化を広めていきたいです。
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取材を終えて
コロナ禍による外出自粛により、多くの方の間で注目を集めているボードゲーム。そんなボードゲームの面白さや魅力を伝えるゲームマーケットを運営する株式会社アークライトでは、人と人とのコミュニケーションを円滑にするツールとしてもボードゲームの普及を推進されていることがわかりました。
また、アイデアとプリンターがあればオリジナルのアナログゲームを作ることができるというお話も、非常に興味深い話題でもありました。アナログゲームで遊びながら、オリジナルの作品を作ってみるのも面白いかもしれません。
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