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物流業界におけるEDIとは? 必要性や導入のメリット・デメリットを徹底解説
公開日:2023.10.25
企業間取引における受発注管理や在庫管理、請求書発行は、郵送やFAX、メールで行われていますが、自社だけでなく取引先にとっても手間やコストがかかるものです。これらを電子化されたデータでスムーズに管理できると、業務効率化やコスト削減につながるでしょう。
こうした事情があり注目されているのが、EDI(Electronic Data Interchange)です。導入を考えている方は、まずその特徴やメリット・デメリットを抑えておく必要があります。
本記事では、物流業界におけるEDIの概要や導入が進んでいる背景、必要性などを解説します。導入のメリットやデメリットもあわせて詳しく解説するので、導入する際に参考にしてください。
EDIとは
EDIの概要を把握するには、前提知識となるかんばんを理解しておく必要があるので簡単に見ていきましょう。
かんばんとは、製造や運搬に必要な情報が記載された帳票を指します。トヨタ生産方式の一つであるジャストインタイム方式(必要なときに必要なものを必要な分だけ作る)には欠かせません。
一口にかんばんといっても、実は目的や役割が異なる「仕掛けかんばん」「引取りかんばん」「臨時かんばん」の3つに分類できます。それぞれのかんばんが製造過程において重要な役割を果たすことで、ジャストインタイム方式を実現できるのです。
トヨタ自動車株式会社発祥のかんばんですが、自動車製造に限らず製造業全般で活用できるとして他の製造業でも波及していきました。その中で、よりシステマチックに管理できるとしてEDIの導入が進んでいます。
EDIとは、「Electronic Data Interchange」の略称で、日本語では「電子データ交換」と訳されます。EDIは企業間の取引で作成する発注書や受注書、請求書、納品書などの各種帳票を、専用回線やインターネット回線を用いて電子取引する技術です。
従来の企業間取引では、帳票のやり取りにメールやFAX、郵送などを使っていました。これでは取引先ごとにフォーマットを変える必要があるため、管理が煩雑になる、コストがかさむ、ミスが発生しやすいなどの問題点がありました。
EDIを活用することで、帳票をシステム上で一元管理できるため、効率的で精度の高いやり取りが可能となります。
ちなみに自動車業界のEDIは以下のように各企業によって呼び名が異なる点は、念頭におきましょう。
● トヨタ自動車株式会社:TOPPS、eかんばん
● 本田技研工業株式会社:IMPACT-III
● ダイハツ工業株式会社:ALPS
● マツダ株式会社:JUMP、MGN
● スズキ株式会社:NET、SPIRITS
※順位不同
EOSとの違い
EOSはElectronic Ordering Systemの略語で、主に受発注業務に使われているシステムです。EDIと同じくインターネットを介して、発注・受注・仕入れ・支払い・在庫管理・請求・出荷などの一連の業務を管理できます。
EDIが契約や納品、生産、支払いなど幅広い業務に対応できるのに対し、EOSは受発注業務に特化しているのが両者の違いです。いずれもインターネットを介して管理する点は共通しているので、EOSはEDIの一種だと捉えられます。
EOSをうまく業務に活用できると、受発注業務を効率化できるのはもちろん、在庫管理もできるため廃棄物の削減にもつながります。
流通BMSとの違い
流通BMS(Business Message Standards)とは、流通業界のデータ交換方式の一種です。従来はデータの送受信の仕様が定められたJCA手順が用いられていましたが、通信速度が遅い、運用が煩雑になりやすいなどのデメリットがありました。そこで近年は、JCA手順に替わる新たな機構として、流通BMSの導入が進んでいます。
EDIと流通BMSは混同されがちですが、若干意味は異なります。EDIが電子上でデータを交換する仕組み・システムなのに対し、流通BMSはEDIの標準仕様です。流通BMSは流通業界で活用されている、EDIを基にした標準機構だと認識するといいでしょう。
EDI導入の背景
EDIの概要を押さえたところで、トヨタのe-かんばんや共通EDIの導入に至った部品サプライヤー企業の事例を見ていきましょう。
自動車業界は、大量の部品をストックしておく形式が一般的でした。これには在庫欠品のリスクが少なく、需要が変化しやすい製品の製造に対応できるなどのメリットはありますが、多くの在庫を抱える、費用がかさむなどの問題点もあります。
そこでバーコードやRFIDなどのデジタル技術でかんばん方式を実現する「e-かんばん」や、低コストで導入できる中小企業向けの共通EDIの導入が進められました。
在庫や運搬コストを削減できるのはもちろん、在庫状況をリアルタイムで把握できるため受発注業務をスムーズに行えるなど、生産性の向上にもつながっています。
EDIの必要性
ここまでEDIの導入推進の背景を見てきましたが、実際どの程度導入が進んでいるのでしょうか。
中小企業庁が公開している2023年版「中小企業白書」によると、サプライチェーン全体の付加価値向上のためにEDIを導入している企業は、大企業で27.4%、中小企業で5.0%にとどまっています。 大企業はもとより、中小企業ではなかなか導入が進んでいないEDIですが、必要性は増しています。その理由を詳しく見ていきましょう。
まずあげられるのが、事前に取引プロセスやデータのフォーマット、通信プロトコルを定めたEDIを導入すると、企業間取引が円滑に行える点です。例えば、仕入れ先が発行する「前工程発行」と、客先が発行して仕入れ先に送る「後工程発行」のどちらをかんばん方式に採用するのか、どの通信プロトコルを使用するかなどをあらかじめ決めておくと、無駄なラリーを減らすことができます。
導入にメリットが感じられないとして、導入に後ろ向きな中小企業も見受けられましたが、今ではIT技術に不慣れな中小企業でも、受発注業務を簡単かつ低コストでIT化できる仕組みである「中小企業共通EDI」などもあります。「平成28年度経営力向上・IT基盤整備支援事業(次世代企業間データ連携調査事業)」にて策定され、業務効率の上昇によるコスト削減や人的ミスの軽減につながるなどの効果が示されており、導入で大きなメリットを享受できるでしょう。
また、電子帳簿保存法の改正により、電子上の取引記録を紙媒体に出力して保存することができなくなった点も、EDIの必要性が高まっている要因の一つです。2024年1月には電子データでの保存が義務付けられますが、EDIシステムを導入すれば手際よく対応できます。
出典:中小企業庁「2023年版中小企業白書」
https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2023/PDF/chusho/04Hakusyo_part2_chap3_web.pdf
(2023-10-18)
出典:経済産業省「どうすればいいの?「電子帳簿保存法」
https://mirasapo-plus.go.jp/hint/17457/
(2023-09-19)
EDIのメリット
EDIのメリットは、以下の3つです。
● 競争力がアップする
● 業務効率化が可能
● 人的ミスの防止につながる
各メリットを詳しく解説するので、EDI導入のヒントとしてください。
競争力がアップする
インターネット技術の発展に伴い、オンライン化や電子化が進んでいます。企業間取引でも同様の傾向が見られ、競合他社との競争から離脱しないためには、こうした流れに対応することが欠かせません。
仮にEDIを導入せず、各種取引を全てアナログで対応するケースを考えてみます。この場合、人的コストがかかる他、ミスも発生しやすく、取引先からの要求に早急に対応できない可能性があるでしょう。これでは、取引を敬遠されるリスクが否めないため、EDIを導入して時代の流れに適応していく必要があります。
また、EDIを導入すると、在庫状況や注文状況を基に顧客のニーズを迅速に把握できるようになります。市場動向にリアルタイムに反応し対策を練ることで、企業間の競争で優位に立てるでしょう。
業務効率化が可能
EDIを導入すると、企業間の発注や受注に関する取引が自動で記録されます。発注書や受注書の作成・送付の業務が不要になるので、業務効率化を図ることが可能です。企業間の状況がリアルタイムで反映されるため、商品を発注してから納品されるまでの期間(リードタイム)も短縮されるでしょう。在庫状況の確認もスムーズに行えるため、在庫が少なく納品に時間がかかりそうな部品をあらかじめ発注する、などの対策も立てられます。
EDIは、発注から納品、請求、支払いまでの一連のプロセスを、円滑に進めていくことが可能です。結果的に、これらの業務にかけていた労力とコストを削減できるため、本来集中すべき業務に集中でき、ビジネスの発展につなげられるでしょう。
人的ミスの防止につながる
注文書の作成・送付、発注データや受注データの確認、そして出荷の指示出しなど、従来の業務ではどうしても人が手作業で行わなければならないものがありました。ミスを防ぐためにいくら気をつけても、人が関わる以上、発注先のミスや数量のズレ、重複発注などの人的ミスは一定の確率で生じてしまいます。
こういったミスは、返品や損害賠償、社会的信用の喪失などに発展するケースが少なくありません。ダブルチェックや時間をかけた慎重なチェックを行うとある程度リスクを減らせますが、人的コストが発生するため、企業の財務状況を圧迫する可能性があります。
EDIを導入すると、自社で入力したデータが取引先にリアルタイムで反映されます。一連の業務をコンピューターで自動化できるため、手作業で行うよりもコストを抑えつつ、人的ミスを減らせるでしょう。
EDIのデメリット
EDIのメリットを把握すると、早速導入を検討するかもしれません。その前に、EDIの以下のデメリットも理解しておきましょう。
● システムトラブルによる業務停滞リスクがある
● 取引先がEDIを導入している必要がある
● 導入にあたって教育体制を整える必要がある
各デメリットの内容と、その対策を詳しく解説します。
システムトラブルによる業務停滞リスクがある
EDIは企業間の取引を電子データで行える便利なシステムですが、システムトラブルが起こると利用できない可能性があります。システムトラブルによりEDIが利用できないと、取引をEDIを介して記録している場合、業務停滞のリスクがあります。
多くのEDIツールがありますが、ツールごとにセキュリティレベルはまちまちです。導入する際は、どのようなセキュリティ対策が施されているのか、信頼性が高いか、多くの企業に導入されているかなどを確認しましょう。
また、万が一システムトラブルで利用できないケースに備えて、サポート体制が充実しているかもあわせて確認するのをおすすめします。
取引先がEDIを導入している必要がある
自社だけでなく、取引先もEDIを導入していないとメリットを最大限引き出すことはできません。取引先がEDIを導入していない場合は、得られる効果が小さくなるので、慎重に導入を検討してください。
また厳密にいうと、取引先がEDIを導入していても、自社のものと互換性がなければ連携を取るのは難しくなります。これからEDI導入を考えているなら、取引先が利用しているEDIツールと相性の良いものを選ぶといいでしょう。
導入にあたって教育体制を整える必要がある
EDIシステム自体は、プログラミングのような専門知識は不要なので、扱いやすいでしょう。しかし、ITツールの利用やパソコンの操作になれていない社員は、使いこなすまでに時間がかかる可能性があります。
IT関連の部署がEDIを利用する場合はさほど問題ありませんが、そうではない部署で導入されるケースもあるでしょう。そのような場合は、教育体制を整え、ツールの活用方法を社内に普及させていく必要があります。
しっかりと研修を行うことで従業員がEDIを活用できるようになれば、業務を効率化できるだけでなく、運用後のトラブルもある程度防げるでしょう。
またEDIの活用方法だけでなく、現状の課題や導入が進んでいる背景などをあらかじめ共有しておくと、社内文化として定着する効果も期待できます。
EDIで業務効率化を促進
日々大量の発注・受注・納品などの取引がかわされる自動車製造業では、トヨタ生産方式の一種であるかんばん方式が、業務効率化や人的ミス防止を目的に導入されています。
製造業には欠かせないかんばんですが、紙媒体で管理すると「手書きで読みづらくミスリードしてしまう」「リードタイムが長くなってしまう」などの弊害も生じます。より適切にかんばんを管理するなら、EDIの導入は欠かせないでしょう。
まとめ
EDI(Electronic Data Interchange)は、企業間の取引で生じる契約書や請求書、納品書などの帳票を、専用回線やインターネット回線で管理する仕組みです。
自社でかんばんを発行するなら、会社や事業の規模にもよりますが大量に必要になることが予想されるので、かんばん専用のプリンターを導入するのがおすすめです。ブラザーのかんばん専用プリンター「HL-L6310DW」なら、60万枚の大量印刷を可能にする耐久性と、モノクロ約50枚/分のスピード、約1.7円(税込)/枚の低ランニングコストを兼ね備えています。EDIの効果をさらに高めたいなら、ぜひご購入をご検討ください。
ブラザー販売 ビジネスNAVI 編集部
ブラザー販売、ビジネスNAVI担当者です。ビジネスNAVI編集者として、トレンドコラムやお客様の導入事例、パートナー企業、製品のソリューション情報などを発信していきます。
※この記事の内容は、2023年10月現在のものです。
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