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訪問診療とは|現状や効率化のためのポイントを解説

公開日:2023.01.10

訪問診療とは|現状や効率化のためのポイントを解説

訪問診療とは、医師が患者の住まいに計画的に訪問して長期的な診療や治療、療養上の相談などを行うことです。自宅や老人ホームなどで自宅療養をする高齢者が増えている今、訪問診療の需要も高まっています。しかし訪問診療を導入するには、医療提供の効率化などさまざまな課題があります。

訪問診療を導入するならば、現状を把握して課題を解決する方法を考えておくことが重要です。

この記事では、訪問診療の現状や効率化のポイントを解説します。これから訪問診療の導入を考えている医療従事者の方は、ぜひこの記事を参考にしてください。

患者の自宅を訪問して医療を施す「在宅医療」が進められる背景

患者の自宅を訪問して医療を施す「在宅医療」が進められる背景

始めに患者の自宅を訪問して医療を施す「在宅医療」がなぜ進められているのか、その背景を解説します。一時期は「病気になったら病院に入院する」ことが当たり前だったのに、なぜ、在宅医療が進められているのでしょうか。

止まらない高齢化

2021年、日本の総人口が12,522万人と2020年に比べて65万人減少したのに対し、65歳以上の高齢者の人口は3,640万人と過去最高になっています。(※1)1997年に子どもの数が高齢者人口を下回ったときに始まったといわれる高齢化社会は、20年近く経った今も進行中です。(※2)高齢者が増えれば自然と体調が優れない人も増えてくることでしょう。

内閣府が発表した「平成29年版高齢社会白書」の中で、平成24(2012)年では65歳以上の高齢者のうち約7人に1人が認知症を発症しており、令和7年(2025年)には5人に1人になると述べています。(※3)

※1 出典:総務省統計局「高齢者の人口」(2022-3-25)
https://www.stat.go.jp/data/topics/topi1291.html
※2 出典:内閣府「第1部 少子社会の到来とその影響」(2022-3-25)
https://www8.cao.go.jp/shoushi/shoushika/whitepaper/measures/w-2004/html_h/html/g1110010.html
※3 出典:内閣府「平成29年版高齢社会白書(全体版)」(2022-3-25)
https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2017/zenbun/pdf/1s2s_03.pdf

生産年齢人口の減少

高齢化が進む一方で、15歳以上65歳未満の生産年齢人口は減少を続けています。日本では、1995年をピークに生産年齢人口は減少を続けており、2060年には1995年の生産年齢人口の約半分程度になると予想されています。(※)

※ 出典:総務省「平成28年版 情報通信白書|人口減少社会の到来」
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h28/html/nc111110.html

生産年齢人口が少なくなれば、ありとあらゆる場所に人手が足りなくなります。もちろん、病院も例外ではありません。従来のように病気になったら長期間病院に入院して看護を受けるといった従来の医療が成り立たなくなっていくと予想されています。

訪問診療を希望する人の存在

令和元年版高齢社会白書によると、『万一治る見込みがない病気になった場合、最期を迎えたい場所はどこか』という質問に、51.0%が「自宅」、31.4%が「病院・介護療養型医療施設」という答えになったそうです。(※)この調査から見えてくることは、訪問診療を希望する人の増加です。

在宅医療が進めば、病院の負担も軽減できます。この他新型コロナウイルスの感染拡大も、政府が自宅療養を推奨するなど訪問診療の促進を後押しする結果になりました。

※ 引用元:内閣府「第1章 高齢化の状況(第3節 1-4)」(2022-3-25)
https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2019/html/zenbun/s1_3_1_4.html

訪問での医療を推進するための制度・取り組みの変遷

日本では1980年代より、訪問での医療を推進するために制度を整えてきました。1992年の第二次医療法改正により、「居宅」が医療提供の場として位置づけられ、1994年には在宅時医学管理料、在宅末期総合診療科、ターミナルケア加算が創設されます。さら2000年に介護保険法が制定され、2004年には 重症者への複数回訪問看護が評価されるようになりました。

このようにだんだんと訪問診療をしやすいように制度が整えられていっているのが分かります。

また中央社会保険医療協議会は、「令和4年度診療報酬改定に係るこれまでの議論の整理」の中で、「質の高い在宅医療・訪問看護の確保」として、訪問診療の評価を見直すことを盛り込んでいます。これが認められれば、より訪問診療が促進する可能性があります。

2025年の地域包括ケアシステムとは

政府は2025年を目途に「住まい」「医療」「介護」「予防」「生活支援」が一体的に提供される地域包括ケアシステムの構築を行っています。構築の目的は重度な要介護状態となっても住み慣れた地域で、最後まで自分らしく生活できるようにするためです。

さらに認知症高齢者の地域での生活を支える、という目的もあります。

なお地域包括ケアシステムは、政府主導で行うのではなく市町村や都道府県が、地域の自主性や主体性に基づいて地域の特性に応じて作りあげていくことを求めています。

また地域包括ケアシステムは5つの構成要素があり、具体的な内容は以下のとおりです。

● 本人の心構え:要介護にならないように予防を積極的に行うなど、本人や家族が住宅で生活していく心構えをすること
● 生活サービスの支援:買い物や見守り、話し相手など地域の人々も協力して支援をする
● すまい:高齢者でも暮らしやすい住まいの整備
● 医療:本人の状態に合わせて医療を提供する。介護施設と医療の連携強化
● 介護:地域で最後まで過ごせる介護サービスの強化

在宅医療の現状とは

国や自治体が訪問診療を含む、在宅医療に積極的であることがお分かりいただけたと思います。では、現在の在宅医療はどのような状態なのでしょうか。ここでは、在宅医療の現状を解説します。

訪問形式の医療を受ける患者は増加

厚生労働省が平成31年3月に発表した「患者調査の概況」によると、在宅医療を受けた推計外来患者数は平成20年より増加の一途を辿っています。その内訳を見てみると、訪問診療を受けている人の割合が特に増加しています。(※1)

また厚生労働省が平成28年に発表した「第1回全国在宅医療会議」の参考資料「在宅医療の現状」によると、在宅患者訪問診療を受ける年齢の50%以上が85歳以上、ついで75歳~84歳までが約30%となっています。これを見ると訪問診療を受ける8割が後期高齢者です。しかし平成26年の内訳を見ると40~64歳も約3%、20~39歳も0.6%が利用しています。(※2)

つまり全ての年代において訪問診療は、一定の需要があるといえるでしょう。

※1 出典:厚生労働省「平成29年(2017)患者調査の概況」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kanja/17/dl/kanja-01.pdf
※2 出典:厚生労働省「在宅医療の現状」
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10801000-Iseikyoku-Soumuka/0000129546.pdf

在宅医療を提供する診療所などの実態

厚生労働省が平成28年に発表した「第1回全国在宅医療会議」の参考資料「在宅医療の現状」によると、訪問診療を実施しているのは89%が診療所、11%が病院となっています。診療所とは病床が19床以下の医療施設を指し、病床が0のところもめずらしくありません。(※1)

つまり外来患者が大多数を占める小さい病院が、訪問診療の大多数を担っているということです。小さい病院はスタッフが少なく、1人1人の負担が大きいと推測されます。

その一方で「厚生労働省医政局指導課在宅医療推進室」が発表した「在宅医療の最近の動向」によると、「在宅療養支援診療所」や「在宅療養支援病院」の届出を出す病院は、平成18年から増加の一途を辿っています。(※2)在宅医療を望む患者が増えるにつれて、在宅医療を提供する病院も増えているということでしょう。

また訪問診療を行うのは診療所や病院だけでなく、「訪問看護事業所数」も含まれます。この訪問看護事業所はかつて病院や診療所に開設されていましたが、平成20年度以降は訪問看護ステーションが主流となり、病院や診療所付属のものは減少傾向です。(※2)

在宅医療で行う内容は主に「往診」、「訪問診療」、「訪問看護ステーションの指示書の交付」、「在宅看取り」であり、訪問看護ステーションと協力して訪問診療を行っている様子が分ります。

また連携の手段としては、電話やファックスが最も多いという調査結果が出ています。

※1 出典:厚生労働省「在宅医療の現状」
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10801000-Iseikyoku-Soumuka/0000129546.pdf
※2 出典:厚生労働省「在宅医療の最近の動向」
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/zaitaku/dl/h24_0711_01.pdf

訪問による医療を継続するうえでの課題とは

日本の医療はとても発達しており患者が望めば24時間365日に病院で医療を受けることができます。そのため訪問診療にも病院で受ける医療と同レベルのことを望む人もめずらしくありません。

在宅医療の一環として訪問診療だけでなく、往診を行っている診療所のなかには「地域の多医療機関と協力しながら24時間365日対応している」ところや「単独で24時間365日対応している」というところも多いのです。

このような医療体制を実現するには、経験豊富なスタッフが必要ですが現在多くの診療所で医師やスタッフ不足に悩んでいます。また高齢化の波は、医療にも訪れています。

東京や大阪などの大都市には若い医師も豊富ですが、地方に行くほど医師も高齢化が進んでおり、患者のニーズに応えられないケースも増えているのです。

訪問による医療を効率化するためのポイント

訪問診療の需要は今後ますます増え続けるでしょう。そのニーズに応えるためには効率化が欠かせません。ここでは訪問診療における、効率化のポイントを解説します

モバイルプリンターを活用して効率化する

モバイルプリンターとは文字どおり、持ち運びが可能な小型のプリンターのことです。訪問診療の現場では、カルテなどを印刷する機会もたくさんあります。据え置き型印刷機を利用していると、いちいち印刷するために診療所や事業所に戻らなければなりません。とても非効率です。

必要な印刷物を訪問診療で訪れた家で即座に印刷できれば、訪問診療や往診を効率化できます。

モバイルプリンターで訪問診療の効率化に取り組んだ導入事例

ここではモバイルプリンターを活用してトレーサビリティに取り組んだ医療法人アライフサポートココカラハートクリニックの事例を紹介します。ココカラハートクリニック様は、通院が困難な患者様をサポートする「在宅診療」、西洋医学と補完代替医療(漢方・鍼灸等)を合わせた「総合医療」で患者様のココロとカラダの健康と生活をサポートしているクリニックです。

ブラザー導入事例_医療法人アライフサポートココカラハートクリニック 様

ココカラハートクリニックでは、これまでプリンターと呼びインクカートリッジを入れる専用のカバンを持ち歩いていましたが、より在宅診療がスムーズに行えるように診察セットに収納できる小型モバイルプリンター「PocketJetシリーズ」を導入することになりました。 ブラザーの小型・軽量モバイルプリンターのPocketJetシリーズは、厚さ約30mm、長さ255mm重さ610gと診療カバンにも余裕で入るコンパクトさです。
また1回の充電で600枚印刷できるので、1日訪問診療で出歩く日でも安心して持ち歩けます。(※)

PocketJetシリーズなら、カルテ・処方箋・診療情報提供書などをその場でスムーズに印刷することができ、患者様のご家族への情報提供もスムーズに。またインクジェットではないので、インク代も節約できます。
ココカラハートクリニック様の導入事例詳細はこちら[新しいウィンドウ]
※ 出典:ブラザー販売株式会社「モバイルプリンター導入事例」

ブラザー導入事例_医療法人アライフサポートココカラハートクリニック 様ポイント1

移動時間を短縮する

訪問診療を効率化するには、移動時間を短縮することが重要です。できるだけ同じ地域にある訪問場所を同じ日の診療に入れたり、一番遠くの診療場所を朝一番に訪問し、診療所や事業所に近いところまで順々に訪問していったりなどのスケジューリングをしましょう。

今は地図アプリなども充実しているので、訪問場所を入力すれば最も短時間のルートを考えてくれるものを利用するのもおすすめです。

なお1件あたりの診療時間を短縮するのは、医療の質が低下する恐れがあるためおすすめできません。訪問診療を始めたばかりの頃はまだ移動時間まで気が回らないかもしれませんが、訪問件数が増えてきたら、ぜひ検討してみてください。

電話応対を効率化する

小さな診療所や訪問看護ステーションなどでは、スタッフが全員往診や訪問診療に出かけることもめずらしくありません。その間に事務所や診療所に電話がかかってくると後で対応が大変になることもあります。特に急を要する電話の場合は、スケジュールが大幅に狂うこともあるでしょう。

そこで検討すべきなのが、電話転送サービスです。このサービスに加入すれば、事務所にかかってくる電話をそのまま携帯電話に転送ができます。事務所の留守電を聞いて折り返し電話する作業がなくなるだけで、効率化が進みます。

なお電話転送サービスはさまざまな業者があるため、まずは資料を取り寄せて比較検討してみましょう。

電子カルテを導入する

電子カルテとは、従来は紙で印刷していたカルテをパソコンやタブレットを用いて作成し、電子データとして保存できるものです。電子データとして保存できれば、紙のカルテのように整理の必要もなく、保管場所に苦労することもありません。

訪問診療先で作成したカルテをそのままデータとして診療所に転送することも可能です。

また提携している病院、訪問看護ステーションとデータの共有も簡単にできます。紙のカルテを記入する手間、整理する手間、コピーする手間などいくつもの手間を省くことができるので、業務を大幅に効率化することもできるでしょう。

電子カルテと連携できるプリンターとは

ブラザーのプリンターは医療現場でも活躍しています。ご紹介した「PJ-883」も電子カルテと提携が可能です。電子カルテを印刷して活用したい場合、モバイルプリンターさえ持っていけばその場で印刷することもできます。従来機(PJ-700シリーズ)からさらなる高速印刷を実現し、1分間にA4サイズの用紙を約13枚*1印刷が可能です。
*1:JEITA J1パターンを使用し、温度23℃の環境下にて満充電状態の新品リチウム充電池 を用いてロール紙に用紙固定(用紙サイズA4)でUSB接続にて連続印刷した場合。
一度事業所に戻ってプリンターで印刷し、また訪問先に持っていく手間を省くことができれば、業務の効率化ができるでしょう。

またカルテの取り間違いなどのヒューマンエラーも防ぐことができます。

まとめ

まとめ

今回は訪問診療の現状、効率化のポイントなどを解説しました。訪問診療のニーズはますます高まり、導入する病院や診療所は増えていくことが予想されます。少ないスタッフで効率的に業務を回すには、使える機材は何でも使って手間を省くことが重要です。

ブラザーは1980年代からプリンター事業を行っており、さまざまな企業への導入実績があります。医療分野では、電子カルテやレセコンとの連携実績が豊富です。さまざまな書類が電子化、ペーパーレス化している現在ですが、カルテやレセプトはまだ紙の需要も高くなっています。

ブラザーのプリンターは据置き機だけでなく、モバイル機も種類が豊富で素早くきれいな印刷が可能です。訪問先などへプリンターを持参したいと考えている方は、ぜひご相談ください。

   

ブラザー販売 ビジネスNAVI 編集部

ブラザー販売、ビジネスNAVI担当者です。ビジネスNAVI編集者として、トレンドコラムやお客様の導入事例、パートナー企業、製品のソリューション情報などを発信していきます。

   

※この記事の内容は、2022年12月現在のものです。
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