いつでも水素を安心して使えるインフラを社会に実装
水素柱上パイプラインとは
水素柱上パイプラインの概要
水素エネルギーを気軽に使えるようにしたい、水素の輸送手段を安価にしたいという想いから取り組んでいる水素柱上パイプライン。
まるで電線のように、コンクリート柱に吊られたパイプラインの中を、高速に水素が配送されています。
水素を運ぶパイプラインを地中に埋設する場合に比べて、既存の電柱等を共用できれば、約1/15のコストで敷設が可能と試算しています。新しく柱を建てた場合でも埋設時の約1/8で済む、その圧倒的なコストパフォーマンスの高さが、水素社会実現の一翼を担うと考えています。
水素柱上パイプラインの背景
現在の日本は石油や石炭、天然ガスといった化石燃料に、エネルギーの大部分を依存しています。
日々の生活や経済活動に水素を使う水素社会の実現で環境負荷の低減を国主導で目指しているものの、まだまだ実現にはいくつもの課題があります。
水素社会実現における課題のひとつに「安全で」「低コストな」水素デリバリーインフラがあります。
これまでの水素デリバリーの選択肢としては、大口では液化水素ローリー、圧縮水素トレーラー、小口では高圧ガスカードルによる陸送の方法と、北九州市や東京のオリンピック村に埋設したパイプラインなどがありました。
水素柱上パイプラインによる安心・安全の水素配送の仕組み
主な気体の拡散係数
通常地中に埋設するパイプラインにガスを流す場合、付臭(においを付けること)が義務付けられています。
純度99.99%の水素を使う燃料電池においては付臭する物質は不純物であり、燃料電池で利用する前に脱臭をしなければなりません。これは合理的ではありません。
水素は分子量から想像されるように非常に軽い気体で、拡散係数は 毎秒0.61 立方センチメートルと、プロパンガスの約5倍です。パイプラインを人間の生活圏より「上空」に吊ることで、水素爆発や延焼の危険性を下げることができ、比較的安全に使えるのではないかという仮説を持っています。
水素柱上パイプライン 倒壊試験
地震や雪害など、電信柱が倒壊した際のリスクについての実験やパイプに穴があいてしまったケースの漏洩シミュレーション等も行なっています。
大規模災害や事故による電柱倒壊を想定した実験を行った他、水素柱上パイプラインの安全性に関するリスクアセスメントを実施し、緊急時の事故対応マニュアルを作成しています。(令和3年度の実験結果)
水素柱上パイプラインのメリットとデメリット
水素柱上パイプラインのメリットは、既存の水素配送手段に比べて水素供給インフラが安価であることです。
既設の電柱や電信柱などを利用できれば、更に安価で工事期間を短縮することができるとともに、柱の提供者への受益配分を行うこともできます。
また、パイプラインに利用する管は、フレキシブルなラセン管なので外部からの衝撃、引張に対して破断しづらいメリットがあります。
一方でデメリットとしては、
現行法制に照らし合わせた場合、水素柱上パイプラインの利用を想定した法規制がないことです。水素柱上パイプラインの利用が進むとともに、法整備も進むと考えています。
また、水素柱上パイプラインのねらいは、至る所に高圧の水素貯蔵施設を設置することができないため、電力や熱を利用する施設の近くに燃料電池を分散設置し、トータルで、100kW程度の燃料電池を運転するための水素を水素ステーションなど水素を大量に保管している場所から供給する。いわば、水素の「ラストワンマイル」の領域で、安全安価に水素を運びましょうというコンセプトです。
パイプラインの径を太くしたり、複数本のパイプラインを敷設することによって大量の水素を運ぶことも可能ですが、大規模発電などで必要とされる大量の水素を運ぶことには不向きだと考えています。
社会実装のイメージ
水素柱上パイプラインのゴールイメージの1つは、福島県にある、CO2フリー水素供給地であるFH2Rから隣接地への水素供給です。
太陽光発電から生み出されたCO2フリー水素を圧縮しないまま、棚塩産業団地にクリーンなエネルギーとして供給します。
産業団地への水素配管
※福島県 FH2Rからの配管イメージです。
ゴールイメージの2つ目は、市街地における公的施設や住宅等への水素供給です。
水素ステーションの水素をFCV以外にも供給するマルチ水素ステーションとして活用することです。水素柱上パイプラインを利用して、各施設に設置した定置型燃料電池に水素を送るとともに、水素メーターによる課金も実現します。
導入製品
72時間の長期運転が可能な高出力モデルを実現。通信基地局など、重要な社会インフラに電力を供給するモデル。
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