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【取材レポート後編】ペーパークラフター歓喜!「紙で作る鉄道ジオラマ」、こだわりの世界観を聞いてみた
取材レポート前編では、「紙で作る鉄道ジオラマ」の監修を担当いただいた津川洋行の工場を見学し、鉄道模型が出来るまでと、津川洋行の模型の強みをうかがいました。
後編のこのレポートでは、「紙でつくる鉄道模型ジオラマ」自体にスポットを当てます。今回制作を依頼したブラザー販売株式会社の山本同席のもと、監修を担当した津川洋行の三枝さん、ペーパークラフトの制作を手掛けたW2STUDIOの亘理さんに、座談会形式でジオラマにかける想いを聞いてみました。そこには、尋常ではない熱い想いが込められていたのです。
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株式会社 津川洋行 マネージャー 三枝 朝彦さん:
主に鉄道模型部門を担当。津川洋行を最も知る人物。
実家が模型店だったこともあり幼少期より模型全般楽しむ。
W2Studio 亘理 知之さん:
イラスト・ペーパークラフトのクリエーター。自動車,バイクなどの乗り物全般イラスト・ペーパークラフトを得意とされており、現在、隔月出版の「オートメカニック」の表紙画・付録でも活躍中。過去にもブラザー販売のペーパークラフト企画を担当。
ブラザー販売株式会社 マーケティング推進部 山本 宗平:
デジタルマーケティングを担当。
自身も模型をこよなく愛し、今回の企画では三枝氏とともに、ユーザー目線での制作指示を行った。
人の営みを感じられる、ノスタルジックな世界観の演出
▲株式会社津川洋行の三枝さん。
―よろしくお願いします。早速ですが、今回の「紙で作る鉄道模型」の監修者である三枝さんにお伺いしたいのですが、特にこだわって監修した点はどこでしょうか。
津川洋行 三枝さん(以下、三枝さん):昭和30〜40年代の、ちょっといい加減な街がぎゅっと凝縮されて再現できたところだね。あと、雨に打たれたり、日焼けしたりした経年変化によるリアルな「汚し」も入れてもらいました。もちろん、屋根には陰影も表現しています。実際のデザインは、亘理さんに引き継いでやってもらいました。
W2 STUDIO亘理さん(以下、亘理さん):そう、生活感が現れるよう、わざと「汚し」を施した。紙だからこそ、プラスチックだけでは表現できない、そこに営みがあるような、温かみの演出に力を入れたんです。
▲鉄道ジオラマの駅前倉庫。ノスタルジックな演出に欠かせない「汚し」が入っている
―こ、細かい! 確かに、看板が少し薄汚れているのがわかります。古き良き昭和の懐かしさを感じますね。
ブラザー販売 山本(以下、山本):今回の鉄道模型ジオラマの企画を考えるにあたり、制作の協力をしてくださる企業を探していたのですが、津川洋行さんが本当にぴったりで。普段から「昭和30〜40年代」をテーマに鉄道模型を制作されていることもあり、小さく世界観をまとめることを得意とされているんですよね。また、細やかな演出を最後までこだわってくれる、亘理さんの力も合わせて、こだわりの詰まった超精密ペーパークラフトが出来上がりました。
他の製造メーカーさんとのコラボでは、ここまでのこだわりは出しきれなかったかもしれません。
▲左から、ブラザー販売株式会社の山本、W2STUDIOの亘理さん。
―津川洋行さんならではの強みがあったから、ここまで世界観を作り上げることができた、と。
三枝さん:うちでは、商品設計から金型づくり、パーツづくり、組み立て、パッケージまで、全部一貫して製造している。今回のように「心に訴えかける、人の営みやその光景」を小さい世界にまとめて、ひとつの情景を作り出すようなものって、大手メーカーでは採算が合わなくてなかなか作れるものじゃないんですけど、うちの会社はやる。他社がやらない、世の中にない物を作れることが、津川洋行の強みです。
―なるほど、すべての製造工程を津川洋行さんで担っているからこそ、ここまで細やかなこだわりを演出できるということですね…! そして、その着眼点が、今回の作品にもいきている、と。ここに集まっているお三方は、今回の鉄道模型ジオラマを作る上で最強の布陣というわけですね。
細部に神が宿る!? 知られざる、鉄道ジオラマの裏設定
▲「紙で作る鉄道模型」の全体図。津川洋行で販売されている、人や架線、木が入ったバージョン
―ペーパークラフト化した亘理さんならではのこだわりポイントはありますか?
亘理さん:そこんなことを言うのも何ですが、小さい建物を作るって、意外と大変で……。私は、たまたま窓や壁などの建築の規格を知っていたので、まずはサイズを縮小してアレンジした後に、組み立てたときの見栄えを見ながら、ミリ単位で調整しました。
なので、胸を張って言えるのは、「実物の家と比べて、おかしくない寸法だ」ということですね。自分の家のドアをわざわざ測りに行くこともありました。
▲こだわりポイントを解説する亘理さん
―なるべく現実と同じ寸法で、でも作品としておかしくないように、バランスを取りながら調整されたと言うことですか……!
▲ペーパークラフト職人・亘理さんのメモ帳の一部。建物の内部の様子まで細かく設定している
亘理さん:そうです。しかも、たとえば先ほどの倉庫ひとつとっても、中の設計まで全部考えました。倉庫は三階建の設定で、中には事務所の場所や社長の席、階段の位置まで全部設計済みなんです。
三枝さん・山本:そこまで細かい設定をされていたんですね(笑)。
亘理さん:とにかく自分がわくわくする町を作ろうと思って(笑)。食堂は、カウンターがちらっと見えるような構造にしてあります。
―お話を聞いていて、皆さんが楽しそうに語っているので、私までわくわくしてきました。細部まで緻密に設定されたからこそ、ここまでの完成度の高さに至ったのですね。
【急遽開催!?フォトコンテスト】みんなのお気に入りアングルを聞いてみた!
こだわりがたっぷり詰まった作品だということが、とてもよく伝わってきたのではないでしょうか。ここで取材の内容は撮影時のアングルの話に及び、フォトコンテスト形式でそれぞれの好きなアングルをお伺いしてみました。
■三枝さん:やっぱり、全体含めての風景
三枝さん:一つひとつのパーツが組み合わさって、ひとつの情景が演出されているところに一番感動するね。まるでこの中に自分がいるような、そんなリアリティのある錯覚を起こす雰囲気がとても好きです。
人の模型がないと、また違って見えるかもしれない。人がいるからリズム感が生まれて、より街としていきいきと見えるんでしょうね。
※人や木、架線などはすべて津川洋行さんのホームページ(外部サイトへリンクします)から購入することができます
■亘理さん:「駅近タクシー」から繰り広げられる世界
三枝さん:私は車が好きなので、タクシーのある風景が好きですね。小学校のとき、よく近くを通ったタクシー会社に似てるんです。
今回のペーパークラフトでは、頭の中にある懐かしさをすべて表現しています。倉庫は昔アルバイトしていたところを真似していますし、食べ物屋さんもきっとどこかで行ったことがあるお店なんですよね。
■山本:建物が凝縮しているところ
山本:街に人がいることで、暮らしている人の物語を感じるんですよね。活気のある街があって、その中で鉄道が人の営みに必要な役割を果たしている。街並みの中のひとつのパーツとして鉄道がある、このバランスがとても好みです。
また今回、ジオラマの中を鉄道模型が走る様子を動画にてお届けします!3人のこだわりポイントが随所にみられる動画です。
【番外編】ペーパークラフトを組み立てるのに、あったら便利な5つの道具!
▲左から順に、ピンセット、デザインナイフ、カッター。亘理さんの愛用品。
―とはいえ、完成度が高すぎて、本当に上級者向けの作りですよね……。切り抜いたり、組み立てるのに、何か特殊な道具が必要だったりしますか?
亘理さん:いえ、ピンセットとデザインナイフ、カッターと、加えて木工用ボンド、定規があれば十分です。今回の作品は細かいので、はさみだと厳しいかもしれませんね。
接着剤として木工用ボンドを使っているのは、速乾性があるからです。5秒、ピンセットでじっと掴んだら、しっかり接着してくれます。
―超精密ペーパークラフト、ですもんね……! 切り取るのも、ボンドを塗るのもそれぞれ一苦労しそうです。
亘理さん:切り取るときは、カッターでそのまま切ろうとせず、定規を当てて、2、3回に分けて切り込んでいくといいですよ。また、切り取った後、カッターの背で折るところに跡をつけてあげると、綺麗に折り曲がるようになります。
また、糊付けするときは、あらかじめいらない紙やメモ用紙などにボンドを出しておいて、粘土のヘラか、もしくは割り箸の先端部分をヘラのように加工した部分にのりをのせて薄く伸ばしましょう。
―なるほど、割り箸ですか! 長方形になっているから、のりを丁寧に伸ばせるのですね。
【ペーパークラフト職人直伝!超精密ペーパークラフトを作るのに必要なものとコツ】
・ピンセット
・デザインナイフ
・カッター
・定規
・木工用ボンド
●切り取りのコツ:定規を当てて、2、3回に分けて、カッターで切る
●組み立てのコツ:カッターの裏で跡をつけると、綺麗に折り曲げられる
●糊付けのコツ:木工用ボンドをいらない紙などに出して、粘土のヘラもしくは割り箸などですくい、薄く伸ばしながら糊付けする
亘理さん:ちなみに、今回のペーパークラフトは全部ブラザー販売さんのスキャンカットというカッティングマシンに完全対応しています。スキャンカットを使うには、全ての記号や文章を枠で囲っておかないと、不具合が起きてしまうことがあるんです。そこで、「本体」や「オプション」といった単語も、全て枠で囲ったデザインになっています。
スキャンカットがあれば、超精密ペーパークラフトだろうと、切り取りの心配はありません。組み立ては大変ですけどね(笑)。
―根気がいる作業には違いない、ということですね。建物ひとつ組み立てるのでも、達成感がありそうです。私もまずはひとつ、チャレンジしてみたいと思います!
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鉄道ジオラマは、みんなのこだわりが強く込められた、愛されペーパークラフトだった!
「好き」に勝る情熱はない、ということをとても感じた座談会でした。気になった方はぜひ、こだわりポイントを振り返りながら、鉄道ジオラマの組み立てに挑戦してみてください。そのときは、亘理さんオススメの道具を全て揃えると、きっと楽しく組み立てられますよ。
今回印象的だったのは、皆さん本当に楽しそうにお話されていたことです。実は、もう第2弾の超精密ペーパークラフトに着手されているそうですので、ぜひ楽しみにしてみてください。