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「世に広めるからこそ、何度もテストプレイをしていくことがボードゲーム制作では大切」
ボードゲームデザイナー・宮﨑雄さんインタビュー
コロナ禍の影響から、おうち時間を楽しむアイデアとしてボードゲームが人気を集めています。戦略性が問われたり、協力して得点を稼いだりと、家族や友人と楽しい時間を過ごしたことがある方もいるかもしれません。
そんなボードゲームを、研修や学習の一貫として企業や学校で取り入れるケースも増加しています。オリジナルのボードゲームを通し、周囲と協力しながら学びを深めているのだとか。
今回は、株式会社VITAにてご依頼をもとにボードゲームの企画や制作を手掛けるボードゲームデザイナーの宮﨑雄さんにお話をお聞きしました。「遊ぶだけではなく、オリジナルのボードゲームを作ってみたい!」という方は必見です。
宮﨑雄さん・プロフィール
ボードゲームデザイナー。2018年にボードゲームの制作会社、株式会社バンソウを共同創業、取締役就任。その後取締役を退任し、2022年3月より株式会社VITAに参画。WAZA gamesとして活動を開始。
note:https://note.com/zkmymkz※外部サイトへリンクします。
Twitter:@zakimiyayu※外部サイトへリンクします。
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プロトタイプは「雑に早く作る」
─ ご依頼を受けてボードゲームを制作する際のフローをお聞かせいただいてもよろしいでしょうか。
宮﨑さん:
まずは「どういったゲームを作りたいですか」「どのようなシーンで使うイメージですか」といったヒアリングを行います。テーマや内容が具体的に定まってなかった場合も、ヒアリングを通して「ここがゲームになりそうだな」とリサーチすることも多いです。
そこから企画案に落とし込んで提案、その後ルールや内容物を決めて最低限遊べる「プロトタイプ」の制作が始まります。
─ プロトタイプはどのようにして作られているのでしょうか。
宮﨑さん:
紙を切って手書きしたり、文字数が多いものは大変なのでプリンターで印刷したものをはさみでチョキチョキ切って……なんてこともあります。
プロトタイプが完成したら、実際に遊ぶ「テストプレイ」を行い、人が青んでいる様子を観察したり、遊んだ印象をインタビューしています。ここで理想的なのは、ゲームのテーマを知らない方にも遊んでもらって、ちゃんと楽しんでもらえて、テーマが伝わることです。
─ たしかに、ボードゲームである以上、楽しいものであることは求められますね。
宮﨑さん: それを踏まえて、カードの大きさやコマの材質といった仕様を決め、デザイナーさんと一緒にアートワークを制作し、本印刷に入っていきます。
─ 制作において、特に時間が必要な工程はあるのでしょうか。
宮﨑さん: ヒアリングやご提案もそうですし、プロトタイプとテストプレイの反応を踏まえて、ブラッシュアップする工程は何度も繰り返すことが多いです。テストプレイをした結果、プロトタイプの作り直しや、新たな課題が見えてきて企画そのものを見直す場合もありますね。
─ ボードゲーム制作にあたって、あらかじめしておくと良い準備はありますか。
宮﨑さん: どういうゲームを作りたいのかというイメージも大切ですが、目的を定めておくことも欠かせません。ゲームを作って販売する、PRのグッズとして活用する、社内の方に向けた研修に使うといった目的によって、制作内容も大きく変わってきます。もちろん一緒に話し合っていくなかで検討していくのも問題ないのですが、ある程度イメージしておくとスムーズかなと思います。
─ なるほど。ボードゲームを作る目的は重要ですね。では、作っている過程で注意したいポイントがあればお聞かせください。
宮﨑さん:
やはりテストプレイでしょうか。無意識であっても自分のアイデアはどこか評価が甘くなってしまうので、テストプレイを通して「実際に遊んでみてどうか」という客観的な視点を入れるようにしています。もちろん、自分が思っているほど良い反応が得られないこともあります。遊んだ人の表情が明るくない、厳しい感想が寄せられるなんてことは辛いですが、広く世に出すことを最終目的にするからこそ、絶対やった方が良いです。
プロトタイプもていねいに作ってしまうと、そのプロトタイプ自体に無駄な思い入れが発生してなかなか前に進めないため、「雑に早く作る」のが望ましいと思っています。たとえば「誰にも読んでもらわずに3年かけて書いた小説」と、「誰かに読んでもらいながら1ヶ月で書いた小説」では、後者の方が高い感性度になっていることが多いんじゃないでしょうか。
形はどうあれゲーム自体を作る、とにかく1人でゲームを作り上げるのが目的ではなく、人に遊んで楽しんでもらうのが目的であれば、プロトタイプは雑に早く作って、早く否定してもらった方が良いです。修正があったらその分だけプリントして差し替えて試してみればいいですし。
どんなアイデアでもゲームにできるのかもしれないという気づき
─ 宮﨑さんがこれまで作ったボードゲームをご紹介いただけますでしょうか。
宮﨑さん: まずは図形を「構成するパーツの数」と「穴の数」だけで区別する数学の一分野である「トポロジー」をテーマにしたゲーム、「トポロメモリー」です。科学雑誌の数学特集をきっかけに興味を持って制作し、クラウドファンディングも行ったこともあって多くの方に遊んでいただけました。その後のシリーズも出したほか、出版社さんとのコラボで雑誌の付録にしていただいたこともあります。
─ ルールも比較的シンプルで、老若男女を問わずいろいろな人と遊べそうですね。
宮﨑さん: そうですね、想像以上に幅広い層に遊んでもらっています。2つ目は、野菜や肉といった食材の製品成分を比較して遊ぶ「サラダマスター」「ミートマスター」です。「キャベツとレタスではどちらのカロリーが高いか」「豚バラ肉と牛バラ肉はどちらの脂質が多いですか」みたいなクイズができます。
─ 「トポロメモリー」は科学雑誌がきっかけでしたが、こちらのアイデアは何がきっかけだったのでしょうか。
宮﨑さん: これは文部科学省の日本食品標準成分表を見て思いついたゲームです。作ってみて「どんなアイデアでもゲームにできるのかもしれない」という気づきがありました。食育の教材として教育の現場で遊んでもらえましたし、いろんな展開もできる良いゲームになったと感じています。
─ 健康に関する情報を発信されているインフルエンサーの方にも喜ばれそうです。
宮﨑さん:
最後に紹介したいのは、プログラミングの思考法を直感的に学べる「ロジックロボット」です。プログラミングを学ぼうとするとき、いきなりパソコンを触って難しいと感じるお子さんもいるかもしれませんが、こちらは「プログラミングってどういう考え方をするんだろう」というところを、ロボットの動かし方で学ぶことができます。
先日、ちょうどたくさんのお子さんに遊んでもらうイベントがありましたが、想像以上に楽しんでいただけましたね。プログラミングに興味を持つ最初のきっかけとして「プログラミングって面白い」と思ってもらえたのであれば作って良かったなと思いました。
─ プログラミングのスキル習得を目指して習い事としてお子さまをプログラミングスクールに通わせるご家庭もあるようですし、今後より多くの方に遊んでもらえそうですね。
宮﨑さん:
コードを書く過程を「ロボットの向きを変える」「溶岩に当たったらワープする」といったカードを組み合わせて入れて、誰が最初にアイテムを手に入れるのかを競うルールとなっています。
この作品自体でものすごい学びが得られるわけでは当然ないんですけれども、実際にプログラミングをやっているときに「ロジックロボットでやったな」と思い出してもらえたら、学びとしてはすごくいいものと言えるのではと思います。
カジュアルにボードゲームを作って欲しい
─ コロナ禍によってボードゲームがメディアなどでも多く取り上げられ、遊ぶようになった方も増えているように感じます。今後ボードゲームに期待することはありますか。
宮﨑さん: もっと多くの人に、カジュアルにボードゲームを作って欲しいと思います。家庭用プリンターはもちろん、リーズナブルな価格で印刷依頼ができるサービスも増えていると思うので、思いついたものを形にするのにも良い時代になっています。
─ 最後に、ボードゲーム制作にチャレンジしたい方へのアドバイスをいただけますでしょうか。
宮﨑さん: 「とにかく作ってみる」ことですね。たとえば、手書きでコピー用紙なんかにゲームらしきものを作って、それを身近な人にやってもらって、何か反応が得られたら、それをもっとさらに面白くしていこうという気持ちがわいてくると思います。頭の中でいざ作ってみたら何か違った……というときに立ち直れないかもしれません。手をかければかけただけ間違いなく面白くなっていくので、気が合う仲間と作れば、楽しいし、もっと仲良くなれる。そんなクリエイティブな趣味として選んでもらえたら嬉しいですね。
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取材を終えて
創作において、批評されることを恐れるあまりアイデアをいつまでも温めてしまう……なんて経験がある方もいるかもしれません。しかし、広く世に広めるものこそ、宮﨑さんがお話されていたように「まずは作ってみる」という最初の一歩を踏み出すことが大事だと実感したインタビューでした。
ボードゲームを楽しんだら、次は制作に挑戦してみてはいかがでしょうか。
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