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【IT’S SO EASY】名古屋「ホリエビル」のオーナーが語るフリーペーパーの魅力
「フリーペーパー」と言うと、駅やコンビニで見かける情報誌を思い浮かべる方も多いはず。
しかし、実は全国各地でさまざまなフリーペーパーが発行されており、発行者も内容も多種多様。
書店で売られている書籍や雑誌にも決して劣らない、素晴らしいフリーペーパーがたくさんあります。
今回は、そんなフリーペーパーが集まる数少ないスポットのひとつ、名古屋「ホリエビル」のオーナー・堀江浩彰さんにお話を伺いました。
堀江さんは、ホリエビル内にあるフリーペーパー専門書店「オンリーフリーペーパー」の店主でもあり、さらには全国の”屋上”の風景を発信するフリーペーパー『屋上とそらfree』の編集長でもあります。
フリーペーパーの魅力とは何なのか、そしてそのカルチャーを伝える活動をしている堀江さんの想いとは。早速、フリーペーパーの世界を覗いてみましょう。
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今回ご協力いただいた方
堀江浩彰(ほりえひろあき)さん
プロフィール:
名古屋駅西「ホリエビル」オーナー/ONLY FREE PAPER 名古屋店主/フリーペーパー『屋上とそらfree』編集長・屋上写真家/有限会社RADICAL プロデューサー。
堀江浩彰さんのTwitterはこちら
ホリエビル 公式HPはこちら
オンリーフリーペーパー 公式HPはこちら
屋上とそらfree 公式HPはこちら
(*外部サイトへリンクします)
デザイナーとして”ホームラン”が打てない……。フリーペーパーを自分の代表作に
― はじめに、堀江さんがフリーペーパー『屋上とそらfree』を創刊するに至った経緯を教えてください。
堀江さん:
元を正せば、高校時代から本や雑誌といった紙ものに興味があり、そのなかでも特に好きなのがフリーペーパーでした。
当時はマガジンハウスの『relax』やクラブキングの『DICTIONARY』などのフリーペーパーを読んでいました。
高校卒業後はデザインの専門学校に進学し、決して真面目な生徒ではなかったものの、その頃にはもうフリーペーパーを作り始めていましたね。
その後はデザイン会社に就職し、ハードに働きながらも、時間を捻出して自分の作りたいものを作るという日々を送っていました。
ですが、20代後半になると、自分はこの仕事に向いていないのではないかと思い始めたんです。
平均点以上は確実に取れていたと思いますが、同年代のデザイナーたちのような優れたデザインを生み出せる気がしない、”ホームラン”が打てないと感じました。
― 周囲と自分を比べて劣等感を抱いたのですね。そう感じるようになったきっかけとして、「依頼される仕事」と「自分がやりたいこと」の間で、葛藤などもあったのでしょうか?
堀江さん:
クライアントワークはお客さんありきですから、自分の作品と思えないことも当然ゼロではありませんでした。
たとえそれが賞をもらったとしても、自信を持てないことも…。
実際、30歳を過ぎる頃には仕事依頼が増え、それなりの評価をもらうことも多くなりましたが、その一方で仕事が順調に進めば進むほど、自分は”ホームランバッターではない”ということを思い知らずにはいられませんでした。
自分には、胸を張って「代表作」と言えるような作品がない……。
そこで作ったのが『屋上とそらfree』というフリーペーパーです。
▲『屋上とそらfree』のバックナンバー。33号まで発行(2018年12月時点)
― 『屋上とそらfree』を作ったことで、どんな変化がありましたか?
堀江さん:
2010年3月に創刊準備号(0号)、4月に創刊号を発行し、隔月発行しながら徐々に置いてもらえる場所を増やしていったのですが、1年後くらいに大きな転機がありました。
大手食品メーカーから、新商品プロモーションでタイアップするというお話をいただいたんです。
嬉しい反面、『屋上とそらfree』は屋上のことしか書いていないので、プロモーションの役に立っているか不安でした。
でも、広報の方にその話をしたところ、「『屋上とそらfree』を見て素敵だと思ったので、ぜひお願いします」と言ってもらえて。
代表作がないと感じていた自分にとっては、それがかなり衝撃的でしたね。
それを機に、ご依頼いただく仕事も増えましたし、自分の作品にも自信が持てるようになっていきました。
『屋上とそらfree』はさまざまな人や仕事・活動につながっていき、本当に自分の名刺代わりと言える重要な作品となったんです。
「IT’S SO EASY」ホリエビルに込めた想い
▲入口のガラス戸に刻まれたホリエビルの名称と「IT’S SO EASY」の文字
― 堀江さんはホリエビルのオーナーとしても活動されています。ホリエビルは2018年9月にリニューアルオープンしたばかりですが、どのような想いで立ち上げたのでしょうか?
堀江さん:
この建物はもともと実家の家業で使っていて、自分は長男ということもあり、相続について考える必要がありました。
そういった背景と、「この街で何かおもしろいことをしたい」という気持ちが重なり合った結果がホリエビルです。
ホリエビルのある名古屋の駅西は、かつての遊郭街や戦後の闇市などから発展してきました。
整然と開発された駅の東側とは異なる、独特なカラーを持つ街です。そして現在は、リニア開通に向けて刻一刻と変化しています。
自分はこの街で育ち、東京で活動して帰ってきて、よりこの街並みやカルチャーに愛着感を持つようになりました。
そんな駅西が変わりゆく様子をただぼーっと眺めているだけではなく、約50年建っているこの場所からまた街を見続け、駅西らしい文化を発信できる場所のひとつにできれば、という想いでホリエビルのリニューアルを決心しました。
― ホリエビルをどんな場所にしたいと考えていますか?
堀江さん:
文化の発信所と言っても、何かを発信するのはあくまでもホリエビルを利用する人たちなので、敷居が高くなく、誰でもフレキシブルに使える場所でありたいと考えています。
というのも、東京では若くても軽やかに力強く物事を実行する人がたくさんいますが、名古屋ではフリーペーパーや個展など、やりたいことがあっても、何かしらの理由で結局やらず終いという場面が多いと感じていました。
ホリエビルは、そういった一歩を踏み出せずにいる人たちや、これまでの活動を通して知り合ったおもしろい人たちと、気軽にやりたいことができる場所にしたいんです。
そんなメッセージを込めて、ホリエビルは「IT’S SO EASY」をコンセプトとして掲げています。
作り手と読み手をつなげるために。フリーペーパーの魅力とは?
― ホリエビルの1階にはフリーペーパー専門書店「オンリーフリーペーパー 名古屋」があり、堀江さんはその店主を務めていますが、その活動をするに至った経緯は?
堀江さん:
フリーペーパーは、作っても置いてもらえる場所が少ないですし、読みたくても書店のように揃っている場所がありません。
フリーペーパー好きでもあり、発行者でもある身としては、そういった状況に課題を感じていました。
そんなことを考えながらも、『屋上とそらfree』の創刊から数ヶ月が経った頃、東京で開業準備をしていたオンリーフリーペーパーから声をかけてもらいました。
ちょうど自分はオンリーフリーペーパーと同じような構想を持っていましたから、『屋上とそらfree』を置かせてもらうと同時に、その活動も応援するようになったんです。
― そして、ホリエビルの立ち上げに際してオンリーフリーペーパーの名古屋店を出店したわけですね。フリーペーパーの数や種類はどうなっていますか?
堀江さん:
『屋上とそらfree』のバックナンバーを除くと、現在は100誌ほどのフリーペーパーが置かれています。
フリーペーパーと言うと情報誌やクーポン誌などのイメージを持っている方も多いと思いますが、ここに置いてあるのはカルチャー誌やZINE、地域紙など、読み物として楽しめる個性豊かなフリーペーパーです。
企業発行のものもありますし、個人で作られているものもたくさんあります。
最初は東京店とほぼ同じラインナップでしたが、徐々に愛知や三重など東海地域の発行者さんからの持ち込みも増えており、地域性が出るようになってきています。
▲店内にはさまざまなフリーペーパーが並ぶ
― 今後、ホリエビルではどのような活動を行っていきたいと考えていますか?
フリーペーパーのワークショップをやりたいと思っています。
フリーペーパーは作り方や体裁が決まっているわけではありませんし、PCが使えなければ作れないというものでもありません。
手書きの紙をプリンターでコピーして手折りするだけでも、読み物としておもしろいものはおもしろいんです。
決してハードルが高いものではないので、フリーペーパーは個人でも作れるということを、ひとりでも多くの方に感じてもらいたいですね。
良いものができたら、そのままオンリーフリーペーパーに置いたり、ギャラリーに展示したり、と連携することも検討しています。
それ以外では、まもなく完成するビル前の小屋での個展やチャレンジショップ、日本酒とあんこが好きなので「あんこバー」などのイベントも考えています(笑)。
▲オリジナルグッズの販売も。奥には「喫茶River」が併設されている
― 最後に、堀江さんが考えるフリーペーパーの魅力とは何でしょうか?
フリーペーパーには、紙ものならではの喜びやおもしろさがあります。
Webのデザインはいつもほぼイメージ通りの仕上がりになりますが、印刷物は入稿して出来上がるものが少し違った雰囲気になることもありますし、完成するまでのドキドキ感や、発送されてきた箱を開けるときの紙とインクのにおい、すべての作業を終えたときの達成感が味わえるんですよ。
最近ではWebやSNSで必要な情報・話題の情報だけを簡単に入手できますが、喫茶店が目的で入ったはずが隣に置いてあるフリーペーパーが気になって手を伸ばす、というような経験は、物が存在する紙媒体だからこそ起こりうるものです。
そういった新しい発見が生まれるのも、興味深いところです。
家にあるものだけで作れる、というのもフリーペーパーの良さのひとつでしょうね。
現に個人で手作りされている方もいますし、内容も自分の好きなものを題材にすればいいんです。
定期発行や人気作を生むのは大変かもしれませんが、やってみようという気持ちさえあればフリーペーパーを作ることは難しくありません。
そして何より“free”というところに惹かれますね。自分自身、作品に自信が持てないという状況を乗り越えて自由を得るきっかけを作ったのがフリーペーパーでしたし、やはり好きなものを自由に作れるというのが良いところだと思います。
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知る人ぞ知る、フリーペーパーの世界へ
インターネットや電子書籍が普及した今、紙媒体に触れる機会は貴重なもの。
そういった状況のなか、フリーペーパーは独自の文化を築いています。
フリーペーパーはフリーで楽しめるのもやはり嬉しいところ。
これまでフリーペーパーを読んことがないという方は、一度手に取ってみてはいかがでしょうか。
さまざまな人たちが想いを込めて作ったフリーペーパーを読んでみれば、きっとその世界観に引き込まれることでしょう。
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