プリント日和

【とっておきの一冊には、とっておきのブックカバーを】「picnic」の美しい作品に隠された想い

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皆さんはお気に入りの本、ありますか? 思い浮かべてみてください。とっておきの一冊だからこそ、大切に、大事に読みたいという方もいらっしゃるのではないでしょうか。

そんな本を守るだけでなく、もっととっておきな存在にしてくれる。今回は、そんな素敵なブックカバーを作っている「picnic」のタナカ トシユキさんにお話を伺いました。

サラリーマン時代の「もやもや」した気持ちを救った、ものづくりをするということ

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——まずは、ものづくりを始めた経緯をお聞きしてもよろしいですか?

タナカさん:前までは普通のサラリーマンでした。やりたい仕事にはつけていなくて、今の仕事をこれからずっとやっていていいのかな〜と、ずっともやもやしている「もやリーマン」でした。

——“ものづくり”をやりたい!という気持ちが持ちがずっとあったのでしょうか?

タナカさん:いいえ、始めはそういう気持ちは全くなかったんです。サラリーマンのときに、調布に住んでいたんですけれど、そこに手紙社というものづくりのイベントを主催している会社があって。その会社が主催している「もみじ市」というイベントにボランティアスタッフとして参加したら、そのイベントがすごく素敵で、ものづくりにすっかり魅了されてしまいました。

その時に、「モノ」って人を幸せにできる力があると思って。そのモノを作っている人が直接見えることや、自分が作ったものをお客さんに手渡したりできる、という行為がとても素敵だな、と。

実は僕、服を買いに行っても、店員さんに話しかけてほしくないタイプなんです。でも、なぜか「もみじ市」では、そういう風には思わなかった。それってなぜかと考えた時に、作り手本人が直接販売しているからなのではないかと思ったんです。そして、自分もいつかこのイベントに販売する側で参加したいと思い、ものづくりに興味を持ち始めました。

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——イラストは、ずっと趣味で描かれていたのですか?

タナカさん:そうですね。そのもやもやしている「もやリーマン時代」にも、今のようなテイストで、年賀状を自分で作成したりしていました。

実はこのイラスト、写真をもとにしてパソコンで加工したものなんです。だから、パソコンがなければ、まったくと言っていいほど絵が描けないんですよ。よく手描きだと思われるんですけれど、実は全然違って、本人は絵がド下手だったりします。

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——へー!それは意外ですね……!? picnicのイラストはとても幻想的で魅力的なものが多いですが、どういったものから着想を得ているのでしょうか。

タナカさん:皆、人生で一度は空に魅了されて、空の写真を撮ったことがあると思うんです。夕焼けとか、朝焼けとか。だから、皆がまず良いと思うような「自然」の魅力をモチーフにしました。会社を勢いで辞めたので、たくさんの人にいいなと思ってもらえるものが作りたくて(苦笑)。

こだわり抜いた素材と、人との繋がりで完成したpicnicのブックカバー

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——最初に、ブックカバーを作ろうと思ったきっかけは何ですか?

タナカさん:電車に乗ってる時に、ちらっと車内を見たら、女性が本を読みながら、ティッシュのようなもので目を押さえて泣いていたんです。人目がある車内なので、絶対涙をこらえていたと思うんです。それでも涙を流させてしまった、その本のタイトルが気になって、ずっと見ていて。そうしたら、その女性が、さっきまで目頭を押さえていたのに、ほっぺとか、おでこのあたりをティッシュ押さえはじめたんです。結局女性は、泣いてるんじゃなくて、顔の脂をとっていたという……

——(笑)

タナカさん:その女性がブックカバーをつけてさえいれば、こんな風に、期待を裏切られることもなかったなぁと思って、ブックカバーを作ろうと思いました(笑)。というのが、冗談みたいな本当の話なんですけれど。あとは、都立大学前にある、890という場所で行われている、MOUNT MARKETにいったときですね。イベントの後、友達と飲むことになっていて、そのうちのひとりの友達が、最近誕生日だったんです。せっかく来たことだし、何かプレゼントでも買おうと思って店内を物色していて、最終的に手に取ったのがブックカバーでした。その友達が本を読むかは分からなかったんですが、普段読んでなくても、これをきっかけに本を読んでくれたらいいなと思って。その時に、ブックカバーっていいなと思いましたね。

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——なるほど。picnicのブックカバーは、なんだか不思議な素材でできていますよね。

タナカさん:ブックカバーは「タイベック」という素材でできています。水に濡れても大丈夫ですし、破れにくいので建築資材にも使われているんです。面白い素材だなと思って、素材ありきで作り始めました。

紙で作った方が、絶対、価格は安くなるんですけど、どうしてもやってみたいと思って、色々な会社をあたりました。僕は弱小個人で、お金もないので、大量発注もできない状況でした。いくつかの会社に問い合わせを行ったんですが、門前払いをされたり、すごい金額の見積もりを出されたりして。

それでもめげずに探していたら、ネットで、とても親身になってくれる、九州のおじさんに出会ったんです。電話でやりとりしていたら、「普段はくまモンの仕事くらいしかやってないから、こんな素敵なデザインだったら協力してあげるよ」と言ってくれて、その人にお願いしてやっと完成しました。まだ一度も会ったことないんですけど、いつかお会いしたいですね。それに、おじさん好きな女性の気持ちがちょっと理解できてしまうくらい、そのおじさんにすっかり魅了されました(笑)

——ブックカバーを通しても、様々な出会いがあるんですね。

一冊の本によって、ものづくりの世界に飛び込むことができた

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——タナカさんは普段、本を読まれますか?

タナカさん:会社員の頃に比べると減ってしまったんですけれど、小説もビジネス書も幅広く読んでいます。もともと、会社を辞めようと思ったきっかけも本でした。

手紙社のイベントに出て衝撃を受けてからも、ずっとサラリーマンを続けていたんです。でもやっぱりずっと、もやもやしていて。転職活動も、上手くいってなかったですし。そんな時に、堀江貴文さんの『ゼロ―――なにもない自分に小さなイチを足していく』という本に出会いました。その本を読んで、とても背中を押されてしまったんです。

今までって、バンジージャンプの上のラインにずっといて、飛び込みたいけど、怖いから飛び込めない、みたいな状況だったんです。自分でどうにかしたいとは思っていても、何もできずに。でも、この本を読んでから、「会社を辞めて、やりたいことをやってみよう」とようやく思えました。アイデアもいくつかあったので、一回試してみよう、という感じで、勢いで始めましたね。

——本を読むというのは、タナカさんにとってどういう行為ですか?

タナカさん:本にもよると思うんですけど、僕にとっては、筆者の頭の中を覗くという行為です。今まで出会った友達に影響されて、今の自分がいるのと同じように、本も、読んでいる積み重ねで今の自分があると思っています。まあ、覚えているのは一行くらいなんですけど(笑)

本を読んだ後は、絶対一回はそれに従ってみるようにしてるんです。疑わずにとりあえずやってみることで、何か吸収できるかもしれないと思っています。

「picnic」で人と、出会いを「繋げる」

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——picnicのウェブサイトを見ていると、商品の販売以外にも様々なことをされていますよね。コンセプトのようなものがあるのでしょうか?

タナカさん:はい、そうですね。会社を辞めた時に、誰かを楽しませたり、喜ばせたりする仕事がしたいって思ったんです。その時に、「つなぐ」というのが自分の中でキーワードになりました。

例えば、お笑い芸人だったり映画監督だったり、人を楽しませる方法っていっぱいあると思うんですが、それと出会わなければ、つながらなければ、楽しいという感情は生まれないですよね。だから僕は、誰かを楽しませたり、喜ばせたりする「つなぐ」ことをやりたいと思いました。picnicのサイトでも、イベント情報を紹介したり、お店を紹介したりして、「つなぐ」ということを行っています。

——個人的にブックカバーを購入させてもらった時に、ポストカードに手書きメッセージが書いてあって、とてもびっくりしたのを覚えています。これってとても手間がかかることだと思うのですが、そういうところにこだわっていらっしゃるんですね。

タナカさん:「つなぐ」というのがキーワードなので、どうしたら、お客さんとの距離感がすこしでも縮まるかというのを、常に考えています。お客さんは下の名前で呼ぶとか、「様」は使わないとか、ちょっとしたことなんですけど、試行錯誤しています。

自分の好きなものを持つことで、日常が楽しくなる

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——タナカさんが、picnicとして今後やってみたいことはありますか?

タナカさん:まずは、picnicというリアルイベントをやってみたいです。

そして、picnicがもっと大きくなったら、ゆくゆくは場所を持ちたいです。実店舗なのか、イベントスペースなのか、はたまた飲食なのかはまだ分からないんですけど、今まで出会ってきた人や、やってきたことを生かすためにも、ひとつの場所に集約できる場所があればいいですね。

——なるほど。出会った人と繋がっていくための場所を作る、ということですね。

タナカさん:あとは、障害者の方とも一緒に仕事ができたらいいなとも思っています。障害者の方々が、低賃金で働いているという話を聞いたことがあるんです。picnicの物販がこれからも上手くいけば、障害者の方にも喜んでもらえる金額で仕事を頼めたらと考えています。

いいお客さんが多いのかもしれませんが、作品を手にしてくれた方は、みなさん喜んでくれるんです。それを見てる僕自身はもちろん嬉しいですし、仕事を手伝ってくれる障害者の方も喜んでもらえらた、最高だなって思います。

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——しっかりとしたビジョンがあって、進んでいらっしゃるんですね。最後に、これを読んでいる読者の方へ、メッセージをお願いします。

タナカさん:僕のものを絶対買ってほしいとかいう訳ではないんですけれど、やっぱり自分が好きだなと思うものを持つことって、いいことだと思うんです。

こだわって、自分の好きなものや良いものを揃えていくと、それだけで日常がちょっと楽しくなる。このブックカバーを手にとってくれた方の日常が、すこしでも楽しくなってくれたら、すごく嬉しいなと思います。

——タナカさん、今回は素敵なお話、本当にありがとうございました!

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