ブラザー販売(株)新社屋のオフィス改革
ブラザー販売(株)新社屋のオフィス改革
倉庫と執務エリアの整理整頓の実践的なノウハウを、整理収納アドバイザーの西口理恵子さんに教えていただきました。対象は、2018年にリニューアルしたブラザー販売(株)の新社屋です。整理整頓の必要性と、実際に整理整頓に入る前の準備について、以下に西口さんのお話をご紹介します。
目次
【この記事を書いた人】
整理収納アドバイザー 西口理恵子
株式会社インテリアR 代表取締役
前職は新築マンション営業・企画。整理収納・インテリア・美を総合した【美人収納®】考案者。全国の住宅・オフィスで直接指導している。セミナー・講演の受講者は延べ18,000人超(2020年6月現在)。著書に「ずっと美しく暮らす シンプル収納の家づくり」その他多数。
https://interior-r.com/ (「株式会社インテリアR」のサイトへリンクします。)
整理整頓の必要性
私が引っ越して間もないブラザー販売(株)をお訪ねした際、こちらの倉庫は、各商品の担当者が自分に関係する商品を好きなように置いていて、どこに何があるのかわかりにくい状態でした。一度整理して収納の仕組みを作れば、その後の整頓・片付けは各段に楽になります。たとえ一人あたりの探す時間が5分でも、職場全体・年間では多大な時間ロスとなります。迷わず見つけるには、人の動作・動線に合わせてモノの定位置を決め、ラベルで表示することが必須です。ラベリングをすると、モノは正しい位置に返ってくるというのが私の持論です。
整理整頓の目的と目標
活動の最初には、整理整頓をすることでどうなりたいのか、整理整頓の目的を明確にして、整理整頓に関係する人の間で共通認識にしましょう。何のために整理整頓をするのか?整理整頓によって自分たちはどんなメリットを得られるのか?皆が心から整理整頓が必要だと思うことができれば、きれいな状態の維持もしやすいでしょう。その認識を合わせた上で、いつまでに、どの場所を、どのような状態にするか、今回の整理整頓についての具体的な目標を立てます。「何歩、何秒で営業セットを持ち出せるか」など数値を入れ、ゴールを設定しましょう。
収納計画を立てる
目的と目標が決まったら、次は収納計画です。実際にモノを収納する前に、図面を使って収納計画を立てます。はじめは中分類・小分類レベルまで細かく決める必要はなく、下のような大分類で計画してみましょう。
作成した見取り図は、収納が完了した際に棚や壁等に貼っておくと、社員全員が移動したモノの場所をすぐに確認することができます。
収納計画ワンポイント - 仮置きされるモノにもスペースを確保する
一時的に大量発生したゴミ、販促イベントの商品など、その時だけ仮置きされるモノ についても、オフィスレイアウト計画時にスペースを確保しましょう。そのためにも、予め余裕のある収納計画にする必要があります。
ブラザー販売の場合、整理整頓を開始した時にはすでにレイアウトが決まってしまっており、フロアに入ってすぐ、一番目につくところに仮置き段ボールがある状態になってしまいました。こうなってはきれいなオフィスも台無し!です。
間違って置きっぱなしにならないように、床にテープでエリアを貼っておき、「一時的予備エリア」とラベリングすることで、廊下等にはみ出さずに済みます。
収納計画ワンポイント - 捨てる基準を決める
整理整頓が始まると、捨てるべきか迷う場面が必ず出てきます。古い機種はいつまで残しておくか?同じ種類のものは何個まで所持しておくか?個人の考えで捨てる基準を決められることは稀です。部内で話し合い、会社として捨てる基準を決め、予め棚に明記しておくと、新入社員も迷わずに処分することができるようになります。整理整頓すると「探す」「迷う」時間が減ります。この2つの時間が減るように、ルールを決めることが大切です。
収納計画ワンポイント- 通行スペースの確保
荷物なしで1人が通行する場合、最低で45cm幅は必要です。荷物を持って1人が通行する場合は幅60cm必要です。つまり、倉庫の通路は最低60cmは開ける必要があります。写真のように、60cmの紐を持ち歩いてみて、確保できていない場所を赤ペンでチェックしてみてください。
「使用頻度」と「動作・動線」を考えて収納する
「使用頻度」は5段階。【使用頻度1】毎日使うモノ【使用頻度2】2~3日に一回使うモノ【使用頻度3】週に1度使うモノ【使用頻度4】月に一度使うモノ【使用頻度5】年に一度使うモノ です。使用頻度が高い順に、取りやすい位置に置きましょう。
左側のカタログは使用頻度【2】【3】でよく使い、右側の黒ボックスに入ったヘルメットは使用頻度【5】でめったに使わない。しかし、左側のカタログ前にはデスクがあり、カタログを取り出す際に邪魔になる。この場合は、黒ボックスとカタログの位置を交換します。
重さ・頻度で置く高さを決める
重いものが上にあると危険です。重いものは下段、軽いものは上段に移動しましょう。
頻度が高いものが中段。腰~目線の範囲が最も使いやすいです。
並べ方
検索しやすい方法で並べるのがベストですが、もし並べ方で迷ったら、使用頻度の高いモノを入口に近い側にします。また右利きの人が多いので、向かって右側に置くのもおすすめです。
前面を揃える
奥行きの深い棚では小さいモノが取り出しにくいため、モノが奥に行かないように、奥行きの深い棚は奥側に空箱などを入れて、手前にモノが来るように工夫します。また、手前に一時的にモノを置けないようにすることで、乱れを防ぐ効果もあります。見た目も前面が揃っているとすっきり見えます。飛び出すモノがあれば、ほかのモノもそれに合わせます。
紙ボックスのラベルは重ね貼り
紙でできたボックスは一度タイトルを書いたり貼ったりするとやり直しがききません。ボックスに幅広のラベルを貼り、その上から表示ラベルを貼ると後からでも剥がせるのでお勧めです。
ラベルは4方向に付ける
箱の片面にしかラベルが貼られていないと、しまう向きによってラベルが見えなくなってしまいます。ラベルは4方向付けると、箱のしまう向きが変わっても大丈夫です。
入っている個数をラベルにする
非常持ち出し袋は人数分必要です。棚の扉にラベルで入っている個数を表示しましょう。人が増えて補充した際にも、対応済みか否かすぐ確認ができるようになります。また1年に一度の見直し時期を決め(閑散期の〇月の〇週目など)、扉と共有スケジュールに明記します。
当たり前のところにもラベルを貼る
誰でもわかっていると思うところもラベルを貼りましょう。人の入れ替わりがあるためです。また、あいまいなところを残すと、そこに関係ないものが置かれてしまい、全体の秩序が崩れ出します。
P-touchならではのラベル活用法
ピータッチのラベルは、裏紙を半分残せるので、インデックスとして使うことができます。
その際、↓を入れると手前側に入れることがわかり便利です。(ブラザー:剥離紙の剥がれ等、接着面の露出による想定外の貼り付きにご注意ください)
発注札で在庫管理を効率化する
在庫の過多・不足を防ぐため、名刺サイズの発注札を用意し、在庫の箱に入れておきます。
残り少なくなったら発注札を庶務さんへ渡すとともに、在庫の箱にマグネットの【発注中】ラベルでステータスを表示すると重複発注が防げます。
最後に、整理整頓された状態をキープするためのポイントを2つお伝えします。
整理整頓文化
収納システムは、使っている人に合わせて見直していくべきものです。大規模に見直した場合、しばらくは3か月ごと、1年後ごとに見直しが必要です。その後は、3年、5年といったタイミングで見直しを行うとよいでしょう。これくらい長期的に実施することで、初めて企業に文化として根付きます。
収納システム見直し方法
不快・不満・不便を感じたら収納を見直すべきです。倉庫の入り口に図面を貼り、不満点をポストイットで貼ってもらうなど、意見収集する仕組みを用意しておくとよいです。
皆さまの快適な職場づくりにお役に立ちましたら幸いです。