布地を接ぎ合わせて新しい命を吹き込むキルトの心は、創造的で温かく、資源を大切にする心、物を大切にする心です。
キルトはそれ自体が環境を意識したモノと言っても過言ではないのでは?
いつまでも楽しく暮らせる美しい地球を育んでいくために、キルトを通じて共に考えていきたいと思います。
テーマ:「私の好きなモノ」
今回も日本全国から独創的でアイデア溢れるたくさんの作品が集まりました
ご応募頂きました皆様へは厚く御礼申し上げます。
ここに各賞とご応募頂いた作品(一部は非掲載)を紹介させて頂きます
※メッセージはブラザー大賞、優秀賞、入賞のみに記載しております。
杉野服飾大学 准教授 水越綾
まずは、絵画のように全体を眺め楽しみ、その後画面に顔を近づけてディテールを眺めてゆくと、それまでは気づかなかった繊細なテクニックや装飾に目を奪われる…。70㎝四方の空間の中に、“好き”と"思い"がぎゅっと込められていて、キルトの世界の奥深さに感嘆しながら、一つ一つの作品の世界を楽しませて頂きました。繊細なステッチや、布の組み合わせ、技術や感性だけではなく、個々の作品の表現力は素晴らしいものばかりで、今回も難しい審査でした。
東京モード学園 教務部主任 市川恵己
皆さまが自分の好きな物、趣味などを大好きな生地やキルトで表現していることが自由な発想に繋がるのだと再認識致しました。今回は比較的シンプルにセンス良く題材を表現する作品が気になりました。着物地や浴衣地など使用しサスティナブルな考えがより感じられる作品も注目しました。デジタルやAIなど短時間で考えを表現できる時代の中で、1針、1針とコツコツと縫っていくことの暖かさにジーンとする作品を審査させていただきありがとうございました。
日本ヴォーグ社 キルトジャパン編集部 編集長 寺島暢子
第24回ブラザーキルトコンテストは作者のテーマを追求し、ミシンキルトで上手く表現した作品が数多くありました。お父様のかぞえうたを刺しゅうした作品、自分のすむ町、趣味を表現したものなどそれぞれの思いをテーマにあったテクニックで上手く表現している所に感心しました。一番高得点をつけさせていただいたのはパリの花屋さんを描いた作品です。細かい部分のテクニックと限られたスペースでテーマを表現された力量は素晴らしく、まるで本当にその場にいるような気持ちになりました。
ブティック社 パッチワーク教室編集部 編集長 関口尚美
「私はこれを描きたい!」という作者の意気込みが伝わる作品が多く、作付けから美味しく食べるところまでを描いたじゃがいものキルトをはじめ、テーマに合わせたいろいろな素材を駆使した「Sora に らくがき かきたいな」や「真夏の水中花」が印象的でした。キルティングも多彩で、模様を浮き出したり、モチーフに表情を与えたり、キルティングだけで緻密な絵柄を描いたりと、あらためてテクニックの高さを感じました。
文化服装学院 教授 大工原睦
今回もキルトの美しさ、楽しさ、表現の多彩さ、完成度の高さに圧倒されながら、審査させていただきました。作者それぞれの好きなモノへの情熱が様々なテクニックで表現されており、見ていてワクワク、こちらも楽しい気分になりました。緻密なテクニックや表現の中に見える大胆さ、繊細な色のグラデーションは美しく、ミシンステッチでの表現のさらなる可能性を感じ、多様な表現と技術、それに対する熱意と努力に感動いたしました。
可憐な白梅の花に似た梅花藻(ばいかも)は清流に咲く水中花。水の中で流れに沿って下流へとたなびき、満開には水面から出て純白の姿を見せてくれます。「流れ」を表現するのは難しく、オーガンジーの力を借り、たゆとう葉と茎は糸やコードを使いました。真夏には川岸の百日紅(さるすべり)の鮮やかなピンクが競い咲きます。
スケッチのようなキルティングをしたくてチャレンジしている作品の一つです。グレーの生地に紫色系の糸を6種使用。糸で濃淡を表現しました。
絵の原点と云われる鳥獣戯画のワンシーンを沈殿藍とイカ墨(浮世絵版画の刷り顔料)を混ぜドローイングしました。着ることが少なくなった着物地をベースに、ミシンアップリケと刺しゅうを加え現代風にアレンジしました。古典美を次の世代の人達に伝承したいと思います。
好きなフェザーで花びらを飾りました。フェザーの周りをフリーモーションでつぶすのに苦労しました。花の周りで葉っぱがゆれ動き、踊っている雰囲気を出しました。
緑もお花もいっぱいの気持ちの良い日に、世界中の小鳥さんが食べても食べきれないリンゴの木、吠えても驚かないブルドッグ、汽車を繋いでも足りない橋。「Sora にいっぱいらくがきかきたいな」を歌いながら、みんなが笑顔になれるキルトにしました。
ミシンキルトが好き!糸で色をどんどん足していけるところが楽しい。難点は糸を買いすぎることです。
細かいことなどに目もくれず、自由きままな猫たち。浮世離れしたその様子を作品にしました。可愛さを表現するためアップリケ・フリーモーションなど様々なテクニックを駆使しています。
ここ数年、街角の風景をキルトにしています。カフェ・紅茶屋・帽子屋などを好きな店先を作ってきました。今回も大好きな花屋。街に溶け込む店先です。駅そばのキオスクで新聞といっしょに花を買うパリの景色です。