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【ペーパークラフトの可能性や役割を具現化したい】紙乃製作所・ハルトさんインタビュー
自宅で過ごす時間が長くなり、新しい趣味としてペーパークラフトに挑戦したいと思った方も多いはず。紙で精巧な作品を表現するペーパークラフトは、私たちの目を楽しませてくれることはもちろん、作る過程も魅力です。
今回は、そんなペーパークラフトを設計・制作されている紙乃製作所、ハルトさんへインタビュー。これまで艦船からマスコットキャラクターなど、手掛けられた作品やこれからペーパークラフトを始めたい方に揃えてほしいアイテムなどを紹介いただきました。
紙乃製作所:ハルトさん・プロフィール
ペーパークラフト作家 ハルト(Hiroaki Kawamura)
1968年生まれ 山口県出身・在住
山口大学を卒業後、山口県庁にて29年間勤務。(うち16年間は普及指導員として新規就農者や集落営農法人の経営支援などの業務に従事)
ネットで偶然出会った無料ダウンロードモデルに感動し、より簡単で楽しいものを作りたいとの想いから趣味でペーパークラフトの設計を始め、無償のアマチュア作家としての活動を経て2020年にプロ作家(紙乃製作所代表)に転向。
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【ペーパークラフトの可能性や役割を具現化したい】紙乃製作所・ハルトさんインタビュー
ー ホームページのプロフィールに「2006年よりペーパークラフトの活動を続けている」と記載されていますが、幼少時から工作などはお好きだったのでしょうか。
ハルトさん:両親から聞いた話によれば、3才の頃には紙とハサミで遊んでいたそうなのですが、自分自身では小学生の時に「紙工作ペーパークラフト入門」 という本と出会ったことが大きかったと思います。
その後中学生以降は工作から離れてしまいましたが、30代後半で長男を授かってからペーパークラフトを再開しました。育児のため、趣味を自宅でできることに切り替えようと考えたことがきっかけです。
ー 久しぶりに再開されたとのことですが、手先には自信があったのでしょうか。
ハルトさん:実を申しますと、私は模型を観るのは好きなのですが、細かな工作自体はあまり好きではありません。これが長い間離れていた理由でもあり、ペーパークラフトの設計もできるだけ組み立てやすさを優先しています。そこが作家としても、とても重要なところだと感じております。
ー 「当初は本業の傍らの趣味としてでしたが、現在は様々なご縁があってプロ作家となった」とありますが、プロ作家としての活動を始められたきっかけについてお聞かせください。
ハルトさん:特に契機となる劇的な出来事があったわけではありません。
確かに私にとってプロとしての起業(転職)は、それまでの安定した給与収入を捨てることであり人生の大きな決断ではありました。ただ、アマチュア時代も趣味としてペーパークラフトを設計しておりましたが、メーカーの商品・企業のノベルティ・雑誌の付録など、活動を続けていればさまざまなご縁も増えてくるものでして、50代となってからは体力的にも対外的にも、仕事との両立が難しくなってきたと感じたためです。
その後のコロナ渦というのは想定外ではありましたが、これはそれまでにペーパークラフトの知識や経験のほか、経済的な備えなども準備できていたからこそ決断できたことでもあり、私にとっては自然な流れかなと思っています。
紙は多くの人にとって身近な素材
ー ハルトさんはこれまでさまざまな作品を制作されていますが、特に印象的だった作品をご紹介いただけますでしょうか。
ハルトさん:ひとつ目はB-25爆撃機です。
これは飛行機と乗組員が紙で、空母はプラモデル(当時の職場の上司作)です。上司に頼まれ作りましたが、リアルなプラモデルとの組み合わせというのはプレッシャーで、汚し表現などの描画はそれまで使用していたソフトウェアでは難しく、趣味用としては高価と思いつつも「illustrator」を購入しました。これは偶然知っていて選んだソフトですが、作家業にとって必須のアイテムであるため、この作品がなければ今の私もなかったと思います。
私はその上司に誘われ模型サークル(下関模型クラブ巌流会)にも参加するようになり、モデラーの方々から沢山のアドバイスをいただいたり(未だにプラモデルは作れませんが)、いろいろな展示会に参加することで様々な方との出会いがありまして、こうしたご縁が重なり現在に至ります。
続いては、しもるん(2018年)ほか各種マスコットキャラです。
中央の水色のキャラが「しもるん」でして、所属サークル(巌流会)が毎年の展示会でお世話になっているショッピングモール「シーモール」さんのイメージキャラです(シーモールのホームページにて無料ダウンロード公開中)。
しもるんは、初めてのキャラものでしたので、いまでも強い印象があります(その他は、ホームページに掲載中又は近日中に掲載予定のキャラです)。
マスコットキャラは丸みのある輪郭線などペーパークラフトを設計するには難易度が高めでして、作家の個性が現れやすい題材だと思います。
3つ目は、東北姉妹ペーパークラフト(2022年)です。
これは最近発売されたペーパークラフト本で、東北応援キャラクターのデフォルメ版です。簡易な構造による可動や表情の差し替えなど、なかなか珍しいタイプのペーパークラフトフィギュアでして、それまでに設計した様々なキャラの経験やアイディアを詰め込んでおります。
実はキャラものに関してはホームページに掲載しているもの以外にも結構設計しておりまして、貯金箱タイプや可動タイプなどキャラクターの形状を活かした様々なご提案が可能です。
ー 飛行機からキャラクターものまで、幅広い作品を手掛けられているのですね!では、紙で表現することの魅力と難しさをそれぞれお聞かせください。
紙は多くの人にとって身近な素材ですし、組立ての道具も安価に揃えることができます。プラモデルほど精巧ではなくても、それ以上に手軽さという良さがあります。平面から立体に変化するまでの手作りの楽しさは体験しないと解らないですし、多くの人に体験していただきたいですね。
その反面、紙での表現が難しいのは、球体とガラスですね。球体は形状的に難しく、ガラスは色が無くその向こうにあるものか、又はガラスに反射した光が見えるため絵的な表現が難しいです。
ー これまで作成されたもので特に反響の大きかったものはありますか。
やはり護衛艦シリーズですね。ペーパークラフト専門メーカーのファセットさんから販売されていますが、特別編として雑誌の付録になった船もいくつかあります。特に「空母いぶき(※)」は私が設計したペーパークラフトが実写版の映画にも登場しておりまして、家族と映画を鑑賞した際には感動しました。
※写真中央
護衛艦等のシリーズは、自衛官の皆様にも喜んでいただいていると何度も伺ったことがあり、とても光栄に思っています。
お客様が喜ばれるものを作りたい
ー ハルトさんはホームページでも無料ダウンロードできるペーパークラフトを紹介されていますが、ペーパークラフト初心者が挑戦しやすいものがあればお聞かせください。
ハルトさん:初心者の方向けですとフィアット500のペーパークラフトがおすすめです。本体は部品1点のみです。背景も付属しておりますので、手軽に飾って楽しんでいただきたいです。
ー とてもかわいい作品ですね!ちなみに、ペーパークラフトを作るうえで便利なアイテムはありますか。
ハルトさん:ハサミ、カッター、カッターマット、書けないボールペンなど先の尖ったものと定規、ピンセット、接着剤(特に木工用ボンドの速乾タイプ)を揃えておけば、きれいに組み立てられるのではないかと思います。なお、書けないボールペンなど尖ったものは、折り線に折り目(折りスジ)を付けられますよ。
ほかには紙の断面の白色が目立つのを防ぐために、筆ペン(黒と薄墨兼用がおすすめ)があると良いでしょう。
ペーパークラフトが綺麗に組み立てられない原因としては、折り曲げを道具を使わずに行うことと、接着剤の水分を紙が吸ってふやけることが多いと思います。木工用ボンドの速乾タイプは水分含量が少なくふやけにくいです。
ー 接着剤のタイプも重要なのですね。
ハルトさん:そして、特に便利なのはピンセットで、小さな部分を折ったり、紙を丸めたり、接着時に押さえたりと大活躍です(詳しい使い方は私のホームページでも紹介しております)。
私もこれが無いと護衛艦や飛行機などの比較的細かいペーパークラフトの組立ては難しいです。逆に子供向けのペーパークラフトの場合は、ピンセットを使わずに組み立てられるかを試作時に検証しています。
100円ショップで購入できるため、いずれも高価な物をそろえる必要はありませんが、「有ると無いとでは大違い」です。欲を言えばハサミとピンセットは模型屋さんで購入された方が良い品が入手できると思います。
ー ペーパークラフトを作成するためには、プリンターと紙も欠かせません。こちらの選び方についても解説いただけますでしょうか。
ハルトさん:紙はコピー用紙などではなく、ペーパークラフトに適した紙(厚さ0.18~0.2mm程度のマット紙など)を選ぶと良いでしょう。
プリンターはそれぞれのご家庭で目的に合ったものを使われていると思いますので、プリンターに合った紙を選ぶようにしましょう。インクジェットは染料と顔料で紙の種類を選ぶ場合があります。
ちなみに私は最終的に印刷屋さんに入稿されるデータであっても試作の際にはプリンターを使うのですが、用紙として上質紙が指定されることが多いですし、A3用紙を用いることもあるので、HL-J6000CDW(ブラザー製)を使っております。上質紙に合った全色顔料インクを使うA3の大容量タンク搭載型としては安価で動作も速く重宝しており、指定される紙の種類によっては別のプリンターが適するため複数台を使い分けています。
ー 今後ペーパークラフトで作ってみたいものがあればお聞かせください。
ハルトさん:そうですね、自分が作りたいものを作るのではなく、お客様が喜ばれるものを作りたいというのが正直な気持ちでしょうか。
過去の事例ですと、AED・スマホスタンド・マスクなどのほか、私が知らなかったキャラクターなど企業や団体様からのご相談には私が思いつかなかったような用途や題材も多くありまして、ご相談内容に驚いたり、寄せられたご意見に喜んだりということが何よりも力になります。お客様と一緒に様々なペーパークラフトの可能性や役割を具現化し、普及することができたらと思っております。
これからも皆様の「推し」を紙という身近な素材で形にする作家として活動してまいりますので、どうぞよろしくお願いいたします(もちろん独自の無料ダウンロードも頑張りますので、紙乃製作所のホームページもぜひご覧ください)。
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取材を終えて
精巧なものから、お子さまも作ることができそうなかわいらしいものまで、幅広い作品を設計、製作されてきたハルトさん。今後も、どんな作品が生み出されるのか非常に楽しみです。
また、「推し」を紙で表すという表現も非常に印象的なインタビューとなりました。「これを作ってほしい!」というイメージがある方は、ぜひホームページを拝見してみてはいかがでしょうか。
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