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「2025年の崖」で経済損失12兆円!?
レガシーシステム見直しと、DX推進のポイントとは?(1/2)

公開日:2024.01.23

     

今から5年前の2018年9月、経済産業省から
「DXレポート〜ITシステム『2025年の崖』の克服とDXの本格的な展開〜」が発表されました。
そこで指摘されたのは、多くの企業が新しいデジタル技術を活用してビジネスを変革するDXのビジョンと戦略が不足しており、この課題が克服できない場合、2025年以降最大12兆円/年の経済損失が生じるという深刻な問題です。
2024年を迎えた今、本コラムでは改めて「DXレポート/2025年の崖」で指摘された課題を振り返り、その対策と解決方法について解説します。前半ではDX推進の足枷になっているレガシーシステムの問題を、後半ではDX人材の確保・育成という組織的課題を解説します。また「身近な所から始めるシステム内製化」を支援するブラザーの取り組みについてもご紹介します。

※「DXレポート」は、以下より参照いただけます。
経済産業省DXレポート(サマリー):2018年9月[新しいウィンドウ]
経済産業省DXレポート2(サマリー):2020年12月[新しいウィンドウ]
経済産業省DXレポート2.2(サマリー):2022年7月[新しいウィンドウ]
DXに関する経済産業省の施策紹介:2023年3月[新しいウィンドウ]

「2025年の崖」の本質的な課題とは、何か?

      

そもそもDX(デジタルトランスフォーメーション)とは何かを、改めて確認しておきましょう。
経済産業省の「デジタルガバナンスコード2.0[新しいウィンドウ]」(2022年9月)は、DXを以下のように定義しています。

「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品・サービス・ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織・プロセス・企業文化を変革し、競争上の優位性を確立すること」

つまりDXは、単に「ITの導入による業務効率化」だけではなく、「企業全体の変革を通した競争優位の獲得」が目的であることに留意が必要です。

もちろん多くの企業経営者は、将来の成長や競争力強化のためにDXが必要であることは理解しています。にもかかわらず、なぜ日本企業のDXは遅れているのでしょうか。その大きな原因は既存の「レガシーシステム」にあるとDXレポートは指摘しています。具体的には以下の3点に集約されます。

1) 既存のレガシーシステムが事業部門ごとに構築されているため、全社横断的なデータ活用ができない。
2) 既存システムが、過剰なカスタマイズにより複雑化・ブラックボックス化している。
3) 既存システムの維持・保守に資金や人材が割かれ、新たなDX投資にリソースを振り向けることができない。

こうした現状を放置すると、今後ますます維持・保守コストが増大するだけではなく、既存システムを維持・保守できる人材が枯渇し、セキュリティ上のリスクも高まることが懸念されます。課題を克服できなければ、DXが実現しないばかりか、2025年以降最大12兆円/年の経済損失が生じる可能性を同レポートは指摘しているのです。

2025年の崖

「2025年の崖」イメージ図

「DXレポート」参照

      

ちなみに多くの企業が導入しているSAP ERP6.0のサポート期限は、予定されていた2025年末から2027年末へと変更になりました。ただし他の関連するSAP製品のサポート期限は別途設けられており、確認が不可欠です。またWindows Server 2019/SQL Server 2019も、バージョンによっては2024年から2025年にかけてサポート期限を迎えます。こうした既存システムのサポート期限についても注意深く確認することが必要です。

DX推進の足枷になっている3つの要因とは?

ではDX推進を妨げている要因を、詳しく見ていきましょう。

1) 既存システムのブラックボックス化
前述のとおり、多くの企業では長年にわたって各事業部門に個別最適化されたシステムを構築してきました。業務に合わせたスクラッチ開発が多用され、汎用パッケージでもカスタマイズされる例も多く見られます。その結果システムが肥大化・複雑化・ブラックボックス化し、全社視点でのデータ管理・活用が困難になっています。

またレガシーシステムは、日常的に活用している間は問題が発見されにくいのが特徴です。ハードウェアや汎用パッケージの保守期限が到来して、初めて発覚することも多いのです。根本的な解決には長い時間と大きな費用がかかるため、わかってはいても刷新に着手しにくいのが現状です。

2) DX推進のためのIT人材不足
日本では、ユーザー企業よりもシステム開発企業(ベンダー企業)にITエンジニアが多く所属しており、その偏在率は7割以上です。その結果、ユーザー企業はベンダー企業に頼らざるを得ない関係が生まれ、開発ノウハウも多重下請け構造の現場に蓄積される傾向がありました。

また、COBOLなどで大規模システム開発を行ってきた人材が定年退職することでノウハウが消失し、既存システムのブラックボックス化が進んでいます。一方で、若いDX人材にとって老朽化したシステムの保守業務は魅力がなく、離職に繋がりかねません。レガシーシステムを抱えたユーザー企業が若いDX人材を確保・育成することは極めて困難な状況なのです。

「DX推進のためのIT人材不足」イメージ図

「DXレポート」参照

3)ユーザー企業からベンダー企業への業務丸投げ
ユーザー企業がベンダー企業に頼らざるを得ない環境では、本来ユーザー企業が行うべき要件定義も含めてベンダー企業と請負契約を結ぶという「丸投げ」状態が多くなります。DXを推進するためにはユーザー企業が開発に強くコミットメントし、実装とテストを繰り返すアジャイル開発が求められますが、その体制が整っていません。

一方のベンダー企業側でも、レガシーシステムに対応できる人材が減少し、クラウドなど新しい技術基盤への移行も急速に進んでいます。人員の逼迫とスキルシフトの必要性はますます強まり、コストが増大する既存システムの運用・保守は維持そのものが困難になりつつあるのです。

DX実現に向けたITシステムの刷新方針とは?

こうした課題を乗り越えて、DXを実現するためには、どんな対応策があるのでしょうか。既存システムの刷新には莫大なコストと時間がかかり、リスクも伴います。また刷新後のシステムが再レガシー化するおそれもあります。コストやリスクを抑制しつつ、ITシステムの刷新を実現する対応策として、DXレポートは以下を提起しています。

1)システム刷新のゴールイメージの共有
レガシー刷新後のシステムは、新たなデジタル技術が導入され、ビジネスモデルの変化に迅速に対応できるものであることが不可欠です。そのためレガシー刷新後の目標設定については、経営者・事業部門・情報システム部門等、プロジェクトに関わるすべてのステークホルダが認識を共有していることが極めて重要となります。

2)廃棄することの重要性
システム刷新のコスト・リスクを低減する上で最も効果的な方法は、不要な機能を廃棄し、規模と複雑度の軽減を図ることです。特に今、経営環境の変化に対応して事業ポートフォリオの柔軟な見直しが求められる中で、ITシステムについても、重要性が低いものについてはサンクコスト(埋没費用)と割り切って廃棄し、新しい分野にリソースを投入していく経営判断が不可欠です。

IT資産の現状を分析・評価し、廃棄できるものの仕分けを行う際には、事業部門等からの強い抵抗も想定されますが、経営トップによる強固なリーダーシップで方針を実行する必要があります。

「2025年の崖」廃棄することの重要性イメージ図

「DXレポート」参照

3)システム刷新におけるマイクロサービスなどの活用
刷新後のシステムでは、繰り返しになりますが「ビジネスモデルの変化に迅速に対応できること」が必要です。そのためにはシステムをモジュール化された機能に分割し、短いサイクルでリリースができる状態にしていくことが求められています。

頻繁に更新が求められる機能については、システム刷新時にマイクロサービス化することによって細分化し、アジャイル開発方法により段階的に刷新するアプローチも考えるべきです。仕様を明確にできるところから開発を進めることになるため、刷新に伴うリスクの軽減も期待できます。

レガシーシステムとマイクロサービス化の対比イメージ図

システムベンダー企業との新しい関係性を目指す

DXを推進するプロセスでは、ユーザー企業とベンダー企業の役割が変化し、新しい関係が構築される必要があります。そのポイントをDXレポートは以下のように指摘しています。

1)DXを通じてユーザー企業が目指すべき姿
ユーザー企業では、既存システムの刷新を実行し、データを活用した本格的なDXを可能にすること。それが目指す姿です。同時に、人材・資金等のリソース配分について、既存システムの維持管理に投資されていたものを、新たなデジタル技術の活用による迅速なビジネス・モデル変革に充当することが重要です。

これによりユーザ企業は、顧客・市場の変化に迅速・柔軟に対応しつつ、クラウド・モバイル・生成AI等のデジタル技術をアジャイル開発で迅速に取り入れることが可能になります。新たな製品・サービス・ビジネスモデルを素早く展開していくことで、国際市場での競争力を高めることに繋がります。

2)システムベンダー企業に期待する役割の変化
既存レガシーシステムでのウォーターフォール型の開発も一部残るものの、ユーザー企業がベンダー企業に期待する役割は以下のように変化していきます。

1. 生成AI等を活用したクラウドベースのアジャイル開発によるアプリケーションの提供
2. ユーザ企業の要件変更を前提としたアジャイル開発に対するコンサルティングの提供
3. システムを小規模のモジュール化した機能に分割し、短サイクルでのリリースを実現
4. API/Web APIベースのアプリケーション提供型のビジネスモデルへの転換

つまり、ベンダー企業は従来の受託業務から脱却して最先端技術活用の新規市場を開拓するとともに、クラウドベースのアプリケーション提供型のビジネス・モデルに転換していくことが強く求められています。

こうした取り組みの中では、システムの規模と難易度によって最適な開発体制を構築することも重要です。従来型の「基本・個別契約」に加え、ユーザー企業内にノウハウを蓄積する「内製モデル」、両者による「ジョイントベンチャー」の立ち上げ、大学や複数企業が協働する「技術研究組合(CIP)」の設立など、ユーザー企業とベンダー企業がWin-Winの関係で価値創造を実現できる関係性を追求することが必要となっています。

ユーザー企業とベンダー企業がWin-Winの関係で価値創造を実現できる関係性のイメージ図

「DXレポート」参照

後半では、「2025年の崖」を克服するために2023年5月に発表された「DXに関する経済産業省の施策紹介」と「DX人材の育成・確保」について解説します。

   
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ブラザー販売 ビジネスNAVI 編集部

ブラザー販売、ビジネスNAVI担当者です。ビジネスNAVI編集者として、トレンドコラムやお客様の導入事例、パートナー企業、製品のソリューション情報などを発信していきます。

   

※この記事の内容は、2023年12月現在のものです。
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