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【薬局必見】2020年薬機法改正から
いま考えたい、患者とのコミュニケーション戦略

MICTコンサルティング代表 大西大輔

2020年9月に薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)が改正されました。
この改正は、調剤薬局の運営戦略の見直しを求める内容となっています。
法律の主たる変更点を確認しながら、今後の薬局の方向性を考えてみましょう。

【薬局必見】2020年薬機法改正から
いま考えたい、患者とのコミュニケーション戦略

薬局の目的

 従来、薬機法において薬局は「薬剤師が販売又は授与の目的で調剤の業務を行う場所」と定義されていました。これは薬を販売するために調剤をする場所と位置付けられていたことになります。一方、改正薬機法では「薬剤及び医薬品の適正な使用に必要な情報の提供を行う場所」と追記されています。調剤を行う場所に加えて、患者への情報提供を行う場所、すなわち「服薬指導」が重要な業務になることを意味しています。
 また、改正薬機法では、「薬剤師による継続的な服薬状況の把握および服薬指導の義務」などが法制化されており、これまで以上に対人業務の強化が求められています。

新型コロナの感染拡大で、オンライン服薬指導が前倒しで解禁

 薬機法改正以前は、薬局がオンラインで服薬指導を行うことは認められていませんでした。2018年度の診療報酬改定で「オンライン診療」が点数化されましたが、オンライン服薬指導の点数化は、2020年の改定を待たなくてはいけなかったのです。
 しかし「新型コロナウイルス感染症」の感染拡大の影響から、オンラインでの服薬指導が一気に前倒しされることになりました。厚生労働省は2020年4月10日に「新型コロナウイルス感染症の拡大に際しての電話や情報通信機器を用いた診療等の時限的・特例的な取扱いについて」で通知し、9月の施行を待たずに、同通知の発出から電話やオンラインで服薬指導を行うことを可能にしました。実際には単純な前倒しではなく、薬機法で想定していたオンライン服薬指導よりも対象範囲が拡大されてのスタートとなっています。

専門薬局の設立

 改正薬機法では、これまでの「かかりつけ薬局」から、さらに機能を強化した「地域連携薬局」と「専門医療機関連携薬局」の2つの専門薬局を定義しています。この2つの専門薬局は、知事認定制度による名称独占となり、患者や医療機関が薬局を選定する際の差別化のポイントとして設けられた意図が伝わります。
 地域連携薬局は「入退院時の医療機関等との情報連携や在宅医療等に、地域の薬局と連携しながら一元的・継続的に対応できる薬局」と定義しています。専門医療機関連携薬局は「がん等の専門的な薬学管理に他医療提供施設と連携して対応できる薬局」としています。いずれも、医療機関や介護施設との連携を強化することが求められており、現在政府が進めている「地域包括ケアシステム」の中での薬局の立ち位置が明確に打ち出されたと言えるでしょう。今後は次期改定に向けて、開設基準や評価が定められていくことになります。

特定の機能を有する薬局の認定要件及び手続き

図 特定の機能を有する薬局の認定要件及び手続き
出典:厚生労働省「2040年度を展望し誰もがより長く元気に活躍できる社会の実現に向けて」(平成31年4月10日)

    

薬機法改正で進む「薬局の選別」

 これまで病院・薬局は、狭い空間に複数のスタッフが集まって業務を行うことが効率的とされてきました。スタッフ同士の距離が近いことで、しっかりとしたコミュニケーションが図れ、効率的な業務連携ができると考えられていたからです。そのため、受付や診察室、処置室、検査室、調剤室などに、複数のスタッフが一堂に会して業務を行うケースが多く見られました。
しかしながら、コロナ禍ではできるだけ人と人の距離(フィジカル・ディスタンス)をとることが求められています。スタッフ同士の「密」を避けるためには、「集中オペレーション」から「分散オペレーション」への変革が必要となっているのです。

お薬手帳をベースにした「コミュニケーション」で患者との心の距離を縮める

 患者から指名される薬局・薬剤師になるためにはどうすれば良いのでしょうか。薬局が今までのあり方を見直し、運営を模索していかなければならないときにヒントとなるのが、政府が打ち出している「かかりつけ薬局・薬剤師」という考え方です。オンライン服薬指導など、急激に進むデジタル化によって物理的な距離は縮まります。変化の時期には、多くの他業種からの参入も考えられます。この10年の小売業の変遷を見ればそれは明らかでしょう。その流れは、感染拡大の中で外出を控える傾向が強まり、ますますスピードが増しています。
 デジタル化によって利便性は確かに向上し、物理的な距離はどんどん縮まりますが、かえって患者との心の距離が離れる恐れもあります。デジタル化を進める一方で、心の距離を縮めるための「密なコミュニケーション」が大切なのです。
 結局、患者から頼られる存在になるためには、原点に立ち戻り、気軽に相談に乗ってくれる薬剤師を目指す必要があるのです。患者と薬局・薬剤師の関係を強化するためには、これまで以上に「お薬手帳」が大切なツールとなっていくことでしょう。患者への服薬指導の際に、お薬手帳を交換日記のように活用し、互いに意思の疎通を図っていくことが大切なのです。

患者に支持される薬剤師の工夫

 患者から支持される薬剤師は、どんな工夫をしているのでしょうか。ある薬剤師は、お薬手帳に赤ペンでぎっしりと注意点を書き込んでいます。また、薬歴には患者の生活環境から、好きなもの、嫌いなもの、これまでの人生に至るまで、プライベートな情報も書いているそうです。患者は自分のことをしっかり理解してくれるこの薬剤師を「かかりつけ薬剤師」として指名するのです。患者のプライベートな情報を聞き出すほど、患者は「あの薬剤師は私のことをわかってくれている」と安心して、より深い話をすることができるのです。これはアナログでもデジタルでも変わらない原理原則と言えるでしょう。
 薬局を訪れる多くの患者は高齢者であり、ITリテラシー弱者と呼ばれる方々です。もちろん、リテラシーの高い方はITを使いこなし、スマホを使いこなすことは事実です。しかし、一気に進むデジタル化の波に置き去りにしないように配慮することも大切です。デジタル化時代のコミュニケーションのポイントは、アナログとデジタルの良いところを取って、患者にとってやさしいコミュニケーションを心掛けることです。
*このコラムでご提供する情報は、その正確性と最新性の確保に努めておりますが、完全さを保証するものではありません。当社は、本コラムの内容に関するいかなる誤り・不掲載等について、一切責任を負うものではありません。

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