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身の回りのアイテムをさりげなく彩る、文字刺しゅうの魅力。クロヤギシロヤギ・千葉美波子さんインタビュー
アルファベットとイラストを組み合わせた文字刺しゅうを主に制作している、刺しゅう家の千葉美波子さん。
刺しゅうはほとんど未経験、というところから刺しゅう家としてのキャリアをスタートさせ、アルファベットと動物や食べ物などのモチーフ・デザインを組み合わせた文字刺しゅうをこれまでに50以上制作してきました。
今回は、千葉さんのデザインした動物アルファベットが刺しゅうデータダウンロードサービス「HeartStitches(ハートステッチズ)」で発売されるのを記念して、文字刺しゅうの魅力やソーイング初心者におすすめのアレンジ方法をお伺いしました。
千葉美波子さん
刺しゅう家。一般企業に勤めたのち、26歳でものづくりの道へ。はじめは、封筒やポストカードといった紙もののデザインがメインだったが、営業先に提げていった刺しゅう入りのかばんがきっかけとなり、刺しゅう家として活動を始める。現在は、クロヤギシロヤギの代表として、刺しゅうのデザイン・作品制作の他、教室やイベントで講師も務める。趣味は、読書と手紙を書くこと。
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イニシャルにもメッセージにも使える汎用性の高さが、アルファベットの良いところ
―まずは、千葉さんが刺しゅうの中でもアルファベットの文字刺しゅうをメインに制作されている理由を教えてください。
千葉さん:アルファベットは形がすっきりしていて、いろんなモチーフのデザインと組み合わせやすいからです。昔から「アルファベットブック」(注1)が好きで集めていましたし、文字の一つ一つに意味があるのがおもしろいな、と思っています。
イニシャルにもメッセージにも使えて、他の文字よりも汎用性が高いのが良いですよね。
注1:アルファベット26文字それぞれを頭文字とする計26の単語を1ページに1つずつ入れて構成された本のこと。エドワード・ゴーリーの『ギャシュリークラムのちびっ子たち』が有名。
▲千葉さんがデザインした「秋」をテーマにした図案。
―刺しゅうをデザインする上でこだわっていることはなんですか?
千葉さん:デザインの際に大切にしているのは、一般的に刺しゅうに使われるイメージのない、ちょっと変わっているモチーフも取り入れていること。
たとえば、妖怪や毒のある生き物など、少しシュールなデザインも取り入れています。
―たしかに千葉さんの作品には、少し変わったデザインのものもありますね。愛くるしいイメージのある動物のほかに、そのようなシュールなデザインを手がけられているのはどうしてですか?
千葉さん:私の人生観が、デザインに表れているからかもしれません。
生きていれば、つらいことや納得できないことは必ず起きてしまうものですが、それらを人生から完全に取り除くことはできません。
そのような不条理な出来事を受け入れながらも、どうやって幸せに生きていくかを考えることが大事になると考えています。
「毒」や「妖怪」といった一見刺しゅうと遠いところにあるモチーフがデザインに入るのは、こういう価値観で生きているからではないでしょうか。
一方で、デザインに複雑で深いテーマを込めすぎると、広い用途で使われなくなってしまうので、かわいらしさや受け入られやすさも意識しています。
▲千葉さんがデザインした「妖怪」をテーマにした図案。(『日本のかわいい刺繍図鑑(ビー・エヌ・エヌ新社)』掲載作品)
身近なものを華やかにできるのが刺しゅうの魅力
―刺しゅうの仕事をやっていて良かったと思うことはなんですか?
千葉さん:大切な人のために何か作ってあげたいと思う人の手助けができることです。はじめは自分のために刺しゅうを始めたけれど、だんだんと子どもや友人のために何か作りたい、と思い始める人がたくさんいます。
みなさんに共通しているのは「もっと趣味を楽しみたい」という思いです。
もともと、私が勤めていた会社を辞めてものづくりの道に入ったのも、仕事が忙しく、もっと自分の趣味を楽しめる環境に身を置きたいと思ったからでした。
当時から、自分と同じ思いを持つ人の手助けをするのが目標の一つなので、教室やイベントを開催することで、参加者の方々が楽しそうにものづくりに没頭する姿を見ていると嬉しくなります。
―刺しゅうの魅力を教えてください。
千葉さん:ハンカチやシャツ、かばんと私たちの周りには布を使ったアイテムが多くあるので、身の回りのものを華やかにできるのが良いですね。
図案さえあれば何度でも同じものを再現できるので、同じデザインの刺しゅうをほどこしたハンカチを親子や仲良しの友人たちとお揃いで持つこともできます。
最近は、いろんな技術が発達して自分で手を動かさなくてもできることが多くなりましたが、それでも人間は手を動かしたいという欲求を持っていると思うんです。なんでもデータで保存できる時代に、作品が形として長く残るのは良い点だと考えています。
場所やお金の制約もあまりないので、趣味として始めやすいのも魅力です。
自分のためだけでなく、誰かのためにも刺しゅうを楽しんでもらえれば
―「刺しゅうミシン」はミシンで刺しゅうができるので、初心者でも挑戦しやすいのがポイントです。そういった方が作るのに向いているものはなんですか?
千葉さん:ハンカチがおすすめです。かばんやポーチといった袋物のように、ミシンで布を縫う必要がないので、ハードルが低いと思います。
毎日使うものだから、人へのプレゼントにもぴったりですよ。私も、友人や知り合いに刺しゅうを入れたハンカチをよくプレゼントしています。
上野動物園に行ったけどパンダを見られなかった人にはパンダの刺しゅうを、一緒にバリに旅行に行く人には海の生き物をモチーフにした刺しゅうを、と相手のストーリーとデザインを合わせると、より一層喜んでもらえるんです。
―千葉さんの考える、刺しゅうミシンをもっと楽しむ方法を教えてください。
千葉さん:ミシン刺しゅうと手刺しゅうを組み合わせることです。
私がデザインした図案は装飾的なので、例えば単語や長いメッセージの頭文字だけ私の文字刺しゅうで、他は普通の文字刺しゅうにする、といった組み合わせなら、シンプルながらもオリジナリティのあるデザインに仕上がります。
▲サーカスをテーマにした刺しゅう。千葉さんのデザインする図案は、イラストのかわいらしさが魅力の一つ。(『装苑』2018年1月号掲載作品)
千葉さん:イニシャルの文字からアルファベットを選ぶだけでなく、自分や贈る相手の好きなモチーフから刺しゅうのデザインを選んでも面白いはず。
贈るシチュエーションや相手に合わせていろいろ試してみると良いですね。
―初心者が挫折しないコツを教えてください。
千葉さん:刺しゅうの制作に行き詰まる原因は、デザインの難易度と自分のスキルが一致していないことが大半です。
「このデザインの刺しゅうを作りたい」と思って始めるのもいいのですが、生徒さんには、行き詰まったら自分に合った難易度のものを作って、苦手なステッチを克服することをおすすめしています。
▲千葉さんの生徒さんにも大人気のパンをモチーフにした図案。
千葉さん:私も、若い頃は刺しゅうが下手で「いかに刺しゅうをしないデザインにするか」ということばかり考えていました。
でも、あるとき「このままでは自分の思うような良い作品を作れない」ということに気づいて、刺しゅうのデザインや歴史を本で深く勉強したんです。そうしたら、刺しゅうがものすごく楽しくなったし、作品の幅も広がりました。
刺しゅうだけでなく、ハンドメイド全般に同じことが言えると思います。まずは、自分にできる難易度の作品から始めてみると達成感を味わいながら上達できますよ。
「子どものために何か作りたい」「かわいいものが作れる趣味がほしい」など、きっかけはなんでもよいので興味がある方はぜひ挑戦してみてください。
好きな動物アルファベットをお気に入りのアイテムに刺しゅうしてみよう
▲今回、ブラザーサイトで刺しゅうデータとして販売される動物アルファベット。動物の頭文字とアルファベットが一致するデザインになっている。
今回発売されるデータは、「どんな人でも使いやすいかわいらしい動物」をテーマにした刺しゅうデザインになっています。刺しゅうするアルファベットをイニシャルから選んでも、好きな動物から選んでも素敵な作品に仕上がるはず。
また、動物モチーフなしで同じフォントのアルファベットもデザインしてもらいました。2色使いになっていますが、1色で刺しゅうしてもOK!動物モチーフのアルファベットと組み合わせて使ってもかわいいですね。
お気に入りのアイテムに刺しゅうを入れて楽しんでみませんか?