【意外と簡単!?】自分で作れる雑誌「フリーペーパー」の魅力を北枕ふか子さんにインタビュー

フリーペーパーの魅力は、自分が作りたいと思ったものを作れること

─ フリーペーパーに興味を持ったきっかけを教えてください。

北枕ふか子さん（以下、ふか子さん）： 最初はいろんな素材を貼り付けて作品を作る「コラージュ」の材料として、フライヤーやチラシ、フリーペーパーを集めていました。そのうち、フリーペーパー自体の魅力に気づき、コラージュの材料としてではなく、「フリーペーパー」そのものを目的として集め始めたのがきっかけです。

特に影響を受けたのは、２００１年に結成されたデザイン集団の東京グーニーズが発行している「東京10:45」とJTが発行している「FILT」です。この2冊を読んで、「こんなに面白くて豪華な雑誌を無料で配布していいの？もっと面白いフリーペーパーがあるかもしれない！」と思い、フリーペーパーを集めるようになりましたし、自分でフリーペーパーを作る上でも影響を受けました。

─ フリーペーパーの魅力とはどのようなところにありますか。

ふか子さん： どう作ってもいい、というところです。誰かに怒られることもなく、作りたい明確な理由や意味なんてなくてもいい。「作りたいから作った」が理由でも良いところです。

また、無料で手に入るところや、配布場所が書店以外（喫茶店、雑貨屋など……）にもあるので、普段あまり本や雑誌を読まない方が手に取る機会があるのも魅力です。

フリーペーパーは、個人で発行している方も多く、かなり自由な内容のものも多いです。なので、一般的な雑誌や本では見られない本音、「こんなこと書いちゃっていいの！？」というような赤裸々エッセイ、「この下ネタはアウトでは！？」というような表現なども載っており、そういった「自由」な面も魅力的だなと思います。

─ フリーペーパーを自分で作り始めたのはいつからですか。

ふか子さん： 大学生になってからです。大学1年生の時にフリーペーパーサークル「トロイメライ」を立ち上げ、フリーペーパーを制作しました。最初はどうやって作ればいいのかわからず、形になるまで半年ほどかかってしまいましたが、その後は年4回のペースで発行していました。

サークルでは20名前後のメンバーとフリーペーパー制作をしていましたが、2年生の終わりにサークルは引退しました。大学3年生からは1人で制作を始めて、今も作り続けています。

─ フリーペーパーのサークルをご自身で立ち上げたんですね！

ふか子さん： 「フリーペーパーが作りたい」という気持ちで大学に入学し、学内のサークルや学外のサークルへ見学しに行きましたが、自分の希望に合うサークルがなく断念したんです。そんなときに、友人たちが「お茶会サークルを作ろうと思っている」と話しているのを聞き、「なければ作ればいいのか！」と思い、サークルを立ち上げました。

─ フリーペーパーを作っていて、楽しいところはどういうところですか。

ふか子さん： 楽しいところは、作ったものを楽しみにしてくれて、読んでくれて、笑ってくれる人がいることです。目の前で読んで笑ってくれたり、「なんでだよ！」と誌面に突っ込んでくれたりしているのを見ると、嬉しくなります。

─ 読者の存在が大きいんですね。逆に、大変なのはどのような部分ですか。

ふか子さん： 人と一緒に作っているときに大変なのは、一緒に制作している人とのコミュニケーションです。当たり前ですが、「こうしたい」という気持ちを一緒に作っている人と共有できていないと、内容がバラバラになってしまうので、自分の気持ちはきちんと伝え、相手の考えていることも聞くようにしています。また、スケジュール管理も大変なことのひとつです。最初のスケジュール決めも大変ですが、それぞれに締め切りを守ってもらうことや、間に合わなかった場合の対応などもなかなか気を使います。

ひとりで作っていて大変なところは、モチベーションが保てないところです。「別に発行しなくても誰も困らない」「いつ作っても良い」と思っていると永遠に発行できないので、無理やりにでもイベントに申し込んだり、友人と約束したりして作るようにしています。また、各お店への配布も一人で行うので、時間と体力、そして対人スキルが必要です。人見知りなので、毎回大変ドキドキしながら行っています。

作ってきたフリーペーパーを一挙紹介

─ 今まで作ってきたフリーペーパーはいくつぐらいありますか。

ふか子さん： 異なるテーマで10シリーズほど作りました。

自分でサークルを立ち上げて制作していた『トロイメライ』は、「あなたの背中を押したい」というキャッチコピーで、「バレンタイン企画。変わり種チョコ料理作ってみた」「雨乞いVS晴れ乞い」「世界各国の祝い方を一気にやる」などの企画をメインにしたフリーペーパーでした。企画以外にも、政治系コラムやブックレビュー、小説なども掲載。書店・雑貨屋・イベントなどで配布していました。

ふか子さん： フリーペーパーの専門店で働いていたときには、届いた本の緩衝材を捨てるのがもったいないなと思い、その緩衝材を利用した『くしゃっとペーパー』というフリーペーパーを作っていました。すべて手書きで、すべて中身が違うのが特徴です。フリーペーパーの学生コンテストであるSFF（Student Freepaper Forum）の予選を通過し、コンテスト当日にはブース展示を行うことになりました。

ふか子さん： 『くしゃっとペーパー』と共にSFFの予選を通過したのが『ocean』というフリーペーパーです。『ocean』は、「性について」「海について」「山について」など各テーマに沿って私がパソコンで書いて印刷した文章に対して、友人に手書きで突っ込んでもらうという形をとって発行していました。

学生時代には、ほかにも、どんどん劣化していくフリーペーパー『週刊プリン』や、学内イベント開催時に発行する『文芸新聞』なども制作していました。

社会人になってからは、「とにかくお金のかかったフリーペーパーを作りたい」という欲望で『C（sea,see,she,shh）』というフリーペーパーを作りました。封筒の中に「sea」「see」「she」「shh」という4つの異なるコンセプトの冊子を入れて、イベントや書店、雑貨屋などで配布しました。

友人と一緒に作ったフリーペーパーだと、『ミッドナイト』と『失恋防止マニュアル　β版』があります。
『ミッドナイト』は、デザイナーの友人と「とにかく全力でふざけたい」「仕事でできないデザインをやりたい」という気持ちで作り始めた、嘘しか載ってないフリーペーパーです。テーマに沿った嘘のインタビューや、嘘の文化人による嘘の映画レビュー、コラムなどを掲載しています。

『失恋防止マニュアル　β版』は、友人の「失言防止マニュアルならぬ、失恋防止マニュアルを作りたい」という言葉から始まった新書系のフリーペーパーです。”そもそも恋に落ちないようにする”、”恋に落ちそうになった場合”、”恋をしてしまった場合”に分けて、失恋を防止するための対策を載せています。このフリーペーパーに加筆修正を加えて、『完全版　失恋防止マニュアル』として販売もしていますが、β版は各書店、雑貨屋にて配布していました。

ほかにも、すべて手書きで家のプリンターで作っていた『不平不満をいおう』や、ネットプリントでも配信していたことがある『北枕新聞』などもあります。

─ 本当にたくさんのフリーペーパーを作られたんですね！その中でも、特に印象に残っているフリーペーパーはありますか。

ふか子さん： 『Ｃ（sea,see,she,shh）』はいろんな方に協力してもらっていますが、インタビューや原稿作成、協力してくださってる方への連絡、デザイン、配布まで全部1人でやっていたので、印象に残っています。最も時間もお金も労力もかかっているフリーペーパーかなと思います。

また、初めて作ったフリーペーパーということもありますが、『トロイメライ』も印象的です。サークルのメンバーと試行錯誤しながら作り、自分が想像もしていなかった企画が飛び出して、ユニークなフリーペーパーになったと思っています。

フリーペーパーの作り方とは

─ 実際にフリーペーパーを制作するときの流れを教えてください。

ふか子さん： 一般的な雑誌とあまり変わりません。主な流れとしては、ラフ制作、原稿制作、デザイン、印刷です。規模や人数が大きいと、最初に企画会議があり、広告を掲載する場合は営業活動なども入ります。

現在はひとりで作ることが多いので、大抵思いつきで簡単なラフを作り、原稿を書いています。

フリーペーパーならではの作業で言うと、配布場所を探すのが特徴的かも知れません。書店や雑貨屋など置いてくれそうなお店に行って交渉し、フリーペーパーを置かせてもらいます。最近では、TwitterのDMで「うちのお店に置きませんか？」というような連絡をもらうことも増えてきました。ありがたいことに、九州や大阪などにも、自分で作ったフリーペーパーを置かせてもらっています。

─ 家にあるプリンターだけでも、フリーペーパーを作ることはできますか。

ふか子さん： できます！

A4のサイズで印刷をすれば、そのままで新聞が作れます（『文芸新聞』『北枕新聞』がこの形です）。

A4の紙を8等分に折って切り込みを入れれば小冊子に（「shh」がこの形）。印刷してから4等分にして、真ん中で切り、ホチキスで止めれば4ぺ―ジの冊子に（『不平不満をいおう』がこの形）。 真ん中で折ったものを重ねても冊子になります（『失恋防止マニュアル β版』がこの方法です）。

フリーペーパーというと、きちんとデザインされ、製本されたものでなくてはと思ってしまいがちですが、家にあるプリンターやコピー機でも十分素敵なフリーペーパーを作れますよ！

取材を終えて

大学生でフリーペーパーのサークルを立ち上げてから今に至るまで、あらゆるフリーペーパーを作り続けている北枕ふか子さん。お話しを伺って分かったのは、フリーペーパー作りは難しいことではない、ということです。

ふか子さんの言葉の通り、特別なソフトを用意しなくても、「作りたい！」と思った時に家にあるプリンターを使ってフリーペーパーは作れます。

興味はあるけど難しそう、と思っている方は、この機会にフリーペーパーを作ってみてはいかがでしょうか。

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