小池:昨年10月、名古屋で「COP10(生物多様性条約第10回締約国会議)」が開催されましたが、イルカさんは国際自然保護連合(IUCN)の親善大使として、ずいぶん前から国内外でPR活動や生物多様性への理解を深めるコンサート、CDや絵本の出版などで貢献されましたね。
イルカ:3年ほど前、IUCNから「生物多様性という言葉が難解なので、多くの世代に分かりやすい形でアピールしたい」とお話があり、「それならCDを作って、コンサートもやりましょう」と提案しました。また、私は絵本も描いているので、小さなお子さんのために「生物多様性をテーマにした絵本もいいのでは」と出版社に話を持ち込みました。それが「まあるいいのち」という絵本になりました。
小池:ブラザーグループも会議の主旨に賛同し、「COP10」参加者向けインターネットコーナーへのプリンターの提供や、プリンターメーカー6社共同での「インクカートリッジ里帰りプロジェクト」の一員としてのブース出展、国連環境計画(UNEP)への寄付などを行いました。会議では、生物の持つ遺伝資源の利益配分ルールを定めた「名古屋議定書」と、2010年以降の目標「愛知ターゲット」が合意されるなど大きな成果が得られました。それから、私は期間中に名古屋で行われたイルカさんの「まあるい地球コンサート」も拝見しました。
イルカ:それは、ありがとうございました。IUCN本部とは会議中にコンサートを開く約束をしていましたし、
「連日の会議で大変なので、音楽で頭を休めたい」と50名以上来てくださったので「ああ、コンサートを開いてよかったな」と思いました。それにしても、ブラザーグループは熱心に環境問題に取り組まれているんですね。
小池:ええ、以前から環境社会貢献の一環として、世界各地の従業員ボランティアが、植林活動やマングローブ林の保護、ウミガメの生態系調査への協力などを続けています。2010年5月に、こうした活動も含めて、モノ創りをはじめ事業活動のすべてを含むグローバルな環境への取り組みのシンボルとして「Brother Earth」というスローガンを制定し、これに基づいて2015年に向けた中期環境行動計画の達成に重点的に取り組んでいます。
また、クリック募金を組み入れたWEBサイト「brotherearth.com」では、グループ各社が各地域で取り組んでいる環境保護活動を紹介しています。皆さんが共感する活動をクリックいただくと、その数に応じて皆さんに代わってブラザー工業が活動に寄付する仕組みで、7カ国語で運用しています。
ただ、「COP10」のような生態系を守るという大きな課題は、一企業がどの程度まで関われるのか分からない点が多く、イルカさんのご経験から「ブラザーがこんなことをやるといいんじゃないか」ということを教えていただけるとありがたいです。
イルカ:実は、IUCN・世界銀行・地球環境ファシリティ※の三つの国際機関が手を結んで、大規模な生物種の保存基金「SOS(Save Our Species)」というプログラムを立ち上げて、協力してくれるパートナー企業の参加を呼びかけています。このプログラムへの貢献は、生物多様性を保全するグローバルリーダーとして世界にアピールできますから、企業のイメージアップにもつながります。
小池:なるほど。生物多様性保全に関わる課題の中で「この国のこんな保護活動への協力を」とご提案をいただけると、グループ各社の従業員も意義が理解しやすいですね。微力ながら活動支援に参加するのは、グローバル企業として成長していく重要なステップになると思います。
イルカ:2011年は「国際森林年」でもあり、IUCNの活動は森林保護に関係するのはもちろん、私たちがふだん使っている「紙」とも密接に関わっています。これに関するシンポジウムも各地で行われています。私は“ブラザー”という社名に好印象を持っていて、それは私がメッセージとして発信している「ひとつの地球に住む生き物は、共に生きる兄弟」という考え方に通じるからです。それに「Brother Earth」というキーワードのもとで、地球に生きているみんながつながっているという考え方で活動されているのは、とてもありがたいことです。
小池 利和
■プロフィール1955年、愛知県一宮市生まれ。早稲田大学政治経済学部を卒業後、1979年にブラザー工業に入社。1982年、ブラザーインターナショナルコーポレーション(U.S.A.)に出向。タイプライターやミシンなどが主力商品の時代に、プリンターの試作機を持って全米各地をセールスし、ブラザー情報通信機器の基盤を開拓。2000年に同社取締役社長に就任し、2005年に帰国。2007年から現職。愛称は「テリー」。社内ブログで、社長メッセージから身近な体験まで幅広く発信している。趣味は、ワイン・音楽・ハイキング・歴史探訪・ゴルフ・スポーツ観戦・将棋と多彩。iPodにフォークソングから最新のヒット曲まで9,000曲を入れ、時間が許す限りコンサートにも出かける。モットーは「明るく、楽しく、元気に」。